中高でバスケ部やバレー部だった人は「高齢期の骨密度」が高くなる! / Credit: canva
中高時代にバスケ部かバレー部に入っていた人は、歳を取っても丈夫な骨を維持できるかもしれません。
順天堂大学大学院 医学研究科スポートロジーセンターは、東京都在住の高齢者約1600名を対象とした研究で、青年期(13〜18歳)にバスケットやバレーボールをしていた人は、高齢期(65〜84歳)での骨密度が他の人に比べて有意に高いことを発見しました。
これはバスケやバレーに特徴的な骨に加わる負荷や刺激の大きさが要因であり、高齢者によく見られる骨粗鬆症や転倒・骨折リスクを減少させるのに寄与すると考えられます。
研究の詳細は、2023年10月12日付で科学雑誌『Frontiers in Physiology』に掲載されました。
目次
部活動の違いが将来の「骨の丈夫さ」に影響する?
部活動の違いが将来の「骨の丈夫さ」に影響する?
骨密度は一般に20代にピークを迎え、50歳頃まで維持し、その後の加齢に伴って減少していきます。
女性では閉経後に骨密度が急に減少し始め、70歳以上の日本人女性の約4割が骨粗鬆症(骨密度が著しく低下した状態)にあると報告されています。
骨粗鬆症は男女ともに高齢者の転倒・骨折リスクを高めるため、懸念すべき問題です。
また骨密度は一度低下すると再び上がりづらいため、若い時期に最大骨密度を高めておくことが人生後半の健康を維持する上で重要だといわれています。
特に13〜18歳の青年期に骨への負荷が強い運動をしていると最大骨密度を高められることが以前から指摘されてきました。
例えば、バスケやバレーボールのように頻繁にジャンプと着地を繰り返すスポーツは、水泳やサイクリングなどに比べて骨への負荷が大幅に大きくなります。
しかし、青年期にやっていたスポーツ種目の違いが高齢期の骨密度に影響するかどうかは分かっていません。
青年期にやっていた種目の違いが高齢期の骨密度に影響するのか? / Credit: 順天堂大学 – 青年期にバスケットボールやバレーボールをすると高齢期の骨密度が高くなる?(2023)
そこで研究チームは、東京都文京区在住の高齢者1596名(男性681名、女性915名、年齢65〜84歳)を対象に、中高生時に所属していた「部活動」と高齢期の「骨密度」の関連性を調べてみました。
中高の「部活動」と高齢期の「骨密度」を比べてみた
参加者には身体測定や血液検査のほか、DXA法(2種類のX線による透過率の違いから骨密度を測定する方法)を用いて、高齢者の転倒リスクに関わることが知られる「大腿骨頸部(股関節の辺り)」と「腰椎」の骨密度を評価しています。
またアンケート調査では合計で31種類の部活動が確認されました。
チームはそれらを骨への負荷の大きさごとに次の5つのグループに分類しています。
1:強度の衝撃
垂直方向へのジャンプと着地による強い衝撃を頻繁に受けるスポーツで、主にバスケットボール、バレーボール、体操などが含まれます。
2:中程度の衝撃
垂直方向への衝撃は多くないものの、水平方向への衝撃や急旋回、急停止が頻繁にあるスポーツで、主にサッカー、野球、テニス、陸上競技、ハンドボール、バドミントン、ラグビー、柔道、剣道、空手などが含まれています。
3:反復性の低衝撃
一定の速度で長時間のパフォーマンスを行う際に地面への低い衝撃を伴うスポーツで、主に卓球や登山、ダンスなどが含まれます。
4:反復性の非衝撃
地面への衝撃がほとんどないスポーツで、主に水泳や弓道、ゴルフなどが含まれます。
5:非スポーツ
中学および高校で部活動に入っていなかった、いわゆる帰宅部です。
そして青年期の部活動と高齢期の骨密度を比較した結果、男女ともに高齢期における大腿骨頸部の骨密度が最も高かったのは、中高生時にバスケットボール部に所属していた場合でした。
男性では他にテニスやラグビーでも比較的高い数値が出ていますが、女性ではバスケットが断トツでした。
一方で、高齢期における腰椎の骨密度は女性だとバレーボールで最も高く、男性ではテニスやラグビーで最も高くなっています。
全体の平均を見ると、男女ともバスケットをしていると大腿骨頸部の骨密度が高くなり、女性ではバレーボールをしていると腰椎の骨密度が高くなっていました。
これはやはり、バスケやバレーに特有のジャンプと着地による骨への負荷の大きさから来ていると見られます。
また男性ではテニスやラグビーもかなり優秀な結果を出していたようです。
バスケとバレーは高齢期の骨密度を高く維持する / Credit: 順天堂大学 – 青年期にバスケットボールやバレーボールをすると高齢期の骨密度が高くなる?(2023)
この結果は運動量の多いアスリートでなく一般人であっても、中高生時の運動経験が骨の健康に長期的な影響を及ぼしうることを示した貴重な成果です。
スポーツ庁の調べによると、近年は少子化の影響もあって運動部員数が減っており、2009年から2018年の間に中学生の運動部の所属者が約13.1%も減少したと報告されています。
その一方で最近は、”龍神ジャパン”や”火の鳥NIPPON”の愛称で親しまれるバレー日本代表や、”AKATSUKI JAPAN”で知られるバスケ日本代表の活躍が目覚ましく、バレーやバスケの人気が大いに高まりつつあります。
この流れに乗って、中高生のバレー部やバスケ部が活気付くと、将来的には健康なおじいちゃん、おばあちゃんが増えるかもしれません。
参考文献
青年期にバスケットボールやバレーボールをすると高齢期の骨密度が高くなる?
https://www.juntendo.ac.jp/news/16900.html
元論文
Playing basketball and volleyball during adolescence is associated with higher bone mineral density in old age: the Bunkyo Health Study
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2023.1227639/full
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。