森永卓郎(C)週刊実話Web

発足したばかりの石破茂内閣に早くも暗雲が立ち込めている。

野党が反発するだけでなく、新聞各紙や与党内からも強い批判がなされているからだ。

第1は、石破総理のリーダーシップ欠如だ。

総裁選では、国会で十分な審議時間を取った後の解散を主張していたが、幹事長や閣内からの圧力で、10月27日投開票という最短での解散総選挙を打ち出さざるを得なくなった。

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また、閣僚19人のうち13人が初入閣の大臣待機組という軽量級内閣となったのも、石破総理の党内基盤が弱く、旧派閥から在庫一掃セールを押し付けられた結果だ。

第2は、経済音痴ぶりの露呈だ。

総裁選で「日銀は政府の子会社ではない」と、利上げに理解を示していた石破総理は、総裁選直後に起きた株価暴落の石破ショックに懲りて、「当面の利上げはない」と真逆の主張に迷走した。

そのことが政策の一貫性を問われることになったのだ。

第3は、政策の独自色の欠如だ。

唯一の独自政策である「地方創生」で打ち出した「地方創生交付金倍増」だが、この予算は総額が1000億円しかないため、倍増させても焼け石に水の効果しかないことは明らかだ。

こうした点を踏まえて、石破政権が長期政権になることを見通す評論家やメディアは、皆無に近い状況にある。

そもそも石破総裁が誕生したのは、総裁選で高市早苗氏が想定外の票を集めたことに危機感を覚えた岸田文雄前総理が、ライバルの石破氏に票を集める指示を出した「消極的支持」に基づくものだった。

ただ、それが奏功したことで、高市支持を指令した麻生太郎前副総裁のキングメーカーとしてのメンツは、まるつぶれになった。

石破政権でも、麻生氏は最高顧問という名誉職に棚上げされてしまった。

麻生、菅失墜で岸田がキングメーカーに

一方で、石破政権誕生の立役者として副総裁となり、キングメーカーとして復権した菅義偉元総理は、このまま石破政権が短命に終われば、再びキングメーカーの座から滑り落ちることになる。

麻生、菅という2大キングメーカーが権力を失墜させたら、その後の実権を握るのは、岸田前総理しかいない。

しかも、岸田氏の同世代に実力を持ったライバルは皆無だから、岸田氏のキングメーカーとしての地位は長期安定となる。

かつて岸田氏は小学生に「なぜ総理を目指したのか」と聞かれ、「最も権限が大きいから」と答えた。

そして、最もやりたいこととは「人事」だとも言った。

その夢がまさに実現しようとしているのだ。

岸田氏が代表を務めていた宏池会は、古くから財務省と密接な関係を築いてきた。

一心同体といっても過言ではないだろう。

岸田派が解散したといっても、岸田氏がキングメーカーとして自民党に強い影響力を及ぼし続けるということは、事実上財務省の意向が自民党を支配し続けることを意味する。

その結果、石破内閣が短命に終わったとしても、その後の政権が増税・増負担、社会保障カット路線を続けていくことは確実と言えるだろう。

残念ながら、そこから明るい日本の未来は見えてこないのだ。

「週刊実話」10月31日号より