富士スピードウェイで行なわれたスーパーフォーミュラ第6戦・第7戦は、連勝を飾った坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)の速さが見る者に大きなインパクトを与えたが、それに引けを取らないほど躍動してみせたのがKids com Team KCMGだ。土居隆二監督も、チームの確かな進歩を実感している。
悲願のスーパーフォーミュラ初優勝を目指すKCMGは、小林可夢偉のチームメイトとしてホンダ陣営の有力ドライバーだった福住仁嶺を迎え入れた他、エンジニアやサポーティングスタッフなども強化。小林が乗る7号車には関口雄飛が、福住が乗る8号車には松田次生がついており、国内トップドライバーを国内トップドライバーが支えるという贅沢な布陣となっている。
新加入の福住は第4戦富士でチームに初のポールポジションをもたらしたが、決勝でピット作業のミスがあり4位。ただ同じく富士での第6戦でも福住が2度目のポールを獲得すると、決勝ではフロントウイングを壊しながらも5位に入り、小林も11番手スタートから5年ぶりの表彰台(3位)に登るなど、またしても“勝てるポテンシャル”をみせた。
そして第6戦の翌日に行なわれた第7戦で福住は、ポールを逃すも3番グリッドからスタートして坪井と優勝争いを展開。終盤にセーフティカーが出たこともあって追撃の機会は限られてしまったが、それでも2位表彰台を獲得した。さらに小林も5位に入ったことで、KCMGにとっては2戦連続で2台がトップ5フィニッシュを達成したことになる。これは2020年に2台体制になったチームにとって初めてのことだ。
しかも、これでチームランキングは7番手から4番手に急浮上。充実のレースウィークを過ごしたように見えるKCMGだが、motorsport.comの取材に答える土居隆二監督の表情からは、喜びや安堵といった表情よりも、悔しさの割合が大きいように感じられた。実際、第7戦のチェッカーの後は「泣きそうになるくらい悔しかった」のだという。
「なかなか勝たせてもらえないなと。まだ足りないんだなって」と土居監督は言う。
「でも2台揃ってQ2に行き、ポイントをとって、チームランキングも4位になったと思います。これまでは、可夢偉が最終戦までチャンピオン争いをした年もありますが、その時とチームの総合力が違う。予選も決勝も、2台揃ってクルマに速さがあります」
「タイヤ交換も相変わらず、ミスをしたら成績に影響が出るという高い緊張感がある中でしっかりこなしてくれましたので、タイヤ交換するメンバーもステップアップできたと思います」
「ただ正直、優勝するための総合力という点で、トムスさんが持っている総合力に追いつくためには、もっともっと努力をしないといけない。本当に細かいところだと思いますけどね」
ただ土居監督は、チームがポールポジションや2位という結果で“悔しい”と感じられていることこそが、チームとしての進化を表しているのだとして、今後に向けた期待感をのぞかせた。
「初ポールをとった時には大泣きしてましたが、今回はポールじゃないと悔しがる……(第6戦は)可夢偉が久々の表彰台ですごく嬉しかったですが、今日は2位も嬉しいけど、勝てなくて悔しい……少しずつステップを踏んでいるなと思います」
「多くの人に言っていただけるのは、1勝の壁を破れば、トントン拍子でいくということ。そこに近づいていることを、実感し始められています。夢見たことが近づいていて、スタッフの確かな自信になっている、それが見受けられます」
「2回目のポールで、(1回目のポールが)フロックじゃないことも見せられましたからね。しかも、本当にトラブルが出ないんですよ。スタッフがしっかり工場でクルマを組み上げてくれているんです」