英会話教室が過渡期を迎えている。受講者集めに苦心する教室が目立つようになり、ダイナミックな業界再編が行われるようになった。その背景の一つには、英会話や英語力を習得する新たなサービスの台頭がある。旧来型の英会話教室は、将来的な大量閉鎖、大再編という未来も見えてくる…。
成果型とオンライン型の二極化が進む語学学習
英語のコーチングサービスで、著しく業績を伸ばしているのがプログリット(PROGRIT)だ。
2024年8月期の売上高は前期比47.3%増の44億5300万円、営業利益は同65.8%増の8億2400万円だった。売上高、営業利益ともに予想を上回って着地している。
2021年8月期の売上高は20億円に届いておらず、営業赤字を計上していたにも関わらず、売上高はわずか3年ほどで2倍以上に拡大し、営業利益率が19%近い高収益サービスとなった。
プログリットの最大の特徴は、レッスンを行わずに学習のコーチングを行なう点だ。
コンサルタントと呼ばれる選任の学習サポート担当者が個人の実力や目的、目標に見合ったカリキュラムの作成、学習の進捗状況の確認、英語レベルのチェックなどを行なう。面談は週に一度行なわれるが、LINEで随時相談もできる。
学習意識や出世意欲の高いビジネスパーソンからの支持が厚く、受講料は半年で120万円前後と高額だが、2024年7月末に累計受講者数が2万人を突破し、好調をキープしている。
通常の英会話教室だと、週4回のレッスンの受講で1万円、マンツーマンレッスンで2万円前後が一般的な料金だが、この紋切型ともいえるやり方が時代に合わなくなっている。
中小企業基盤整備機構は英会話教室に関する消費者の意識調査を実施している(「英会話教室(2024年版)」)。
英会話教室に通わない人が、利用しない理由として挙げるのは「コストが高い」(21.6%)からだ。そして、「効果に疑問がある」(13.3%)も多くを占める。
英会話教室の集客は大々的なテレビCMや電車広告を使っていたように、一般大衆を丸ごとターゲットにしてきた。そのため、さほど学習意欲が高くない人にまで訴求する結果となり、コストが高く、効果に疑問を持つ人を多く生むこととなった。
一方、プログリットは極限まで成果にコミットするという形態のため、その評判が広がって英語学習に対する意識が高い層だけを取り込むことに成功している。
そして、手軽に英語学習するのであれば、オンラインツールで十分な時代にもなったこともあり、英会話教室は二極化する市場の空白地帯に取り残されようとしているのだ。
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受講生数は減少の一途を辿る
英会話教室離れはすでに始まっている。
経済産業省の「外国語会話教室の動向」によると、2022年12月の受講生数は33万9000人。前年同月比8.0%の減少であり、コロナ禍が収束に向かうなかで1割も縮小しているのだ。しかも、35か月連続での減少だった。
一方、語学ビジネスの市場そのものは堅調であり、規模も大きい。
矢野経済研究所によると、2023年度の語学ビジネスの市場規模は前年度比0.2%増の7841億円だった。
そのうち、外国語教室全体の市場は3000億円程度と大きいものの、オンライン語学学習市場が320億円まで成長している。その規模は、書籍教材市場の390億円と近いところまで達した。
映画やドラマを使って英語が習得できるAI英語教材のabceed(エービーシード)は、2024年5月末に累計ユーザー数が440万人を突破。有料会員数は10.1万人となり、この数字は前年同月末比で32%も増加している。
abceedは2024年3月にProプランに対して2割の値上げを行ったにもかかわらず、それでもユーザー数は堅調に推移しているのだ。
このサービスは、ソニーとパラマウントから獲得した映画やドラマ100作品以上に対応しており、映画『トップガン マーヴェリック』や『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』などの人気作で楽しみながら学習が行える。
これらからわかるように、現在は多くの人にとって英会話教室に通うメリットがなくなっているのだ。