点鼻薬の使用はNG! 鼻づまりが悪化する恐れも
また、症状が軽めの秋花粉は、市販の抗アレルギー薬でもある程度対処ができるようだ。
「市販薬の『アレグラ』や『アレジオン』は、病院で処方される抗アレルギー薬と有効成分が近いと言えます。市販薬で症状が治まるのであれば、市販薬を服用しても問題ないでしょう。眠気が出にくいので、日常的にも使いやすいですね。目の症状が強い場合は、抗アレルギー点眼薬を併用するのがいいと思います」
ただし、市販の点鼻薬の使用には“待った”をかける永倉氏。
「市販の点鼻薬には、血管収縮剤を含んでいるものが多く存在します。血管収縮剤は、血管をギュッと縮ませて鼻の粘膜の腫れを抑えるので、一時的には鼻の通りがよくなったように感じます。最初のうちは半日くらい効くのですが、しばらくするとまた鼻がつまってくる。
そうして何度も使用しているうちに、だんだんと効き目の持続時間が短くなり、かえって鼻の粘膜が腫れ、鼻づまりがひどくなってしまうのです。
血管収縮剤は、そういったリバウンドを起こしやすく、このような状態を『点鼻薬性鼻炎』といいます」
いずれにしても、花粉によるアレルギー症状が強いと感じる場合は、市販薬に頼り過ぎず病院に行くべきだと話す。
「薬の特許が切れたものから市販できるようになるため、市販薬はやや古いものが多いと言えます。症状が強い人は、耳鼻科に行ったほうがたしかな薬を処方してもらえるでしょう。
また、ブタクサは飛散量が少ないからあまりないとは思いますが、もし皮膚がかゆくなるなど、花粉皮膚炎と疑われる症状が出る場合はアレルギー専門医に診てもらったほうがいいですね」
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「猛暑の翌年は花粉が増える」は間違い?
いよいよ10月後半に差し掛かるが、秋花粉シーズンはいつから始まっており、いつ終息するのか。
「実は、ブタクサ花粉はお盆あたりから始まっています。ブタクサは夏の終わりから咲き始めて、10月には咲き終わる。ブタクサ花粉も11月にはほとんど測定されないので、症状が出ている人はあと少しの辛抱ですね。一方で、カナムグラとヨモギは11月くらいまで花粉の飛散が続きます」
ちなみに、2024年の秋花粉の飛散量は“平年並み”だったそう。猛暑の翌年の春は花粉量が増大するという噂もあるが、今夏の酷暑は秋花粉にも何か影響を及ぼしている?
「まず、猛暑の翌年の春に花粉量が増えるというのは、一部合っていますが、正確な表現ではありません。スギ花粉の花芽の最初の分裂は、6月の日射量が影響します。日射量が多いとその分多くの花芽が作られ、それが7~8月で育つ。
さらにいえば、スギ花粉は一年間花粉を花芽につけると、その枝は翌年休みます。気象条件だけではなく、そういった樹の勢いを見ないと、翌年の飛散量を正しくは予想できないと言えます。
なお、今年の東日本の春花粉は平年並みか少し多かったので、来年はお休みするスギも多いかもしれません。少なくとも東日本においては、史上最高の大量飛散ということにはならない可能性が高い。
そして秋花粉についてですが、気象条件によってブタクサの花粉量が変わっているのを見たことがありません。だから、夏の暑さはあまり秋花粉に関係しないと思います。一年間の花粉の動きが気になる方は、東京都保健医療局が出している『東京都の花粉情報』というサイトを参考にしてみてください」
もうすぐピークは終わりを迎える秋花粉だが、今年セーフだった人も、来年の秋に発症する可能性は十分にある。早めに花粉情報をチェックして、次のシーズンに備えよう。
プロフィール
永倉仁史(ながくら・ひとし)
ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長。アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患を専門とし、花粉症に関してはNPO花粉情報協会の理事を務める。
取材・文/渡辺ありさ