アミロイドベータの蓄積は真の原因ではなく結果に過ぎない


Credit: canva,ナゾロジー編集部

今回の研究により、アルツハイマーを発症したマウスの脳細胞ではアミロイドベータの蓄積に先立ち、細胞のゴミ処理能力が失われていることが示されました。

追加の調査では、分解屋(リソソーム)が酸性度を失ってから最初のアミロイドベータが細胞外に沈着するまでの期間を調べたところ、なんと4カ月ものタイムラグがあることも判明します。

これらの結果は、アミロイドベータの蓄積よりも「かなり前」にアルツハイマー病による変化が始まっており、アミロイドベータの蓄積は真の原因ではなく、結果に過ぎない可能性を示します。

さらに研究者たちがアルツハイマー病で亡くなった人間の脳を調べてみたところ、マウスと同様の「毒の花」が存在していることが判明しました。

そのため研究者たちは、今後のアルツハイマー病の治療薬を開発する場合には、既存の薬のようにアミロイドベータの蓄積を防ぐのではなく、分解屋(リソソーム)の酸性度を回復させることに焦点を当てるべきであると結論しています。

※この記事は2022年6月公開のものを再編集しています。

参考文献

Evidence Mounts for Alternate Origins of Alzheimer’s Disease Plaques
https://nyulangone.org/news/evidence-mounts-alternate-origins-alzheimers-disease-plaques

元論文

Faulty autolysosome acidification in Alzheimer’s disease mouse models induces autophagic build-up of Aβ in neurons, yielding senile plaques
https://doi.org/10.1038/s41593-022-01084-8

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。