堀江貴文が考える「楽天モバイルの功罪」…巨額の赤字をタレ流してなお“ドル箱ビジネス”を追い求めるのか?

2019年10月、鳴り物入りでモバイル市場に参入した楽天だが、この挑戦は楽天グループ全体を危機的な状況に陥れてしまう。モバイル事業撤退を求める株主も少なくないなか、三木谷社長は断固として引かない構えだ。背景にはなにがあるのか。

堀江氏の新著『ニッポン社会のほんとの正体 投資とお金と未来』より一部を抜粋、編集してお届けする。

楽天モバイルの功罪

2019年10月、楽天は鳴り物入りでモバイル市場に参入した。しかし、この挑戦が楽天グループ全体を危機的な状況に陥れてしまう。

2023年度の最終損益は3394億円の大赤字を計上。この巨額の赤字は、完全にモバイル事業が原因だ。2023年度のモバイル事業は最終損失3375億円の赤字である。一方で、楽天市場や楽天カードなど他の事業は好調だ。

2023年度、インターネットサービス事業(楽天市場など)は768億円、フィンテック事業(楽天カードなど)は1229億円の黒字。ともに前年度に比べて増益もしている※1。

これらの膨大な利益をモバイル事業が食いつぶし、グループ全体の経営と業績を圧迫しているわけだ。

多くの人は「なぜ本業が好調だった楽天が、あえてリスクを冒してモバイル事業に参入したのか」と不思議に思うだろう。でもその理由は明らかだ。日本のモバイル市場はとにかく儲かるのだ。シェアを確保できればドル箱ビジネスと化す。

通信業界大手3社の2023年度の営業利益は次のとおり。NTTドコモ=1兆1444億円、KDDI(au)=1兆757億円、ソフトバンク=8761億円※2。いずれも巨額の利益を叩き出している。しかもほぼ毎年、増収増益を達成しているのだ。

楽天はこの儲かりまくる市場に、第4の通信事業者(キャリア)として果敢に参入したのである。

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楽天モバイルによる価格競争が起爆剤

しかし現実は甘くなかった。基地局などのインフラ整備に莫大なコストがかかり、巨額の赤字を垂れ流す始末である。とうぜんモバイル事業撤退を求める株主も少なくない。

しかし三木谷社長は断固として引かない構えだ。現在の苦境を乗り越えた先にはドル箱ビジネスが待っている。楽天グループの資金が尽きるまで挑戦は続くだろう。

さてここでいちばん気になるのは、私たち一般ユーザーへの影響である。つまり今後のスマホ利用料の動向だ。楽天モバイルの売りはその利用料の安さだ。他のキャリアに価格競争を仕掛けているのである。そしてそれがモバイル業界に強烈なくさびを打ち込むことになった。

楽天がモバイル事業に参入する前、日本のスマホ利用料は高止まりしていた。2020年3月時点での日本におけるスマホの月額利用料の平均額は5121円(データ容量20GBの場合)。日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の6か国中、日本は3番目の高さだった。4番目のドイツは3170円だ。実に2000円もの開きがある。

それが2021年12月時点になると一変する。日本のスマホ利用料は2376円と劇的に下がったのだ。同じ6か国中で2番目の安さである※3。この大幅な値下がりは、楽天モバイルによる価格競争が起爆剤になっている。

事実、楽天の参入後、ドコモは「ahamo」、KDDI(au)は「povo」、ソフトバンクは「LINEMO」といった低価格プランを新設。楽天に対抗したわけだ。私たち一般ユーザーにとって価格競争の激化は大歓迎である。