裏金問題の責任を問われ、衆院選に自民非公認での出馬となった旧安倍派5人衆のひとり、西村康稔元経産相(兵庫9区)。そんな西村氏に枝野幸男元立憲代表がすっかりお冠だという。いったい何があったのか。
「裏金ではない」枝野氏のお墨付きをアピール
枝野氏をカチンとさせたのは西村氏が出陣式などで見せたある言動。
「(旧安倍派からの還付金は)不記載でもなければ、裏金でもない。じつは今年3月の政倫審で私が弁明した後に質問に立った枝野さんが、彼は弁護士なんでよく調べて質問したんだと思いますけど、こう言っているんです。その時の(枝野さんの)セリフがあるので、ちょっと聞いてください、みなさん!」
と、枝野発言の一部を切り取る形で聴衆に紹介し、自らの潔白アピールに余念がないのだ。
10月17日に行なわれた出陣式に参加したというある男性もこう証言する。
「出陣式の会場内に設置されたスピーカーから、いきなり『計上しているので、たしかに裏金にはなっていない。西村さんの分については裏金にはなっていない』という政倫審での枝野さんの発言が大音量で、しかも2回も流されました」
この枝野発言だけを切り取れば、たしかに「(還付された100万円は)不記載でもなければ、裏金でもない」という西村氏の主張を、政倫審という公の席で追認していたかのような印象を受ける。
ただし、この枝野発言は時間にして10秒足らず。実際に枝野氏が政倫審で質疑した時間は22分間もあり、その全体トーンは裏金問題への追及で一貫している。
西村氏が潔白パフォーマンスのために切り抜いた10秒ほどの枝野発言も、その前後を含めて聞けば西村氏を厳しく断罪していることがわかるはずだ。
改めてそのくだりを正確に再現してみよう。
(広告の後にも続きます)
「虚偽記載」指摘を恣意的に外し…
「西村さんが修正前の報告書でやっていたやり方、還付分なのか中抜き分なのか知りませんが(中略)、ノルマを超えた分を自分の政治資金パーティの収入に上乗せして、そして計上しているので、たしかに裏金にはなっていない。西村さんの分については裏金にはなっていない。(でも、それは)虚偽記載であるということなんです」
この発言部分のミソは「虚偽記載」という言葉だ。
政治資金規正法は会計帳簿の虚偽記載で3年以下の懲役または罰金50万円以下、政治資金監査報告書の虚偽記載でも罰金30万円以下と定めている。つまり枝野氏は、西村氏は立派な刑法違反を犯していると指摘しているのだ。
なのに、西村氏は「虚偽記載」というキーワードを外し、潔白アピールに都合のいい部分だけを有権者に聞かせているというわけだ。
比例復活なしの背水の陣で臨む選挙とはいえ、ずいぶんと“策士”である
この枝野発言切り抜きの一件を西村氏本人はどう考えるのか?
10月20日、明石市のJR大久保駅北口で街宣中の西村氏を直撃してみた。
ちなみにこの日も西村氏は演説の冒頭で「今日はスピーカーから流すことはしませんが」と断ったうえで枝野発言を紹介、「一切、裏金などやっておりません」と自己の無実アピールに余念がなかった。
しかも、「(収支報告書の)書き方が間違った」、「誤記載だった」という新たな自己弁護ワードまでも追加する始末だった。