疑惑の車高調整システム、レッドブルが存在を認める。ただ、レギュレーション違反はしていないと主張

 レッドブルは、F1アメリカGPから監視が強化された車高調整システムがマシンに搭載されていることを認めたが、懸念されているようなパルクフェルメ下での車高変更はできないと主張している。

 F1アメリカGPを前に、あるチームがフロントビブ(Tトレイとも呼ばれるフロア前端部)の高さを調整し、車高を変更できるようなデバイスを悪用しているのではないかという疑惑が浮上した。

 これはFIAが取り締まりを強化することを明らかにしたことで明るみに出た問題であり、予選と決勝の間に車高を調整し、パルクフェルメ規定に違反しているチームがある可能性についてライバルから懸念の声があがったことを受けたものだ。

 監視のひとつの方法として、F1アメリカGPからはフロントビブにシールを貼り、調整したかどうかを確認することになるという。

 今週末のレースに向けて各チームがオースティンに集まる中、このデバイスをマシンに搭載していたのはレッドブルであることが明らかになった。

 情報筋によると、レッドブルがコックピットからアクセス可能な場所にあるパーツの設定を変更することで、フロントビブの高さを調整する方法を持っているとの憶測がシンガポールGPの時点でライバルたちに広まっていたという。

 これはレッドブルがオープンソースパーツに関するレギュレーションの一環として、FIAのサーバーにそのエレメントの設計詳細を公開しなければならなかったことから判明した。このデバイスには、メカニックが車高を変更するために調整できる設定範囲があることが示唆されている。

 今週末のF1アメリカGPに向けては、レッドブルはマシンに何らかの変更を施す必要はないが、将来的にはその適法性をより明確にするために変更を加える可能性はある。

 前提としてパルクフェルメ規定下ではないフリー走行などでは、このデバイスで車高を調整することに問題はない。ただ、予選で出走した時点から決勝までマシンはパルクフェルメ規定の対象となり、その間に車高を調整した場合は違反となる。

 この問題について、シンガポールGP中に各チームとFIAで話し合いが行なわれ、FIAはレッドブルとの協議の末、違反行為をしていないと判断。そして今週、FIAはレッドブルがパルクフェルメ下で実際にデバイスを調整したという証拠はないと述べた。

 しかし、今後はレギュレーション外の作業ができないよう、この部分の監視が強化されることになる。

 レッドブルは違法なことは何もしていないと否定し、この問題で注目されたデバイスについて、マシンが組み立てられた後は変更できないと主張している。

 レッドブルのあるチーム幹部は次のように語り、デバイスの存在を認めた。

「クルマが完全に組み立てられて走る準備が整えば、アクセスすることはできないが、それは存在する」

「FIAと何度もやり取りをする中で、この問題が浮上してきた。我々は今後の計画について(FIAと)合意している」

 F1マシンがグラウンドエフェクトを大いに活用するようになった2022年以降、マシンと路面との距離、つまり車高はパフォーマンスを大きく左右する重要なセットアップ項目となった。

 当然、一発の速さが求められる予選と燃料を多く積んだ状態で安定した速さが求められる決勝で、マシンの車高を変えることができれば大きなアドバンテージになるのは言うまでもない。だがマシンのセットアップを煮詰める段階で、簡単にビブの高さを調整できるようなデバイスをレッドブルが用意した背景にも納得はできる。

 重要なのは、あくまでパルクフェルメ規定に違反しているかどうかなのだ。

 レッドブルとタイトル争いを演じているマクラーレンも、その動向がライバルから注視されており、最近ではリヤウイングの柔軟性について調査を受けている。

 アッパーエレメントが空力負荷を受けて、回転するようにねじれ、スロットギャップが拡大して空気抵抗を削減する”ミニDRS”と呼ばれたこのリヤウイング。マクラーレンはFIAとの話し合いの末、修正に合意した。