基本的には家族で気軽に観られるはずのアニメ映画ですが、作品によっては大人でも「怖過ぎて一旦再生を止めた」「グロがダメな人は避けるべき」という声も聞かれます。何がトラウマになるか分からないものの、人によっては何日も引きずりかねない作品にはどのようなものがあるのでしょうか。



映画『ドラえもん のび太の魔界大冒険』の原作『大長編ドラえもん (Vol.5) のび太の魔界大冒険』(小学館)

【画像】え…っ?今見るとカワイイ? いや、やっぱトラウマ!こちらが『魔界大冒険』の「石像にされたドラえもん」です(3枚)

ドラえもんもミッキーもトラウマ作品が?

 近年、日本で公開される映画の興行成績上位はアニメ映画が占める傾向にあります。それだけ多くの人たちが鑑賞し、また熱心なファンは何回も観に行っているアニメ映画ですが、作品によっては大人もゾッとする恐ろしい描写が登場することも少なくありません。

『ドラえもん のび太の魔界大冒険』

 毎年春頃に公開され、大ヒットを記録する劇場版アニメ『ドラえもん』は、昔は何かとトラウマになるような描写も少なくありませんでした。

 その筆頭として挙げられるのが、1984年に公開された『ドラえもん のび太の魔界大冒険』です。「ドラえもん」のひみつ道具「もしもボックス」によって、魔法が科学文明に取って代わった文明の利器になったパラレルワールドを舞台にした同作には、冒頭でドラえもんと「のび太」の形をした石像が発見されるという不気味な展開があります。

 さらに「何故このような形なのか」「誰が何の目的で作ったのか」が明らかにならないまま、呻き声をあげたり、ひとりでに移動したりしている石像にのび太だけが違和感を持っているのも、子供にとってはなかなかの恐怖シーンと言えるでしょう。

 そして物語が進むと、今作の敵である「大魔王デマオン」から命からがら逃げ出したドラえもんとのび太が、「タイムマシン」で過去に戻るも、追ってきたデマオンの手下「メジューサ」に石化させられてしまいます。特に、くすんだ灰色の肌で痩せこけた顔、正気のない赤い目に蛇の形をした髪と恐ろしいビジュアルのメジューサが、のび太勉強机の引き出しから這い出てくる場面は、子供に強烈なトラウマを与えました。

 なお、2007年に公開されたリメイク作品『映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い』では、メジューサがより人間らしいデザインに変更されているため、トラウマ要素は大きく軽減されたのではないでしょうか。

『ミッキーのアルバイトは危機一髪』

 老若男女に愛されるディズニー映画にも、トラウマレベルの恐怖を与えた作品が存在します。そのひとつ、1995年に公開された『ミッキーのアルバイトは危機一髪』は、わずか10分にも満たない短編作品ながら、ブラックユーモアたっぷりの描写が多い怪作です。

 ストーリーは、「ミッキー」がテレビゲームに熱中するあまり、「ミニー」とのデートの約束をすっぽかしてしまうところから始まります。埋め合わせの海外旅行に向け、旅費を稼ごうと考えたミッキーは怪しげなアルバイトに申し込むことにしました。しかし、そこで「フランクノリー博士」というマッドサイエンティストによって、ミッキーは凶暴な怪物「ジュリアス」と脳みそを入れ替えられてしまうのです。

 ミッキーといえばみんなの人気者でかわいらしいデザインでおなじみですが、今作のミッキーは冒頭から目の下にクマを作りながら不眠不休でゲームをしているほか、人格が入れ替わってしまった後のミッキーは鋭い牙と血走った目を持つ凶暴なビジュアルに変貌しています。子供が観たらトラウマレベルの「ジュリアスミッキー」ですが、普段のミッキーにはないワイルドさがあるためか、フィギュアやTシャツは今なお人気を集めているようです。

 また、フランクノリー博士による実験のシーンでは、脳みそが耳まで詰まっているミッキーの頭の内部が、ユーモアを交えながらも生々しく描かれており、こちらの場面も子供であればトラウマになってしまうことでしょう。筆者自身も幼少期にうっかり観てしまったことから、しばらくミッキーをまともに見られない時期がありました。



『劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel] II. lost butterfly』ポスタービジュアル

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怖すぎる「ぬいぐるみ」演出

『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』

 2004年にPCゲーム『Fate/stay night』が発売されて以降、さまざまなシリーズ作品がコミカライズやノベライズ、ゲーム化されてきた「Fate」シリーズは、数多くの登場人物が命を落とす展開もあり、トラウマシーンも少なくありません。

 2017年から2020年にかけて公開された『Fate/stay night』の劇場版作品『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』も、グロテスクなシーンが多いほか、主人公「衛宮士郎」とヒロインの「間桐桜」の濡れ場がはっきりと描かれるシーンがある第2章『Fate/stay night[Heaven’s Feel] II.lost butterfly』はPG12指定となっています。

 また、『Fate/stay night[Heaven’s Feel] II.lost butterfly』では作中で突如としてドレスを着た桜がぬいぐるみに導かれるシーンがあり、こちらは原作をプレイ済のファンの間でも「あまりにも怖くて鳥肌立った」「これはトラウマ必至」といった声が続出することとなりました。

 途中で意地悪なぬいぐるみに囲まれた桜がつつくとぬいぐるみが破裂し、美味しそうなキャンディが現れます。美味しそうにキャンディを頬張る桜でしたが、現実では千切れた人間の指を今まさに頬張ろうとしていたのでした。

 最初はかわいらしいシーンですが、実は原作で桜が無意識のうちに道ゆく人間を殺して捕食するシーンを、桜の視点で描いた劇場版オリジナルの演出だったのです。桜がつついて破壊したぬいぐるみと、そこから飛び出したキャンディは一体何なのか……と考えてしまうと、ゾッとするトラウマシーンでした。

『いばらの王 -King of Thorn-』

 岩原裕二先生によるマンガ『いばらの王』が原作の劇場アニメ『いばらの王 -King of Thorn』は、治療法のない謎の石化病「メドゥーサ」の治療を未来に託した冷凍睡眠(コールドスリープ)の対象者に、主人公「カスミ」が選ばれるというSFアクション作品です。

 双子の姉妹「シズク」との再会を夢見て、コールドスリープにつくカスミは突如として目を覚ますと、そこにあったのは変わり果てた施設と襲いくる異形のモンスターでした。160人いたコールドスリープの対象者が為す術もないまま無惨に食い殺されていく絶体絶命な状況のなか、シズクを含めた7人の生存者は施設からの脱出を図ろうと立ち上がります。

 本作は得体の知れないモンスターが人間たちを頭から食いちぎったり、細い隙間に無理やり引き込んだりといったグロテスクな描写が続き、「お菓子食べながら観てたけど止めるレベルでグロかった」「耐性がないとキツい」と悲鳴も多く聞かれます。

 原作マンガでもモンスターが人間を襲うシーンはありましたが、アニメになることでより生々しい描写になっていました。大迫力のアクションシーンや美麗なアニメ演出も見どころですが、モンスターによる大虐殺シーンもかなりクオリティーが高く、トラウマレベルの場面です。