バックカントリーガイドのギア・セットアップ ’24-25シーズン|プロの選択とレビュー

Spur 秋田マウンテンガイドサービス|佐藤真理子

滑りを妥協せず、歩きにも支障なく、快適な状態でいられるか

GEAR Set Up

SKI:FACTION| agent4  179cm/ gent3  172cm
BOOTS:ATOMIC| HAWX ULTRA XTD 115
BINDINGS:ATOMIC| SHIFT² 10 MN
POLE:Black Diamond |RAZOR CARBON PRO

板は、滑りの妥協はしたくなくなくて、それでいて仕事をする上で、いろんなシチュエーションで信頼して足元を任せられるかどうか?ということで選んでいます。乗り味が好みかどうか、あとは、色やデザインもできれば心がときめくものを。出会った瞬間、滑り出した瞬間に、「この子とは友達になれるかも!(ワクワク!)と思えた板は相棒に決まりです。

板は重さも大事で、藪(やぶ)を漕いだりするときは片手で持つことがほとんどだし、重すぎると持ち運びに苦労するので、どんなにしっかりした板とビンディングのセットでも行動に向かないし、担ぐにしても体力を奪われるので、片手キープで持てるかどうかも重視しています。

「agent3 172cm」は12月のゲレンデ足慣らしから、ハイシーズンのパウダー、5月の鳥海山まで、シーズン通して楽しめるし、安心して任せられる1本です。テールの張り感が程よくて、ターンの後半にしっかりついてきてくれる感じがお気に入りです。
長さとしては、もの足りなく感じることもありますが、オープンバーンも樹林帯もトータル的に安全に取り回しが効くかどうかというところを考えると、安全性を少し優位にするとこの長さが自分には合ってるかな?という感じです。

「agent4」は、agent3とは乗り味が少し変わって、自由度が高く、足裏に伝わる反動をうまいこといなしてくれて、扱いやすく、すごく楽しい板です。太さは数字ほど感じず、どこでも遊べるし、ツアーにも連れて行ける相棒です。

ビンディングは、他もいくつか使ってきた中で、今は「Shift12」に落ち着いています。道具はなんでもそうですが、特性やメリット、デメリットを理解した上で、滑りを妥協せず、歩きにも支障なく、快適な状態でシーズンを過ごせているので、特に不具合やストレスを感じることはありません。
特にビンディングは、丁寧に扱い、モードチェンジなどでは焦らず正しく機能しているかどうかを確認できるかどうかくらいの余裕を持って行うことが大事だと思います。

ブーツは、ATOMIC 「HAWX ULTRA XTD 115」を使っていますが、足首のホールド感がとにかく気に入っています。しかも、この靴を履き始めてからは靴擦れを起こさなくなったので、合っているのだと思っています。

ポールは登山のときも、Black Diamondを使用しているのですが、壊れにくく、特に大きなトラブルに遭ったこともなく、パーツ交換や修理にも対応もしてくれるので、信頼して使っています。

レビューワー
Spur 秋田マウンテンガイドサービス|佐藤真理子  Mariko Sato

高校までアルペン競技、その後基礎スキーへ。全日本スキー技術選手権出場経験あり。とあることがきっかけで山スキーに魅せられガイドを目指し国際自然化環境アウトドア専門学校(i-nac)で学びプロガイドへ。

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TERUI DAICHI|照井大地

軽さ・剛性感・扱いやすさの3つの要素が高次元に調和

GEAR Set Up

SKI: ATOMC|BACKLAND102(冬季)・BACKLAND85(春季)
BINDINGS:ATOMIC|SHIFT
BOOTS:ATOMIC |BACKLAND XTD 

1本でどんなシチュエーションでもこなしたいという思いでセンター102mmで。 春の85mmはハイク性能とザラメ雪でも埋まりにくい幅ということで選択しています。登りも意識して、あまり身長に対して長すぎない板が好みです。ブーツはATOMIC「BACKLANDカーボンXTD」を。軽いだけでなくホールド感が良いです。ラストも100mmなので、軽いブーツにありがちなナローラストではなくミディアムラスト。多くのスキーヤーが使えると思います。

レビューワー
照井大地 Daichi TERUI
 

大学在学中に山岳ガイドを志し、国際山岳ガイド石坂博文氏に師事。大学卒業と同時に日本山岳ガイド協会の認定ガイドとなる。20代前半より北欧でのヘリスキーガイドトレーニングやヨーロッパアルプスでの登山、スキーツーリングを経験。

