ロシア占領下にあるウクライナ東部ドネツク周辺で、ウクライナによるミサイル攻撃によりロシア側兵士20人が死亡。その中に6人の北朝鮮将校が含まれていたと、ウクライナメディア「キーウ・ポスト」報じたのは10月4日のこと。報道によれば、死亡したされる将校6人は、軍事技術を学ぶために7月からロシアを訪れていた代表団とみられていたが、実は北朝鮮が派兵していた正規軍兵士である可能性が濃厚になってきた。

北朝鮮兵士のロシアへの派兵を巡って、露政府はその事実を完全に否定してきたものの、このところウクライナ側からの情報発信が相次ぎ、北朝鮮と対立する韓国の国防相も8日に発表した談話で、将校6人の死亡は事実である可能性が高いとしたうえで、『(北朝鮮が対露協力のため)正規軍をウクライナに派遣する可能性が高い』との見方を示していました。すると3日後の11日、今度は米紙ワシントン・ポストが、ウクライナ軍関係者の証言として『数千人規模の北朝鮮の歩兵部隊が露国内で訓練を受けている』と報道。しかも、年末までに前線に配置される可能性があると伝えたことで、いよいよ北朝鮮による正規軍兵士の本格的な派兵が始まったという情報が信ぴょう性を帯びてきたわけです」(北朝鮮ウオッチャー)

 ウクライナのゼレンスキー大統領も14日、「ロシアによる侵攻に北朝鮮が実際に関与している」との声明を発表。翌15日のウクライナ国営通信「ウクルインフォルム」では、その数は約3000人と報じ、戦闘任務についているかどうかは不明ながらも、ウクライナと国境を接するロシア領のクルスク、ブリャンスク両州では多数の北朝鮮兵士が確認されており、兵士らはロシア軍の複数部隊に配属されているようだ、と伝えている。

 そんな中、ウクライナ・プラウダが15日、情報機関筋の話として報じたのが、ロシア軍が北朝鮮兵で構成する「ブリヤート特別大隊」で、すでに18人の脱走兵が出ているとの衝撃報道だった。

「報道によれば、北朝鮮兵士18人が脱走したとされる赴任地は、ウクライナ国境から約7キロのロシア領。情報筋によれば、まだ拘束されたという報告はないとされています。北朝鮮の金正恩総書記は6月のロシアのプーチン大統領との会談で、包括的戦略パートナーシップ条約を締結し、軍事協力を進展させるとしながらも、唯一派兵については、その態度を明らかにしていなかった。その理由については、むろん中国の顔色を窺ったこともありますが、第一には兵士脱北の懸念があったからだと伝えられています。正恩氏は昨年9月の露極東アムール州での首脳会談の際、すでにプーチン氏から兵力支援も求められていたようなのですが、脱北者の急増を懸念し判断に苦慮したとも言われる。今回の集団脱走が事実であれば、皮肉なことに最大の不安が的中しただけでなく、プーチン氏に対しての面子が潰されてしまったこともあり、まさに怒り心頭というところでしょうね」(同)

 韓国の音楽や映画など、文化に触れただけでも死刑になるような北朝鮮で、派兵中の戦地から逃げ出すことがどれだけリスキーなことなのは想像に難しくないが、これを機に脱走兵が続出するかもしれない。

灯倫太郎

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