「量子もつれ」が起こる宇宙、その真の姿はどんなものだろうか?
ビックバンによって1点から発生した宇宙の性質が量子もつれの背後に潜んでいると考えるのはロマンだろうか? / Credit:Canva
見えない糸の正体、情報を受け取った光の状態変化、無限の距離を情報が踏破する仕組みなどなど、ワクワクするような疑問が次々に浮かんできます。
最もつまらない答えとしては「宇宙がそうつくられているから」があげられるでしょう。
「量子もつれが起こるのに理由なんてない。そうなんだからそうなんだ」という論法です。
しかし科学史を学ぶと「そうなんだからそうなんだ」というスタンスの人間がノーベル賞やその他の著名な科学賞を受賞した例は皆無です。
では、一流の物理学者たちはどう思っているのでしょうか?
クラウザー氏は、私たちの日常の常識の限界について触れています。
クラウザー氏は「ほとんどの人は、自然(宇宙)は空間と時間全体に分散した物体から作られていると思い込んでいますが、そうではないようです」と述べています。
同様の意見はジョンズ・ホプキンス大学の物理学者、アーミテージ氏も採用しており「宇宙の一部は、互いに遠く離れた場所にあるものであっても、つながっている。これは人間的な直感に相容れない事実です」と述べました。
どうやら、かつて隣り合っていた物質や情報の断片は、分離されたとしても見えない運命の糸で接続または関係を持っているとする考えを採用しているようです。
またツァイリンガー氏は「量子もつれを使用すると、物体の保持している全ての情報を、物体が再構成される別の場所に転送できるようになる。これはSFのように人をテレポートさせるのとは違うが、確かにヒトではない何かを距離を超えて輸送している」と述べています。
もし、彼らが言う輸送されている「何か」やその仕組みを解明することができれば、次のノーベル賞受賞者となれるのは確実でしょう。
我こそはと思う人は、チャレンジしてみるといいかもしれません。
元論文
The Nobel Prize in Physics 2022
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2022/summary/
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。