6K RAW収録が可能
まずは6K RAW収録が可能になった点だ。
これは、昨今の商業案件において非常に魅力的な機能だ。というのも、現在では4Kでの納品が一般的になりつつあるが、納品解像度よりも大きなサイズで撮影できるということは、編集時の自由度を確保できることとイコールだ。
つまり、6Kで撮影することにより、必要に応じて編集時に画角をトリミングすることが可能になり、少し広角で撮影し、後から表情やディテールをクローズアップするといった、柔軟な処理が可能になるのだ。
セッティングの時間が限られている、ワンオペでの撮影においてこれは非常に助かる。
ドキュメンタリー撮影などでは、限られた秒数の中で、引きと寄りの2カットを撮影しなければならないこともある。そのような状況だと、必要最低限の秒数で素早くレンズを操作して撮影しなければならない。しかもAF性能が低いとフォーカスにも気を配らなければならない。そこまでしても欲しい秒数のカットが撮れずに再生速度を少し落として間を埋める、という苦渋の決断をした経験がある方もいるだろう。
しかし、4Kを超える解像度で撮影が可能なC80は、6Kで引きのカットさえしっかり押さえておけば、編集時に必要な秒数を切り出すことができる。レンズを操作する手間も、それによるフォーカスロストを心配することもないのだ。
もちろん、そんな撮り方は邪道だという意見があることは承知している。
カメラマンが腕を磨くべきだという意見ももっともだ。
しかし、クライアントがいる商業撮影の現場は、カメラマンが準備を終えるまで待ってくれないことが往々にしてあるのだ。
むしろそんな場面では、カメラの性能をフルに活かして作品のクオリティを上げることこそが、プロカメラマンに要求される結果なのである。
もちろん、RAW自体の性能も抜群だ。波形上でオーバー、アンダーにならないように注意しておけば、グレーディング次第でハイライトを落として背景や風景をしっかり見せることが可能だ。
画角も描写も、時間のない現場での手間を最小限に抑え、それでいて最大限の自由度を確保できることは、カメラマンにとって大きな武器と言える。
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フルサイズセンサーの恩恵
C80のフルサイズセンサーは、様々な利点がある。
それを最も強く感じたのは、広角レンズの活用においてだ。RF15-35mm F2.8 L IS USMは、いわゆる「ズームレンズ大三元」と呼ばれる焦点距離で、多くのカメラマンが使っている。しかし、フォト機でR5を使う私にとっては、Super 35mmセンサーでは本来の画角を活かしきれないと感じることが多く、なんとかしたいと思っていた課題だった。
今回、フルサイズセンサー搭載のC80が発表されたことでこの問題は労せず解決。広角レンズのポテンシャルを最大限に引き出すことができる。
例えば、今回の作例のようなカウンター内の限られたスペースで撮影する際、「もっと引きたいけど、これ以上後ろに下がれない」という状況になると、せっかくの広角レンズが無駄に終わってしまう。(しかも、そんな時に限って「もう少し引いたカットはありませんか?」と聞かれるものなのだ。)
しかし、C80なら自分がイメージしているレンズの画角がそのまま活きるので、不測の事態はそうそう起きない。
C80フルサイズモードとRF15-35mm F2.8 L IS USMで広角撮影
もちろん、その分寄り側の焦点距離は犠牲になってしまうが、ドキュメンタリーの現場では圧倒的に広角側の方が需要が高い。「寄り」は自分の足で稼げることが多いからだ。どうしてももうひと寄りしたい場合は、前述のトリミングを使うことも可能だ。
とはいえ、C80にはSuper35mmモードも搭載されており、約1.6倍の画角にクロップして撮影することが可能だ。例えば、RF24-105mm F2.8 L IS USM Zの望遠側を約168mm相当として利用できる。センサーモードとレンズの組み合わせで活用の幅が広がる。
しかも、Super35mmモード時も最大4368×2304の解像度で撮影が可能。
こちらも、4.3Kという4KオーバーのRAW素材でありながら6K RAWよりも軽いデータで保存できるので、グレーディングの段階でもPCに負担をかけることが減る。