いわゆる「汗っかき」のなかには、涼しくなるこの時期を迎え、「これで、ようやく汗の臭いや体臭を気にしなくてすむ」とほっと一息、という人も多いことだろう。

 だが、残念なことに秋は、夏よりも脇の臭いなどの体臭がきつくなる季節だということをご存じだろうか。

 そもそも汗そのものは無臭で臭いはないが、人間は汗をかくことで体の各所で雑菌が繁殖。その雑菌が古い皮脂や角質を分解した時にできる「イソ吉草酸」という物質が臭いの元となり、それを発散させることにより、脇や足が臭くなる。

 では、なぜ秋のほうが夏よりも、この雑菌を繁殖させやすくなるのか。

 答えは簡単。気温が高い夏場は大量に汗をかくものの、そのぶん乾くのも早い。一方、涼しくなった秋でも、少し動けば汗ばむため、汗が脇や背中をじっとりと濡らすということもしばしば。すると、どうしても乾ききらない汗が、いつまでも肌に残ってしまう。

 そうなることで雑菌の繁殖が進み、時間が経てば経つほど汗が残った場所が臭くなる。つまり、乾きにくい秋の汗の方が、夏の汗よりも臭くなりやすいというわけなのだ。

 しかも、秋になっても夏の名残でつい面倒とばかり、入浴せずシャワーで済ます人も多いようだが、そもそも汗には体の中に溜まった老廃物も一緒に出してくれる働きがある。そのため、汗をかかず老廃物を溜め込んでしまうと、さらに臭いがキツくなってしまう。

 以上、これら諸々の要因が重なり、秋の汗は臭い、となってしまうのだ。なので、匂いが気になると思う人は、きちんと湯船に浸かり体を温めて汗を流すことで、老廃物を体外に出してやることを心がけること。また、老廃物を出すためには、ウォーキングなどの有酸素運動も効果的なので、どんどん取り入れていきたい。そして、汗をかいたら、必ず、すぐにタオルで拭きとることをオススメしたい。

 さらに秋は雨や台風も多く、夏のように気温が高くないため洗濯物が乾きにくい季節。自宅に乾燥機がない場合は、出来るだけ厚手の服を避け、インナーなどで調整して薄手の服を着用することで、雑菌が繁殖しやすい生乾きの衣類を身に付けないよう努めることも大切だ。

 もちろん、それでも匂いが気になる人は、制汗スプレーや塗るタイプのデオドラントを使用するのもOK。ただし、香りの強いタイプは、一見体臭をごまかせそうな気がするが、場合によっては香料と体臭が混ざりあい、嫌な匂いが増してしまう場合もあるので注意すること。

 なお、汗をかいて雑菌が繁殖し始めてから制汗スプレーを使用しても、雑菌を抑え込むことはできないため、制汗スプレーなどは、汗をかいてから使うのではなく、あらかじめ汗をかく前に使うのがポイント。朝の出勤前に使用するようにしたい。

 味覚の秋、紅葉の秋。体臭がきつくなる秋だからこそ、きちんとしたケアを心がけ、紅葉を楽しみならがウォーキングしようではないか。

(健康ライター・浅野祐一

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