かぐらパウダーステーション|五十嵐和哉

軽量にして登行も疲れないように・ブーツはBOAで速く確実なセットアップ

GEAR Set Up

SKI:K2|MINDBENDER 116C、MINDBENDER 106C  
BINDINGS:Marker|KINGPIN 13、CRUISE 12
BOOTS:K2|MINDBENDER140 BOA 
POLE:BCA| SCEPTER CARBON ALUMINUM

K2 「MINDBENDER106C 176cm」には「CRUISE 12」をセットし、3月中旬の春雪から月山、鳥海山、立山、富士山など主にロングツーリングでの使用です。スキーとビンディングも軽量にして、長い登りや急傾斜での登りでも疲れず、安定して登ることができます。ウッドとカーボン繊維のバランスの良さが斜面変化、アイスバーンにもしっかりとホールドしてさまざままな状況下で安定感を出してくれます。

「MINDBENDER140 BOA」ですが、BOAブーツのダイヤルを回すだけで、足全体を包み込む的確なホールドが可能になり、ターンの始動も早く確実になる。逆回しで微調整ができる。 ハイクアップ時に、バックルが雪の壁にあたたりすることもなく、滑走に移るセットアップ時もバックルを絞めたり調整もなく、BOAを締めるだけでセットアップができ、速くて確実です。

レビューワー
かぐらパウダーステーション五十嵐 和哉 Kazuya Igarashi

モーグル全日本チャンピオンを経てW-CAP出場、ナショナルチームコーチを務め里谷、三浦、附田、原など育成。三浦雄一郎氏に従事しスノードルフィンで活躍。2008年三浦氏と共にエベレスト登頂。現在は、BCスキー・登山ガイドとして、かぐらパウダーステーションを支える。

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IDEHA|石沢孝浩

テレマーカーへオススメのセットアップ

GEAR Set Up

SKI:K2|WAY BACK 106 (179㎝)
BINDINGS:22DESIGN|アクセル
BOOTS:SCOTT|VOODOO
POLE:K2|DISPATCH 120

私はテレマークなので、硬めの重い板より軽くてしなりのあるK2の「WAY BACK」がとてもフィーリングがよい。パウダーシーズンはセンター106mmを使用し、雪が落ち着いてくる3月下旬からはセンター98mmを使い分けしている。ビンディングはNTNではなく75mmケーブルタイプを好きで使っている。NTNのようにガッシリした遊びのないビンディングも悪くはないが、少し遊びが出る程度でパウダーをより自由に滑るのが好きな私は、やっぱりケーブルかな。「22DESIGNアクセル」のシンプルな構造で故障が少ないのも選択の理由ですね。

レビューワー

IDEHA|石沢孝浩 Takahiro Ishizawa

蔵王の片隅に生まれ育ち、幼少から野山でスキーを楽しみ育ちました。月山でガイドを始めて27年、このエリアで滑る楽しみは飽きることがありません。この感動をお伝えしたいと思いガイドしております。また、ココヘリのドローンパイロットとして山岳エリアでの遭難者捜索活動にも携わり、安全登山の啓蒙活動も行っています。

マウンテンガイド・コヨーテ|古市竜太

ニセコのバックカントリーでパウダーを堪能するためのセットアップ

GEAR Set Up

SKI:tesma ski |フリッパー193
BINDINGS:22DESIGNS |リンクス
BOOTS:K2|SCARPA|TX Pro

ニセコのバックカントリーエリアで新雪を狙って滑っています! 

レビューワー
マウンテンガイド・コヨーテ|古市竜太 Ryuta Furuichi

環境と食に興味を持ち、明治大学の農学部卒業後、雄大な北海道で生活する為に北海道の企業に入社。さらに身近に自然を感じ、環境にインパクトをかけない生活を実践するために マウンテンガイド・コヨーテを立ち上げる。テレマークスキーで雪山を滑るのが大好き。

COLOR SPORT CLUB |舎川 朋弘

剛性感やパワー伝達に優れ、すばらしい滑走感や走破性を持つセットアップ

GEAR Set Up

SKI:TONES SKI|NINJA -Black Edition-.|HANDS |KANBA
BINDINGS:Marker|KINGPIN 13
BOOTS:K2|MINDBENDER120

国産スキーであるTONES SKI(トーンズスキー)。素晴らしい滑走感、走破性から取り回しのしやすさ、足元の安定感に加えテールの粘り具合など、このスキー形状からも確認できる。’24-25シーズン、TONES SKIのサードモデル「NINJA」がリリースされた。まさしく忍者(ニンジャ)がその名の由来。機能美を演出するブラック版で「NINJA -Black Edition-.」だ。

山岳地帯のテクニカルな斜面で張り付くような粘りのある動きをし、リズミカルに落とし込んでターンする様(サマ)はまるで家守(ヤモリ)のよう。その動きと多様な能力は優雅ささえ感じられ、乗り味がとても楽しい。

