クマだけでなく、フクロウやシャチでも行われたイオマンテ
シマフクロウ、アイヌ民族の間では集落を守る神として捉えられていた / credit:wikipedia
イオマンテが行われたのは何もヒグマだけではなく、クマ以外の動物にも行われていました。
例えば、白い犬を狼神の子孫とみなして送る地域や、フクロウを送る風習がある地域が報告されています。
これらの儀式においても、「送る」という行為には動物によって差があり、それはアイヌの信じる神との関係に影響されています。
特にフクロウは集落の守り神として捉えられていたこともあり、ヒグマのイオマンテと同等に重要視されている地域もありました。
またイオマンテが行われていたのは陸上の動物だけではなく、ウミガメやシャチに対して行っていた地域もありました。
特にシャチは、襲ったクジラが海岸に打ち付けられることから、アイヌ民族はシャチを「巨大な肉の塊を人間にプレゼントしてくれる偉い神」であると認識していたのです。
それ故沖の神(レプンカムイ)としてヒグマと同じくらい神聖視しており、ヒグマと時のように盛大に見送りの儀式は行わなかったものの、イオマンテが行われていました。
アイヌの文化において、自然との調和や感謝の念が儀式を通じて表現され、その儀礼がコミュニティ全体で共有されていたことが窺えます。
参考文献
イオマンテの特徴に関する研究―その地域的比較- | CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001202934550272
ライター
華盛頓: 華盛頓(はなもりとみ)です。大学では経済史や経済地理学、政治経済学などについて学んできました。本サイトでは歴史系を中心に執筆していきます。趣味は旅行全般で、神社仏閣から景勝地、博物館などを中心に観光するのが好きです。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。