女子プロレス界を活性化するスターダムの“全方位外交”。ヒントになったのは「かつてのアメリカマット」

 今年に入って、女子プロレス界の風景が大きく変化している。変化の中心にあるのは業界最大手のスターダムだ。

 これまでは他団体・フリーの有力選手が参入してくることが多かったスターダム。しかし現在は、スターダムの選手が他団体に出場することが多くなった。

【動画】H.A.T.E.の渡辺桃がディアナの絶対センター梅咲遥を撃破 上谷沙弥はWAVEのシングルリーグ戦で優勝。安納サオリは“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムを敵地であるセンダイガールズのリングで奪い返し、同時にセンダイガールズのシングル王座も獲得した。IWGP女子王座を保持する岩谷麻優は、藤本つかさを相手に敵地アイスリボンで防衛を果たした。

 若手選手たちも勢力的に他団体に参戦しており、現在のスターダムは“全方位外交”と言うべき状態で女子プロレス界を活性化している。

 背景にあるのは、スターダムの新体制だ。昨年12月から岡田太郎氏が社長に就任。また今年2月には創設者のロッシー小川氏が団体を離れている。

 初めはオファーに応じて選手を派遣していた“岡田体制”のスターダム。春からはスターダムからも各団体との関係強化に動いたという。新社長の岡田氏はもともとプロレスファンだが、仕事としては親会社のブシロードで声優ユニットなどを手がけてきた。つまり本人曰く「業界で最もNGがない」。過去のしがらみにとらわれることなく動くことができるのだ。

 有力選手がスターダムに来る形から、スターダムの選手が各団体へ出向く流れ。その狙いは当然、業界全体を盛り上げることだ。

「スターダムが一番でありたいという思いはもちろんありますが、同時に女子プロレスというジャンルが一番だということも見せていきたいので」(岡田)

 10月13日に開催されたディアナの後楽園ホール大会では、メインイベントにスターダムから渡辺桃が参戦している。ディアナは井上京子、ジャガー横田を擁する“全日本女子プロレス直系”の実力派団体。桃が対戦したのは、ディアナで“絶対センター”と呼ばれる梅咲遥だ。
  トップレスラー同士の激しい攻防を制したのは桃だった。ヒールユニットH.A.T.E.のメンバーらしく、要所でバット攻撃も繰り出していたが、最後は技の競り合いで勝利。梅咲も負けを認めつつ、H.A.T.E.とディアナ新世代メンバーとの全面対抗戦を訴えた。このところディアナは新人が増えており、ベテランのネームバリュー以外のところで団体をアピールすることがテーマになっている。
  これからH.A.T.E.とディアナは“戦線拡大”となるはず。ディアナの若手にとっては、厳しい闘いであると同時に大チャンスだ。

 女子プロレス業界全体を盛り上げる“全方位外交”、そのヒントになったのはWWF(現WWE)が全米のマーケットを支配する以前のアメリカマットだという。各地のプロモーターが「テリトリー」を管轄し、その共通の価値観としてNWA世界タイトルがあった。

「日本は広くないので地域ごとというわけではありませんが、各団体がそれぞれに個性を発揮して、その上で何かしらの形でまとまっていければと。一つの団体が業界を統一するというのは強引ですし、といって団体分裂の繰り返しでファンが分散するのもよくない。その意味で、かつてのアメリカのテリトリー制もアリではないかなと」(岡田)

 さまざまな団体と交流、あるいは対抗し、競い合ってトップであることを示す。それが今のスターダムのスタンスだ。交流戦、対抗戦は乱発すると飽きられるというリスクもあるが、そこに関しても各団体の腕の見せどころだろう。いずれ合同興行、オールスター戦といった形につながることにも期待したい。

取材・文●橋本宗洋

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