2026年北中米ワールドカップ・アジア最終予選で、4連勝がかかる10月15日のオーストラリア戦が目前に迫ってきた。
現地10日のサウジアラビア戦(2-0)直後にチャーター便で帰国した日本代表選手たちは、12日から全体練習を実施。試合会場の埼玉スタジアム2002で行なわれた13日には、前日に別メニューだった三笘薫(ブライトン)と上田綺世(フェイエノールト)も合流。27人全員が臨戦態勢に入っている。
「(オーストラリアと)ミラーゲームになったら当然、チームの戦術の質と個人の質、2つの部分で差が開いてくると思うので、ある意味、個人のテストであり、チーム完成度のテストにもなるのかなと思います」と久保建英(レアル・ソシエダ)が語っていたように、ここで4連勝できるか否かは今後の展開に大きく影響すると言っていい。
オーストラリアもトニー・ポポヴィッチ監督体制の初陣だった10日の中国戦で、リスタートの鋭さや高さ、パンチ力などのストロングを発揮して3-1の逆転勝ち。浮上のきっかけを掴みつつある。それだけに、日本としては今、ここでしっかりと叩いておくことが肝心なのだ。
そこで気になるのは、森保一監督が送り出す陣容だ。9月の2連戦を振り返ると、中国戦からバーレーン戦に向けてスタメン半数程度を変更するのではないかという見方もあったが、蓋を開けてみると久保と鎌田大地(クリスタル・パレス)を入れ替えただけ。今回も「勝っている時はチームを変えない」という定石通り、ほぼ固定メンバーで行くと見られる。
となれば、ウイングバックも三笘と堂安律(フライブルク)のコンビが確実。2人はサウジ戦でも鎌田の先制点をお膳立てする良い働きを見せているし、攻守両面でのハードワークも光っている。
久保も「オーストラリアとはミラーゲーム」と指摘している通り、同じ3-4-2-1で組み合えば、個のバトルの機会は確実に多くなる。三笘が得意のドリブルで抜いてフィニッシュに持ち込むシーンは確実に増えるのだ。
「後ろで数的優位を作りながらビルドアップができるかというところもそうだし、マンツーマンでも1人剥がせばチャンスになると思うので、分かりやすい。個の戦いで差をつけなければいけない相手だと思います」と三笘本人も強調。2022年のカタールW杯出場を決めたオーストラリア戦でのインパクトを上回るような打開力を前面に押し出し、攻撃をけん引する構えだ。
フィニッシュに直結するプレーができる三笘とは対照的に、右の堂安はどうしても攻撃のお膳立てや守備のサポートがメインになりがちだ。本人も周囲との連係・連動やフォア・ザ・チーム精神を大事にしているため、現状にはある程度、納得しているのだろうが、もっとゴールに絡みたいという思いは強いはずだ。
加えて言うと、「個対個のバトル」という側面が強まるこの一戦は、伊東純也(S・ランス)をスタートから使った方がより相手に脅威を与えられるのではないか。森保監督としては「途中から流れを変えられるジョーカーが手薄になる」という懸念があるのかもしれないが、その枠には前田大然(セルティック)も中村敬斗(S・ランス)もいる。
三笘&伊東の左右の槍で一気に序盤から相手を分散してしまうのは手っ取り早い。サイドの攻防が試合のカギになるのは紛れもない事実。だからこそ、大胆なチャレンジも考えてほしい。
その場合、堂安はサウジ戦の途中から入ったシャドーの一角に配置して、ゴール前で怖さを発揮してもらえばいい。サウジ戦で南野拓実(モナコ)がイエローカードをもらっていることもあり、シャドーの組み合わせは自ずと変化が必要になる。
ならば、堂安&鎌田、あるいは堂安&久保というコンビにトライするのも一案。ここまでまだ得点のない堂安が目に見える結果を残すことは、今後の代表にとっても重要だ。その最適解を見出してほしいものである。
いずれにせよ、現時点で日本代表のウイングバックは目下、左の三笘、右の堂安と伊東が軸を担っている。彼らの位置づけは非常に高い。ただ、左に関しては、前田、中村を含めて高いレベルでの競争が繰り広げられている。
サウジ戦で前田が左ウイングバック、三笘と中村がシャドーに入ったように、3人の共存の道もないわけではない。新たな関係性を活かしつつ、攻撃の起爆剤になってほしいところだ。
右についてはやはり堂安と伊東が双璧で、そこに菅原由勢(サウサンプトン)、関根大輝(柏)、望月ヘンリー海輝(町田)らが挑む構図になっている。だが、左に比べると、彼ら3人の堂安・伊東に対する距離はやや遠い。
オーストラリア戦で出番があるとしたら、守備固めの菅原くらいだろうが、堂安がシャドー、菅原が右ウイングバックといった共存も十分あり得る。そういう新たな形も模索しつつ、この大一番に勝っていければ理想的だ。
サイドを制するチームが試合を制する。それがオーストラリア戦の鉄則。日本最大の強みを活かして、確実に宿敵を退けること。そこに集中してほしい。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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