1974年から放送された『アルプスの少女ハイジ』といえば、「クララが立った!」というセリフが有名です。しかしこれは、最終回のセリフではありません。そのうえ、原作小説ではこのセリフ自体が出てこないのです。最終回はいったいどんな展開なのか、原作小説とアニメがどう違うのか、振り返ってみます。



『アルプスの少女ハイジ』原作:ヨハンナ・シュピーリ、著:高畑 勲 (徳間書店)

【画像】原作にはなかった←え? こちらが実際に“クララが立った”姿です(7枚)

クララが立った、その後の意外な展開

 両親を亡くし、人嫌いのおじいさんに預けられたハイジの成長を描く『アルプスの少女ハイジ』は、2024年で放映50周年を迎えます。ハイジといえば、「クララが立った!」という名ゼリフを思い出す方もいるのではないでしょうか。

 しかし実はこのセリフ、原作小説にはありません。アニメでもこのセリフは最終回より前に入っており、物語の結末を覚えている方は意外と少ないかもしれません。原作小説とアニメ、両方の結末と違いをみてみましょう。

アニメ版の最終回では、「走るクララ」を予感させるラスト

 アニメの最終回は52話ですが、有名な「クララが立った!」のシーンは48話です。牛の大きな鳴き声に驚き、「クララ」が思わず木を支えに立ち上がります。そのクララを見て最初に「クララが立った!」と発言したのは、クララのおばあさまでした。

「ハイジ」も直後にその話を聞き、「クララが立った!」と喜びます。そこから、本格的にクララが立つ練習が始まります。足を動かしたりつかまり立ちしたりと、クララは少しずつ立てるようになり、最終的にはその努力が実って、クララはゆっくり歩けるようになりました。

 最終回となる52話では、クララのお父さんとおばあさまがハイジの家を訪ねてきます。何も知らないふたりは、クララがひとりで歩く姿を見て、涙ながらに喜びます。そしてまだ体の弱いクララは、冬を前にもといた「フランクフルト」へ戻り、そこで歩く練習をするのでした。

「来年の春にまた帰ってくる」というクララとの約束を胸に、ハイジと「ペーター」は「アルムの山」で冬を過ごします。手紙でクララが走れるようになったことを知り、ふたりますます春を心待ちにし、春に3人一緒に駆け回る想像をしながら、ふたりは家へと帰るのでした。

原作小説では、「クララが立った!」と言わない

 原作小説では、ハイジとペーターがクララの両側に立って支え、そこで初めてクララが歩けるようになります。そして、先にクララが「歩けるわ、ハイジ! ああ、歩ける! 見て!」と感動の声を上げ、ハイジも「歩けるようになったのね?」と喜びます。

 実は原作には、ハイジの「クララが立った!」というセリフはないのです。ハイジたちは大喜びするものの、アニメよりも割とあっさり立てるようになります。そしてふたりは、手紙でクララのおばあさまを呼び、クララが歩けるところを披露するのでした。

 さらに異なる点は、アニメではクララがうっかり車いすを壊してしまいますが、原作ではペーターがわざと車いすを壊します。彼は唯一の友達であるハイジを独り占めするクララに、嫉妬したのです。ペーターはそれ以降、警察に捕まるのでは……とびくびくします。

 最終的にはクララのおばあさまがペーターを許し、貧しい彼に毎週10ラッペンを与え、彼のおばあさんにはベッドを渡すことにします。クララはその翌朝、家族と「ラガーツ温泉」へと旅立ち、ペーターのおばあさんが神に感謝する場面で、物語は終わります。

意地悪なペーター、存在しないヨーゼフ

 ほかにも、原作小説とアニメにはかなりの違いがあり、ペーターは原作だと意地悪なうえに、乱暴な描写が見られます。また、アニメでは家族の一員であるセントバーナード犬の「ヨーゼフ」も、原作小説には出てきません。

 アニメでは、おじいさんの過去に少ししか触れませんが、原作小説では彼が気難しくなった理由や、その暗い過去を詳しく描いています。アニメ放映50周年を記念して、ポップアップショップや各種コラボで盛り上がっている本作、この機会にぜひ違いを比べてみてください。