3段階のBase ISOの威力
C80には、先に発売されたEOS C400と同じく、3段階のBase ISOが搭載されている。
Canon Log2での収録では、ISO12800でもノイズがそれほど目立たないことに驚いた。
ソロオペレーションでライトの持ち込みが難しかったり、急な場面でF値(T値)を絞らねばならない時などは、思い切ってISOを上げて、ベース感度を一段上げてしまうことも選択肢に入れられるほどだ。
ただ、RAWでの撮影時はISO12800まで上げてしまうと、どうしてもノイズ感が出てしまう。
その場合は、案件次第では編集時にノイズリダクションをかけるなどの処理が必要となる。
とはいえ、Base ISOの選択肢が一つ増えたことはカメラマン心理として非常にありがたく、この機能が今後のCanon製カメラの標準機能になることを祈るばかりだ。
Canon Log2、ISO 12800で撮影
(広告の後にも続きます)
カメラマン、クライアント、どちらのニーズにも応えてくれるCanon 709
Canon 709ガンマを使用することで、後処理を行わなくても美しい映像を得ることができる。特に、スケジュールや予算の関係でカラーグレーディングに時間をかけられない案件では、いわゆる「撮って出し」の画質が非常に重要だ。
Canon 709は一般的なBT.709 Standardよりも白飛びが抑えられておりダイナミックレンジが広がったように感じる。
私のようなスタイルのカメラマンは、素材を提供して編集はお客様が行うという場合も多々ある。そういう場合はRAWやLogで素材を渡すわけにはいかない。かと言って、せっかくシネマカメラで撮影した映像が、安価なビデオカメラで撮ったものと変わらなくなってしまうのも不本意だ。「撮って出し」をしっかり撮れるCanon 709は、そのようなクライアントのニーズと、カメラマンのこだわりの両方に応える優れた選択肢である。もちろん、ライブ配信などのリアルタイム性が求められるシーンでも力を発揮することは間違いない。
ちなみに、Canon 709に設定した場合は、前述のBase ISOは400、1600、6400の3段階に変化するので注意が必要だ。
総評
商業フォトグラファーにとって、映像に進むか否かは、その後のビジネスにおいて大きな分岐点となる。
私の場合は映像への興味が大きくなり、気づいたらCINEMA EOS、RFマウントにとても惹かれていた訳だが、今にして思えばこの選択は間違いではなかった。
CINEMA EOSを導入したことで、撮影、作品の質が上がり、クライアントの満足度も上がった。すると、さまざまな動画案件で声をかけてもらえるようになり、業務の幅が広がったのだ。
EOS C80の登場により、6K RAWや3段階のBase ISOといった高機能を活用し、よりフレキシブルな撮影が可能になった。特に、限られた時間で最高の結果を求められるソロオペレート撮影において、C80は大きな安心感と実用性をもたらしてくれるカメラに仕上がっていることが実感できた。
EOS C80で全編撮影「Slow Rush Caffee」
撮影協力: