市役所を離れ、町おこしの地域と規模を拡大
守時さんが入庁して10年目。新たなステージへと進むときがやってきました。
「2020年2月に市役所を退職しました。本来は異動が多いはずの職場で唯一、ぼくは一度も部署を異動していなかったんですよ。やっていることは属人的な業務だと自覚する一方、特別扱いにならざるを得ない状況は、組織として健全ではないように感じていました。何より、自分のやりたいことは市役所の枠組みより、民間で行った方がスピードも速く制約も少ないと判断したんです」
こうして立ち上げたのが、全国各地のふるさと納税をはじめとする地域活性化事業をサポートする会社・株式会社パンクチュアル。当時の上司と相談し、しんじょう君の運営も守時さんが継続することが決まります。
“世界と戦える地域を作る”という理念を掲げ、地方創生にまつわる事業を展開し、創業5年目にして全国に営業所を20カ所、社員115人を抱える会社へと成長を遂げました。
今年2024年には新たに39人の新卒(第二新卒含む)を採用
京都府や静岡県沼津市など、いろんな組織や地域とタッグを組むことも。それぞれの地域が抱える課題や解決方法に触れることで、大量の知見が蓄積されつつあるのだそう。
「ただ、SNSもふるさと納税もゆるキャラも、いわばツールの一つに過ぎません。たとえば道の駅の運営など、ほかのことも合わせて総合的にテコ入れをする必要があります。その地域にぴったりの方法を考えて、トータルに提案するのがぼくらの仕事です」
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故郷が増えていく!だから町おこしは面白い
もとは「1ミリも興味がなかった」はずの町おこし。なぜそこまでハマったんでしょう?そう尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「一つは、町おこしという仕事と自分の相性が良かったから。もう一つは、人と出会うことが面白かったから」
守時さんが地域の生産者にふるさと納税の返礼品の出品を依頼すると、だいたいは「あなた誰?」から始まるのだそう。
「最初は『ふるさと納税の出品なんてものに協力しなきゃいけないの?めんどくさい』って生産者さんから言われるんです。でも、実際にスタートすると『あれ、いっぱい売れた』『レビューがついてる!』『今度飲みに行こうよ!』と言ってくれるようになって。
須崎町に限らず、町おこしで関わった町が増えるたびに、ぼくを迎え入れてくれる人や場所も増えていく。そこで生まれ育ったわけでもないのに、まるで自分の故郷が増えていくような感覚になるんですよね。これがすごく楽しいんです。この仕事の1番面白いところですね」
2023年にはリニューアル10周年を迎えたしんじょう君。須崎の町は、この10年で大きく変わりました。
「いろんなところにしんじょう君のイラストがプリントされていたり、しんじょう君とコラボしたコンビニができたりして。何よりうれしいのは、ぼくが関与していない部分でもしんじょう君を使ってもらい、いろんな盛り上がりが生まれていること。しんじょう君が有名になるほどふるさと納税の寄付金や須崎を訪れる人も増え、町が豊かになっていく。いま、良い循環が生まれていると思います」
200万円の予算から34億円の税収を生み出し、「須崎をスゲー町にする」という面接での約束をみごと果たした守時さん。地域にもたらした成果はすでに十分に見えますが、「いや、まだまだこれから」と、ストイックな返事。
「ふるさと納税だけで言えば150億を町に還元しているところもあるんです。34億円なんて序の口。しんじょう君の国内の認知度は5%で、くまもんの認知度は80%くらいあるそうです。ぼくらには、まだまだできることがある。常に時代の流れに対応し続け、みんなで豊かになっていきたいんです。そこにゴールはありません。力を尽くして挑戦し続ける、それだけです」
2017年「須崎アンバサダー」としてパリで開催されたジャパンエキスポにも出演したしんじょう君