NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。10月13日に放送された第三十九回「とだえぬ絆」では、藤原伊周(三浦翔平)や主人公・まひろ(吉高由里子)の弟・藤原惟規(高杉真宙)の死といった別れがある一方で、敦康親王(片岡千之助)の元服を巡るやり取り、まひろの娘・賢子(南沙良)の裳着の儀式など、イベントも盛りだくさん。演じる役者の交代もあり、物語を彩る登場人物が、次第に世代交代していく様子を印象づける回だった。

 その中で、今後の行方を左右しそうな言葉がいくつも見られた。ここでは、それを振り返ってみたい。

 まずは、没落した家の再興がかなわぬまま、非業の死を遂げた藤原伊周。死の間際、息子・道雅(福崎那由他)に「左大臣には従うな。低い官位に甘んじるくらいなら、出家せよ」と言い残していた。これに道雅も「わかりました」と答えていたが、第三十四回では「父上の復讐(ふくしゅう)の道具にはなりませんから」と伊周に反論していたことを考えると、言葉通りには受け取れない気もする。この後、通雅がどんな人生を歩むのか、気になるところだ。

 また、伊周の死に伴い、弟の藤原隆家(竜星涼)が、敦康親王の後見を務めることになった。ところが、孫の敦成親王を次の東宮に、と願う藤原道長(柄本佑)はその話を隆家から聞き、答えをためらう。隆家が「私は兄とは違います。敦康さまの後見となりましても、左大臣様にお仕えしたいと願っております」と言葉を重ねたことで、なんとか道長は「大切にお守りいたせ」と答えていたが、このやりとりが隆家と道長の今後をどう左右するのだろうか。

 そして、当の敦康親王は元服を迎えることになり、「母亡きあと、中宮様に賜りました御恩、生涯忘れませぬ」と、養母・彰子(見上愛)の手を握りながら別れを惜しんでいた。その様子に危うさを感じた道長は「敦康さまのことだが、明日のご元服後は、速やかに竹三条宮にお移し申し上げろ」と藤原行成(渡辺大知)に命じる。道長や彰子、そして「次の東宮に」と願う父・一条天皇(塩野瑛久)の思惑にも囲まれた敦康親王は、これからどんな人生を歩むのだろうか。

 一方、まひろの周囲でも大きな変化が見られた。まずは、娘の賢子が裳着を迎え、成人となる。その際、賢子は「宮仕えはいたしませぬ。母上と同じ道を行きたくはございませぬ」と、まひろと目も合わせぬまま、棘のある言葉を放っていた。相変わらず母娘の溝は埋まらないままだが、祖父・藤原為時(岸谷五朗)からは「頑固なところは、まひろによく似ておる」との言葉もあった。賢子がこの後、どんな道を歩むのか、まひろとの母娘の確執も含め、注目したい。

 そして、突然の死で視聴者の涙を誘ったのが、藤原惟規だ。自由奔放だった惟規は、為時に、賢子が道長の娘であることを明かすという爆弾発言を最後に残した。ある意味、この回の惟規の最大の功績と言っていいかもしれない。それを聞き、落ち着きを失った為時だが、この事実が今後、まひろと道長、そして賢子自身の行く末に、どんな影響をもたらすのだろうか。

 このほか、彰子の皇子出産、彰子の妹・妍子(倉沢杏菜)の結婚などもあり、終盤に向かう物語の行方が気になる言葉が随所にちりばめられていた。それらを心にとめつつ、今後の行方を見守っていきたい。

(井上健一)