富士スピードウェイで行なわれたスーパーフォーミュラ第6戦は、7月に同じく富士で行なわれた第4戦の再現のような結果となった。VANTELIN TEAM TOM’Sの坪井翔が抜群のレースペースで追い上げを見せ、勝利をかっさらったのだ。
“瑶子女王杯”として行なわれた前回の富士戦では4番グリッドからスタート。ピットインを遅らせ、レース終盤にフレッシュタイヤに交換すると、そこからペースの良さとタイヤの状態の良さを存分に活かして、一度は前に出られたライバルたちを抜き返す……そんな力強い走りで勝利を収めた。
ただ今回は、予選7番手。さすがの坪井でもここからの逆転は容易ではないと考えていたようで、「優勝を目指していたとはいえ、頑張っても表彰台かなと思っていた部分もありました」と振り返る。
しかしながら、坪井の勝因のひとつとなったのがオープニングラップ。スタートで蹴り出しの良くなかったフロントロウの福住仁嶺(Kids com Team KCMG)や太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)らの前、4番手に浮上したのだ。
「今回はスタートもうまくいきましたし、あれが今日のレースの全てだったと思います」と坪井は言う。
ただ、それだけではなかった。4番手浮上で優勝争いへの足掛かりを作った坪井は佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)を抜き、首位の野尻智紀(TEAM MUGEN)と僅差のバトルになったが、戦略面では難しい立場にあった。ただそんな中で、期せずしてあるドライバーからの“アシスト”を受けることになった。
状況としては、坪井らと首位を争う岩佐歩夢(TEAM MUGEN)がウインドウが開いたミニマム周回(10周終了時)でピットインし、いわゆるアンダーカットを狙っている状況。そしてステイアウトを続ける野尻との睨み合いが続いた。その中で先に野尻が21周終了時にピットインしたため、坪井は2台揃ってアンダーカットされてしまうと感じたという。
「MUGENに(戦略面で)サンドイッチされていました。岩佐選手が引っ張ることになったので、なんとかコース上で野尻選手を抜きたかったのですが、先に野尻選手が入ってしまい、終わったなと思いました(笑)」
しかし、2周後にピットインした坪井にとって幸いだったのは、早々にピットインをしたことが功を奏し順位を上げていた小林可夢偉(Kids com Team KCMG)が、野尻とやり合ったこと。これが効いて、坪井は野尻の前でピットアウトできた。
「まさかオーバーカットできるとは思っていなかったですし、可夢偉さんがあそこでめちゃくちゃ良い仕事をしてくれて、かなり抑えてくれたので、感謝です」と坪井は笑顔を見せる。
「その間にタイヤを温めることができたので、僕にとってもターニングポイントになりました」
その後岩佐らを交わしてトップに立ち、見事富士戦での“連勝”を決めた坪井。レースを次のように総評した。
「第4戦の決勝レースペースが良かったので、その再現を期待していましたし、今回のフォーマットは各車ロングランがあまりできないので、アドバンテージがあるかなとも思っていました」
「今回はスタートもうまくいきましたし、あれが今日のレースの全てだったと思います。そこからはペースの良さを活かしつつ、戦略を分けるMUGENにサンドイッチされましたが、ピットも適切な判断をしてくれて、全てがうまくいった結果優勝することができ、非常に良いレースだったと思います」
これで坪井は、ポイントリーダーの野尻との点差を0.5に縮め、残り3戦でいよいよタイトルが射程圏となった。翌日の第7戦に向け、次のように意気込んだ。
「今回の富士を取らないとチャンピオン争いから脱落すると思っていましたし、この2レースで何としても追いつかないといけないと思っていました」
「その中で予選7番手で、難しいなと思いましたが、今回勝つことができて(タイトル争いで)十分に射程圏内に戻ってこれたと思うので、明日のレースも気を引き締めて頑張ります」