[U-17アジア杯予選第1節]日本 9-2 ネパール/10月23日/Hamad Bin Khalifa Stadium
今まで日の丸を背負って多くの海外遠征を経験してきた。しかし、公式戦は今回のU-17アジアカップ予選が初めて。廣山望監督などから親善試合との違いを何度も聞かされていたが、いざキックオフすると、ほとんどの選手たちがこれまで味わったことがない緊張感に襲われた。
ネパールとの初戦。チームは落ち着いてゲームを進められず、12分には一瞬の隙を突かれて先制点を献上。まさかの展開に、改めて“アジアの厳しさ”を思い知らされた。そうした状況下で力強いプレーを見せたのが、横浜ユースに所属するFW浅田大翔(1年)だ。
2トップの一角でプレーした浅田は、最前線で身体を張って基準点となっていたが、前半の途中にFW谷大地(鳥栖U-18/1年)と役割をチェンジ。中盤と最前線の間に降り、繋ぎ役を担いながら背後のスペースに飛び出していく。
この入れ替えが功を奏し、前線が活性化。谷の同点弾で1-1として迎えた19分、浅田はMF瀬口大翔(神戸U-18/1年)のスルーパスに反応し、見事な裏抜けから逆転ゴールを奪う。前半アディショナルタイムにも左サイドハーフのMF武本匠平(福岡U-18/1年)のクロスに反応。冷静に決めて、自身2点目をもぎ取った。
前半を5-1で終えた日本は、後半に入っても攻撃の手を緩めず、浅田も果敢にゴールを狙っていく。64分には左サイドから持ち込み、ミドルレンジで右足を振り抜き豪快にネットを揺らしてハットトリックを達成した。
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84分にお役御免となったが、ストライカーとしての才覚をいかんなく発揮した浅田。中学時代はボランチを本職とする選手で、ユース昇格後にトップ下へコンバート。本格的にFWでプレーするようになったのは今シーズンからで、“点取り屋”としての暦はまだまだ浅い。
しかし、すでに自分の形を持っており、最終ラインの背後への飛び出しには絶対的な自信を持つ。「自分のプレースタイルは裏抜けして、味方にパスを出す。そして最後に決めるところ。チームを勝たせることができたので良かった」と試合後に振り返ったように、1点目は最も得意とするパターンでのゴールだった。
ゴールへの執着心も強く、相棒の谷が前半だけでハットトリックを達成したことで闘志に火がついた。「ちょっと焦りはありました」と苦笑いを浮かべたが、前半の半ばにあった決定機はFWとしての意地をのぞかせた瞬間でもある。谷に渡せば得点の可能性が高まったが、自ら突破してゴールを狙うことを選択した。
その一方で「U-16代表が勝つことが一番」と言うように、チームを背負う責任も十分に理解している。今予選はFW吉田湊海(鹿島ユース/1年)、MF神田泰斗(大宮U15/3年)といったリーダー候補がコンディション不良で不在。だからこそ、代表のコアメンバーであり、早生まれで最年長でもある自分が牽引する覚悟を持っている。
「自分が引っ張っていかないと、チームが勝てないと思っている。常にそれを意識して、チームが悪い時は前向きな声をかけていくことは心がけていました」
得点源として、チームリーダーとして――。矜持を示した男は初戦で結果を残した。だが、もちろんこれで終わりではない。来秋のU-17ワールドカップを目ざすU-16日本代表をさらに強くするべく、25日のモンゴル戦も貪欲にゴールと勝利を目ざしてピッチに立つ。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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