市立船橋と流通経済大柏。千葉県のみならず全国的に見てもトップクラスの強豪校は、共にユース年代最高峰のリーグであるプレミアリーグに所属している。
全国の猛者たちが集まるこのリーグにおいても、この2校は伝統、実力ともに長くトップシーンを走り続けている名門だ。その2校が激突する“千葉高体連ダービー”はいつの時代も両者のプライドが激しくぶつかり合う激戦となる。
10月13日、船橋市法典公園(グラスポ)球技場で行なわれたプレミアリーグEAST第18節で両者は相まみえた。今年の対戦はインターハイ予選決勝とプレミアEAST前期の2回で、2-1、1-1と市船が1勝1分の成績を残している。
しかし、プレミアの順位で行くと、下位に沈んでいる市船に対し、流経柏は一時期首位を走るなど、明暗は分かれていたなかでの結果だった。
今回は夏以降に息を吹き返したかのように勝点を積み重ねてきた市船と、思うように勝ち星を掴みきれない流経柏という状況での激突だった。
試合は立ち上がりにいきなり動いた。6分に市船のエースストライカーである久保原心優がFW仲野真翔のパスを受けて右足を振り抜いてゴールに突き刺した。
だが、これで目が覚めた流経柏はカターレ富山入りが内定しているMF亀田歩夢、FW粕谷悠ら前への推進力のあるアタッカー陣が激しい前線からのプレスと、奪ってからの素早いショートカウンターで市船ゴールに迫った。
それに対し、「相手は積極的に狙ってくることは分かっていた。この試合は守備の要であるCB岡部タリクカナイ颯斗がいなくて、守備の不安は少しあったのですが、この1週間は3年生が中心となって、最後は身体を張って枠に打たせない守備を意識した」とGKギマラエス・ニコラスが口にしたように、ゴール前ではしっかりと中央を閉じてシュートを身体で弾いたり、空中戦で勝ったりと気迫の守備を見せた。
後半に入っても攻撃の手を緩めない流経柏に対し、市船も堅守と効果的なカウンターを仕掛けるなど、前半よりもボールの行き来が激しい試合となっていった。ここで躍動したのが両チームのGKだった。
55分、右FKの折り返しを市船FW伊丹俊元が胸でトラップすると、そのままオーバーヘッドシュート。ボールは枠を捉えたが、流経柏GK松本陸がビッグセーブ。その直後の左CKから再び決定的なシュートを放たれるが、松本が横っ飛びで弾き出した。
77分、今度は流経柏が左から崩して、MF稲田斗毅が左足で強烈なシュートを放つ。ボールはゴール左上隅に鮮やかな弾道を描いて飛んだが、市船GKギマラエス・ニコラスが右手の指先で触れてコースを変えて外に弾き出した。
さらに終了間際にスルーパスに抜け出したMF和田哲平と1対1になるが、鋭い飛び出しで和田のシュートをストップ。最後の山場をビッグセーブで凌ぎ、試合はタイムアップの時を迎えた。
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最小スコアの1-0で市船が今季の成績を2勝1分にする勝利を掴んだ。しかし、まだ市船は11位と、プレミア残留に向けて予断を許さない状況にある。
「もう僕らは1試合1試合を必死に戦うだけ。選手権に出ること、プレミアに残留することをまず絶対目標にしてやっていきたい」と久保原が口にしたように、この勝利でホッとしている暇はないと、次に向けて気を引き締めている。
一方の流経柏では試合後、榎本雅大監督が選手とコミュニケーションを取る姿が印象的だった。チーム全体からライバルに敗れ、かつ今季一度も勝てていないことに対する悔しさがひしひしと伝わってきた。
このままでは終われないと選手権予選でリベンジし、2021年度の選手権以来となる全国への扉をこじ開けるべく燃えに燃えている。
今季4度目の対決は予選の組み合わせを見ると、決勝で顔を合わせる形となるが、トーナメント戦ゆえに実現するかどうかは分からない。だが、実現した時は間違いなく全国トップクラスの激戦となるだろう。
その決戦を迎える時まで、両チームの選手たちは厳しいトレーニングとチーム内競争に打ち勝ちながら、切磋琢磨をしてチームとしての完成度を高めていくだろう。お互いの意地とプライドをかけて。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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