「メディアは騒ぎすぎだ」
現金以外の宝飾品は、買取屋に持ち込むという。
「金の延べ棒やインゴットは目方によって時価相場に近い金額で買い取ってくれる。宝飾品は相場の2割か3割がいいところだ。指輪などは石をばらし、金を溶かすのも面倒だから、せいぜい3割」
時計は高級なブランド時計でも基本、買取屋に持ち込まない。シリアルナンバーがあるからだ。
「時計好きの個人の使用者に商品として定価の2割程度で売却する。盗む時にギャランティカードが一緒にあれば別だが、そんなことは稀だからね。もし警察にシリアルナンバーが届けられていれば、それで足がつく」と話すこの幹部は、自身も盗品を何個か買い取り、個人客に売ったという。
「売る時に、『俺の所に回ってきたんだけどさ』と正直に話せばいいだけ。出所はどこかとかは聞かれないし話さない」
現金化された金は分配され、(窃盗・タタキなどの実行犯の)現場には報酬として40%が分けられる。
「前は現場報酬が50~60%ということもあった。今は滅茶苦茶、配当が安くなっているから、自分たちでやらず闇バイトで人を集めて使うようになった。闇バイトで集めたヤツらは安く使えるからね」
指示役ら4人は早ければ来週にも強制送還され、日本の警察に身柄が引き渡される可能性も出てきた。現地では渡辺容疑者を詐欺組織のビックボスと報じ、彼らが収容されているビクタン収容所にはメディアが面会を求めて押しかけている。今は20人近くのメディアが、送還のXデーを報道しようと現地に集まっていると報じられている。
その様子に幹部は「メディアは騒ぎすぎだ。これではフィリピン警察も大物を捕らえたという感覚になる」と冷ややかだ。
「指示役は本体に近いが頭ではない。警察はやつらを逮捕してすべてをゲロさせるつもりだろうが、こんな騒動になれば、こいつらに指示を出した人間まではたどりつかない」
※本記事は2023年2月2日に公開したものに、加筆・修正を加えたものです
取材・文/島田拓 1975年 東京都出身。警察、暴力団関係に詳しいフリーライター。週刊誌、ニュースWEBメディアで執筆。
集英社オンライン編集部ニュース班