そして、Marker 「KINGPIN13」は、軽量な点や、より板に近く低いセッティングのダイレクト感がとても良い。その味付けやバランスの調いは絶妙である。TONES SKIと共にMarker KINGPIN13を用いることにより、頼れる剛性感、バランスの取れた雪面との伝達感など、どれをとってもへたりのない、頼れる品質感が期待できる。

ブーツ「MINDBENDER120」においても、その頼れる剛性感、足入れの感覚から足裏全体で雪面をとらえる感覚まで、よりスキーの滑走感を増すことを期待できる信頼のおけるブーツだ。

レビューワー
COLOR SPORT CLUB舎川 朋弘  Tomohiro Tonegawa

現在に至るバックカントリシーンを築いた草分的存在。90年代初頭よりゲレンデ外に目を向け、厳冬期における山岳スキーシーンを切り開いてきた。代名詞となる白馬全域のフィールド開拓を達成してもなおパイオニアワークは続いている。

JUNRINA mountain service長井 淳

山の多様なコンディションへの対応幅が広いセットアップ

GEAR Set Up

SKI:VECTOR GLIDE|GENIUS narrow185
BINDINGS:MARKER|Kingpin13
BOOTS:ATOMIC|HAWX ULTRA XTD 130 BOA GW
POLE:VECTOR GLIDE|V STICK Straight

大人気ファットスキー「GENIUS」のNarrowバージョン。適度な重量としなやかさでディープパウダーから圧雪と幅広いコンディションのターンを楽しませてくれる。 コンディションの対応幅が広いため、山のコンディションが読めないときなどにもおすすめ。

レビューワー
JUNRINA mountain service長井 淳  Jun  Nagai

脱サラし、立山雷鳥荘に勤務しながらガイドトレーニングを経て2010年よりJUNRINA mountain serviceとして活動開始。海外バックカントリートリップ多数経験。夏秋はアルプス・上信越を中心に登山ガイド、冬春はバックカントリースキーガイドとして活動中。

CIRCLE GAME guide service |佐々木翔平

Photo:國見祐介

滑走性能と重量のバランスを重視したセットアップ

GEAR Set Up

SKI:VECTOR GLIDE |INTIMACY SE 188
DYNAFIT |ST rotation14
BOOTS:DYNAFIT |TIGARD110
POLE:VECTOR GLIDE |v stick straight 115cm

シーズンを通して、山からゲレンデまで雪と地形を遊びつくすことができる1台。
滑走性能を犠牲にせず、重量を出来るだけ抑えたセットアップです。

「INTIMACY」はパウダーはもちろんのこと、カービング性能がとても高いです。ビンディング取付位置がかなりセンターよりで初めは驚きますが、滑ってみるとスキーが真ん中から綺麗に撓む感覚が気持ち良く、病みつきになります。ツインチップ形状のため、山での悪雪でも引っ掛かりが少なく操作しやすいですし、ビンディングのトゥピースより前が短いので、キックターンのときにトップが容易に上がってきてくれます。スキーの強さと対応力の高さが魅力です。

「ST RATATION14」はウォークモードへの切り替え、トゥーピースのはめやすさ、ヒールリフターの上げ下げのしやすさ、どれをとっても完成度の高いビンディングです。

「TIGARD110」はHoji Lock システム搭載の4バックルブーツです。この機能がとっても優れもので、一般的な他社製品より少なくとも約 30 秒は早くモード切り替えを終えることができます。扱いに慣れていない方だと 1 度のトランジションで 1 分ほどの違いが出るかもしれません。

風が強いとき、吹雪いているとき、寒さで手がかじかんでいるとき、この機能は大きな助けになるはずです。ウォークモードの時に第 3 バックルだけ緩めると可動域がさらに広がります。第 4 バックルまで緩めてしまうと Hoji Lock の良さが半減してしまいますし、可動域にあまり差を感じなかったので第 3 バックルのみ緩めるのがオススメです。

ポールはスキーヤーであれば伸縮機能は必要ないと思っていて、その分軽量でスイングバランスが格段に良くなります。 ガイドをしているとお客様にシーズンに年3、4回は「伸縮ポールじゃないんですね」と言われます。 だまされたと思って、ぜひ一度ストレートポールを使ってみて下さい‼︎

レビューワー
CIRCLE GAME guide service佐々木翔平 Shohei Sasaki

北海道七飯町出身札幌をベースに、冬はバックカントリースキーのガイド、夏は北海道の自然を幅広くガイドしている。クライミングとスキーを組み合わせることを好む。