服部樹咲×吉田栄作インタビュー『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』愛さずにはいられない父娘が織りなす温かな関係

世界三大毛織物(ウール)産地として世界的に注目される、愛知県から岐阜県にまたがる尾州地域を舞台に、夢に挑戦する高校生の青春と、登場人物それぞれが抱える葛藤や障壁、そして支えが幾重にも紡がれた家族の感動物語、映画『BISHU 〜世界でいちばん優しい服〜』が先行公開中、そして10月18日(金)より拡大公開される。

発達障害を持つ高校生・史織に、映画『ミッドナイトスワン』で演技未経験ながらその類い稀な存在感で一躍注目を集め、日本アカデミー賞新人俳優賞に輝いた服部樹咲。東京でファッションデザイナーとして活動していたが、挫折して実家に戻ってきた史織の姉・布美には岡崎紗絵。亡き妻との約束を守り、家事に育児に奮闘し、営む機織工場の閉鎖の危機に揺れながら娘たちを見守る父・康孝には吉田栄作。そんな家族を陰ながら支える史織の伯母を清水美砂が演じる。

幾多の壁にぶつかりながらも夢を追いかける娘、娘を想うがゆえに家族と対立してしまう父。そんなごく普通の温もりある優しい親子関係を演じた、服部さん、吉田さんに本作の魅力と撮影で育まれた2人の関係性を伺った。親子感たっぷりのインタビューをご覧ください。

デビュー作から成長したこと

ーー最初に脚本を読んだときの感想や率直なお気持ちをお聞かせください。

服部 私、地元が名古屋なんですけど、年に一度ぐらいしか帰ることがないので、まず愛知県で撮影できるということがすごく嬉しかったです。

あと、今作はデビュー作の『ミッドナイトスワン』と同じ森谷プロデューサーでしたので、撮影から4、5 年経って、顔も身長も性格とかも色々変わったと思うので、観客の皆さんも含め、成長した新しい一面をお見せできたらなと思いました。

ーーデビュー作の『ミッドナイトスワン』から、ご自分では、どんな点が変わったと思っていますか?

服部 デビュー当時は、すっごい人見知りで、あまり喋れなかったんです。去年ぐらいから人と喋れるようになって、素を出せるようになりました。だから『ミッドナイトスワン』のときは森谷さんとは、単語でしか会話してないぐらい(笑)。

吉田 『ミッドナイトスワン』のときはいくつだったの?

服部 撮影当時は13歳でしたね。絶賛反抗期&人見知りで、すごかったですね。

ーー年齢的なものもありますからね。吉田さん、人見知りだって思ってました?

吉田 今回はそんなことなかったけど、変に緊張されたり、怖がられたりするのが嫌で、それだけは避けようと今回「まず先に飯食いに行こう」って言ってね。

服部 うん。

吉田 とにかく他愛もない話をしたいなと思って、みんなですき焼きを食べに行ったんですよ。明日から家族になるわけだから、まず同じ釜の飯食おうよ、じゃないけどね。それがよかったと思いますよ。

ーー仕事に関係ないところでのコミュニケーションも大事ですよね。

吉田 そういうことがコロナ禍はできなかった、ずっとね。「いいじゃん、やろうよ」ってね。絶対作品のためにはいいわけだから。

ーー元人見知りとしては、いきなりご飯に誘われて、怖くなかったですか?

服部 衣装合わせや本読みのときにお会いして、吉田さんの温かさを知っていたので、全然怖くなかったです。むしろ誘っていただいて嬉しかったし、そこで清水さんとも岡崎さんともいろんなお話ができたので、すごく大切な時間だったなと思っています。ありがとうございます。

吉田 よかった。

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ふたりの共通する繋がり

ーー吉田さんは、脚本を読んで、どんな感想をお持ちになりましたか?

吉田 僕、音楽活動しているんですけど、たまたま撮影の1年ぐらい前からバンドマスターに「名古屋の近くに一宮ってところがあるんですけど、すごく音楽が好きな人たちが多くていいですよ。一宮でも音楽活動しましょうよ」なんて言われてたんですよ。

最初は”尾州ってどこなんだろう?”ってところから始まったんですけどね。台本開いたら一宮が舞台になってるじゃないですか? そこは三大ウールの産地として有名でって‥‥”バンマスが言ってたところじゃん”と思って、内容を読んだらとってもあったかい物語だなと思いましてね。

で、僕もプロデューサーの森谷さんは、昔から知っていて。「湘南純愛組!」というドラマで30年ぶりにお会いして、そこから数年経って、また役をいただいたんでね。ぜひ、やらせていただきたいという気持ちでしたね。

ーーお二人とも、舞台である街とプロデューサーさんとも縁があったんですね。

吉田 たまたまですけどね。でね撮影の合間に、一宮の駅にストリートピアノがあるんですけど、そこでライブをしたんですよ。一応名鉄百貨店に告知をして。

服部 へえ‥‥。

吉田 バンマスが撮休日を聞いてきて「その日、絶対に何も入れないでくれ」って言われてやったんだけど、朝からすごい人がきてくれて。いい意味で、新聞沙汰にもなって(笑)。また早く行ってやりたいですよ。

ーー服部さんは撮休日はどう過ごされてたんですか?

服部 私は思い出の場所、金山や栄へ遊びに行って休日を満喫していました。

吉田 僕の記憶が確かなら、古着屋に行ってたと思いますよ。

服部 そうですね。ひとりで大須に行って、古着を見たり食べ歩きしたりしました。喫茶店にも入って商店街を満喫しました。

ーー今作では紡績から服作りが描かれていますよね。役柄を通じて、ファッションに対しての感じ方、考え方に変化はありましたか?

服部 よく考えてみたら当たり前なんですけど。糸から服を作り上げる工程には、機織り工場だけじゃなくて、布を仕上げをする工場があったり、その前の段階があったりするんですよね。それを全然知らなかった。今回、細かく知れたことで、本当にいろんな方が関わって洋服が出来ていくんだなって思いました。 服作りも映画もそうですけど、たくさんの方が関わり、一つのゴールに向かって切磋琢磨していく、ものづくりの素晴らしさを撮影しながら知ることができました。