レッドブル、来季RB21は「今季マシンの進化版」に。F1新時代に向けたPU自社開発や“骨董品”風洞で無茶できず

 レッドブルは2025年シーズンのF1に向けて、今季マシンRB20の進化型を投入することを計画しており、大胆な刷新にリソースを投じることはないと説明した。

 2023年シーズンに21戦中20勝というF1新記録を打ち立てたレッドブル。今季もシーズン序盤こそ他を圧倒したものの、その後はライバルチームが台頭。現在はマクラーレンと激しいタイトル争いを繰り広げている。

 そして現行レギュレーション最終年となる2025年、レッドブルはオフシーズン中に進歩することができなければ、さらに厳しいシーズンを送ることになるだろう。

 しかし予算制限に加え、レッドブルは新レギュレーションが導入される2026年から独自パワーユニット(PU)を開発・製造することから、来季一歩踏み込んだマシン開発を行なうことが難しくなっている。

 チーム代表のクリスチャン・ホーナーは現在、来年、そして2026年という異なるチャレンジにどう対処しているのかについて、次のように語った。

「このビジネスでは、常にバランスを取ることが求められ、ライバルより片足でも前に踏み出す必要がある」

「あまり先のことは予測できない。F1における長期とは約2ヵ月半のことで、基本的には今年学んだことが来年に関係してくる」

「来年のマシンは今年のマシンを進化させたモノになる。予算制限の仕組み上、大幅なパフォーマンス向上がない限り(変更は)無意味だから、昨年のマシンから今年のマシンに引き継がれた部分が沢山ある」

■PU自社開発という挑戦

 レッドブルが2025年に向けたマシン改善で無理をしないという決断を下したのは、2026年から自社PUを傘下2チームに供給するためだ。

 レッドブルは、新設されたPU部門レッドブル・パワートレインズに多額の投資を行なっており、莫大なコストにも関わらず、それが利益をもたらすと確信している。

「我々にとって最大の挑戦だ」とホーナー代表は言う。

「我々はスタートアップ・ビジネスを立ち上げ、600人を積極的に採用し、ファクトリーを建設し、プロセスを導入……シャシー側で成功を収めたレッドブルのカルチャーの中で働くスタッフを集めた」

「もちろん、その多くは他のF1チームやライバルメーカー、サプライヤーから移ってきた。600人の従業員、プロセス、サプライチェーン、全てを2026年に2チームのために準備するのは大変なことだ」

「我々はフォード・モーター・カンパニーという偉大なパートナーの恩恵も受けており、その関係は非常に上手くいっている。短期的な痛みは避けられないだろうが、エンジニアとひとつ屋根の下、全てを置くというのは長期的な利点がある」

「26年型PUと26年型マシンへの統合を始めるにあたり、シャシーとPUのエンジニアが実質的に隣り合わせでいることの利点と違いを、我々は既に目の当たりにしている」

■新型風洞の稼働はまだ先……

 レッドブルがRB20の進歩を妨げている要因を深く掘り下げた結果、風洞と実走行データの相関性に関する問題が露呈した。

 チームは2005年のF1参戦以降、一貫してベッドフォードにある風洞を使用してきた。チーム本拠地があるミルトンキーンズには最新鋭の風洞施設の建設が始まっているが、2026年までには稼働しそうにない。

 ホーナー代表は、チームがベッドフォード風洞を長年にわたってアップデートしてきたとはいえ、近代的な施設ほど技術的なアドバンテージがあるわけではないということを常に念頭に置いていると説明した。

「風洞にある限界は理解していた」とホーナー代表は言う。

「しかしマシンの空力を突き詰め始め、本当に微妙なマージンの話となってくると、その限界が露呈する」

 また新しい風洞に投資することが可能になったのは、F1においてこうした施設を廃止するというアイデアが破棄されて以降のことだったとホーナー代表は続けた。

「風洞が禁止される可能性がある時期もあった」とホーナー代表は言う。

「エイドリアン(ニューウェイ)はそれがハッキリするまで、新しい風洞計画を推進するのを控えていた。しかしアストンマーティンが新風洞を望んだことで、FIAは態度を変えた」

「レギュレーションで定められている予算上限内で、我々は使用している風洞は著しく非効率だから、我々はこれとこれをやる必要があるんだ、という問題だった」

 レッドブルがベッドフォード風洞で直面した課題についてホーナー代表に聞くと、彼はこう答えた。

「我々は60年前の風洞を所有している。冷戦時代の遺物だ」

「長年にわたって素晴らしいマシンを生み出してきた。しかし、それには限界がある」

「5度以下では稼働できないし、25度以上になるとかなり不安定になる」