ゲームチェンジャーであるテスラModel 3
さて、今回借りたレンタカーはテスラのModel 3。先行して発売されたセダンのModel S、ミニバンのModel Xなどは、日本円で1000万円を超える高級車だが、アメリカでは3万ドルを下回る普及帯の価格で発売されたのが特徴だ。
マイアミ国際空港でご対面。カウンターで手続きをすると、カードキーを渡されて、駐車場で勝手に探して乗って行く方式。
日本でも販売されており、普及モデルである500万円台の後輪駆動モデルと、600万円台の四輪駆動のロングレンジモデルと、700万円台の同じく四輪駆動のパフォーマンスモデルがある。ロングレンジモデルは706kmの航続距離を持ち、パフォーマンスモデルは0-100km/hを3.1秒で走るというスポーツカー並みの加速性能を誇る。
筆者は、Model Sは運転したことがあるし、Model Xは助手席に乗ったことがあるが、Model 3はまったく初めて。テスラの特徴はエンジン車をベースモデルに持たず、完全にEVとしてのメリットだけを追求して設計されていることにある。
バッテリーはフロア下にあり重心が低く、空気抵抗を極力減らしたボディデザイン(エンジン車と違ってラジエターは要らないのだ)が、車両の設計全体に行き渡っている。ドアノブが、フラットに埋没するデザインになっているのもその影響のひとつだ。コクピットは複雑なメーターを持たず、大きなディスプレイ1枚を持ち、連携させたスマホで多くのコントロールを行える。
エンジンをコアにして、それを支えるように作られたボディデザインと、床下の大きなバッテリーを基準としたボディデザインは大きく違う。低重心だし、居住空間は広い。衝突安全性は高張力鋼板とアルミ合金によって確保されているようだ。バッテリーを保護するために非常に強度の高いサイドシルを持つなど独特の構造だ。
Model 3はもっとも小型のテスラで、イメージ的にプリウスと違わないサイズに思えるが、全長4,720mm、全幅2,089mm、全高1,441mmとひとまわり大きく、その分居住性も高い。特に全幅は現行プリウスより30cmも広く、超大型セダン並。日本だと多くの立体駐車場には入れないし、コインパーキングでも苦労するはずだ。
とはいえ、その幅を除けば比較的コンパクトで、シンプル。高い居住性と、荷物の積載性と、扱いやすさ、走行性能を持った、理想的な一般の人向けのコンパクトカーのパッケージングだと思う。
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コンパクトで優れたパッケージング
実際、走らせてみても、非常に扱いやすく、操縦性も高い。『長い歴史を持った自動車メーカーのハンドリングとは違うんだろう』と思っていたが、実際に運転すると非常に優れたハンドリングの設計を持っていた。
もちろんのことながら、加速性能は十二分以上。少しコーナーで振り回してみても、非常に素直で扱いやすいし、滑らかなパワー特性は、コーナリング時のパワーの掛け始めを早めてくれて、コーナー後半の広い領域で、トラクションをしっとりとかけた操作を可能としており、エンジン車とは別次元の安定性を実現できる。
まぁ、ハンドリングも何も道はまっすぐだったが。
車重は1,765kmと、重量級セダン並みだが、重心が低いこともあって、あまりそれはネガに感じなかった。
居室も十分に広いし、リアシートもこのクラスのクルマにしては十分だった。ただし、シートの出来はあまり良くなく、24時間で520kmという距離を走ると腰が痛くなった。腰が沈み込む安普請なソファーのようだった。この点だけは、ドイツの高級セダンの圧勝は間違いない。