ゲーム「ポケモン」シリーズはその模倣作品の多さでも知られ、これまでにはまるっとパクった大胆なものもあり訴訟に発展するケースも見られた一方、まったく問題にならなかったゲームもあります。なにかしら「許される」共通点はあるのでしょうか。



世界の共通言語、おなじみ「ピカチュウ」。画像は2023年8月に横浜で実施された「ポケモンWCS2023」資料より (C)2023 Pokemon. (C)1995 2023 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

【こいつは…】なるほど「銃を持ったポケモン」こちらがくだんの『パルワールド』です(7枚)

ポケモンより先にモンスターを仲間にしていた『ドラクエ5』

 さる2024年9月19日、任天堂と株式会社ポケモンは共同で、株式会社ポケットペアに対する特許権侵害訴訟を東京地裁に提起しました。ポケットペア社の開発、販売するゲーム『パルワールド』が、任天堂およびポケモン社の保有する複数の特許権を侵害していると主張してのことです。

『パルワールド』は同年1月末に登場した当初から、不思議な生物「パル」のデザインが「ポケモン」を彷彿させるとの声もあり、武器を装備して戦闘もできることから海外では「銃を持ったポケモン」と呼ばれています。客観的に見れば「多くの人がポケモンを連想するゲームが、任天堂から叱られている(というほど生易しくはありませんが)」という状況です。

 初代『ポケットモンスター 赤・緑』が1996年2月に発売されてから28年、これまでにもポケモンフォロワーらしきゲームは山ほどありました。そのなかでも特に印象に残りながら「任天堂に怒られなかった」作品を見ていきましょう。

 ちなみに、ここでは「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズは選外とします。なぜなら、「ドラクエ」シリーズにおいて「仲間モンスターを集めること」は、1992年発売の『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』が初出で、『ポケモン』より先にやっていたからです。

メカニック好きの心をくすぐる! カスタマイズ性の豊かな『メダロット』

 いわゆる『ポケモン』ぽいゲームを構成する要素とは、「出現するモンスターを仲間にして育てる」「主人公はバトルに参加しない」「モンスターの図鑑を作成」の3つでしょう。『ポケットモンスター 赤・緑』の翌年に発売された『メダロット』(イマジニア)は、ものの見事に3つとも満たしています。

 舞台となるのは、知能を持つロボット「メダロット」が人間のパートナーとして普及している近未来です。そこではカスタマイズしたメダロット同士を戦わせる競技「ロボトル」が流行しており、主人公は大会に参加したり、事件に巻き込まれたり、世界の危機に立ち向かったりします。すごい科学力や技術力を持ちながらマヌケな悪の組織「ロボロボ団」には、どこかからロケットのようにツッコミが飛んできそうです。

 一方でメダロットは、頭脳にあたる「メダル」にボディの「ティンペット」、そして頭部、左腕、右腕、脚部と4つのパーツを組み合わせて組み上げるものです。しかもメダルには「熟練度」、各パーツには「充填」「熱量」といったパラメータがあり、メカニック好きの心をくすぐる凝り方でしょう。

 主役モンスター、もといメダロットにかなりの独自性があり、何よりゲームボーイ用ソフトであることから、任天堂も「通ってよし!」にしたのかもしれません。



一時は「第2のポケモン」と呼ばれるほど超人気を誇った『妖怪ウォッチ』。「DX妖怪ウォッチ 零式タイプS」(バンダイ) (C)LEVEL-5/妖怪ウォッチ♪プロジェクト・テレビ東京

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似て非なる「オリジナリティ」

音楽CDを読み込ませてモンスターを再生!『モンスターファーム』のオリジナリティ

 1997年に発売された『モンスターファーム』(テクモ/現:コーエーテクモゲームス)は、『ポケモン』ぽい要素のうち「出現するモンスターを仲間にする」という点においてオリジナリティを極限まで発揮したゲームです。

 その方法は、初代PlayStationに「円盤石」、つまり音楽CDを読み込ませてモンスターを誕生させる、というものでした。ROMカートリッジしか使えないゲームボーイやNINENDO64では、出来っこありません。また、主人公は強いモンスターを育てるブリーダーであり、そのために合体を繰り返すという、まるっきり『女神転生』的な要素も入っています。

 さらにバトル方法も「ガッツ」を消費して技を繰り出すシンプルさながら、むやみに技を出さずにガッツを貯めてチャンスをうかがったり、「射程距離が長い」「ヒット率が高い」など技の特性を考えて相手の強みを潰していく戦略性もあり、なかなかに奥深くあります。

 そして97年当時は、最も表現力の高いゲーム機のひとつだったPlayStationにより、3Dグラフィックを駆使したモンスターの戦いは迫力がありました。やはり3D化した『ポケモンスタジアム』(1998年)よりも1年以上、先駆けていたのです。

『妖怪ウォッチ』は「ともだち妖怪」にボールを投げてなかった

「アニメ絵っぽくてかわいらしいモンスター」や「TVアニメや子供向けマンガ雑誌と密に連携」など、ど真ん中に『ポケモン』的な王道を歩んでいったのが、2013年発売の『妖怪ウォッチ』(レベルファイブ)です。「妖怪」と「ポケモン」の、キャラクター的に最も大きな違いといえば「人の言葉をしゃべるかどうか」ではないでしょうか。

 初印象こそ「ポケモンぽい」であり、同じくマップを歩くRPGタイプではありますが、実際にプレイしてみると感触がかなり異なります。

 最大6体の「ともだち妖怪」でパーティーを組み、バトルでは3体を前衛に出して上手く配置する戦略性が高く、「妖気ゲージ」を溜めて放つ必殺技の要素もあります。このあたり、『イナズマイレブン』や『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』など開発経験が豊富なレベルファイブならではですね。

 ゲームからは外れますが、TVアニメではやりたい放題のパロディーも大きなお友達(筆者含む)にバカウケでした。おもな客層である子供にはワケが分からなかったはずなので、高年齢プレイヤーも意識していたのかもしれません。

 ともだち妖怪からもらえる「妖怪メダル」の玩具は大ブームになり、一時はお店に大行列が並んだり、子供にねだられても買えない親御さんの悲鳴が全国で上がったりしたものです。ともあれ、ゲーム本編はニンテンドー3DS用ソフトのひとつとして、任天堂に大いに貢献していました。

 こうして振り返ると、実は大ヒットした『ポケモン』ぽいゲームのうち、「ボールを投げてモンスターを捕獲」するものはひとつもなく、あったとしても注目を集めずに終わった印象です。さて『パルワールド』はというと……とりあえず「ボールをモンスターに投げつけるゲーム」は作らない方がよさそうです。