湘南ベルマーレは目下3連勝中だ。
第32節・鹿島戦は3-2で競り勝ち、33節・東京V戦は2-0で快勝。そして直近の広島戦は2-1で逆転勝ちを収めた。
負傷していた池田昌生(10月23日に練習復帰)に代わって右のサイドボランチ(インサイドハーフ)を務めた小野瀬康介、同じく怪我で離脱していたルキアンの不在を感じさせない福田翔生と鈴木章斗の2トップらが印象的な働きを見せているなかで、とりわけ攻守で躍動している選手がいる。鹿島戦で4か月ぶりに先発し、東京V戦、広島戦でもインパクトを残した大岩一貴だ。
大岩は身体能力の高さを活かした守備に定評のあるCBで、後方からチームに安定感をもたらしていたのはもちろん、リスク覚悟の積極的な攻撃参加も光った。
3バックの右ストッパーを担う大岩は、チャンスと見るや果敢にオーバーラップ。右ウイングバックの鈴木雄斗やサイドボランチの小野瀬、時には2トップすら追い越し、攻撃に厚みを加えている。
特にその積極性が見られたのが、広島戦の同点シーンだ。1点ビハインドで迎えた48分、福田が決めたゴールはクロスのこぼれ球に反応した形だったが、その前の場面で大岩がゴールライン寸前でスルーパスを折り返したプレーが起点だった。また、福田のシュート時、大岩は誰よりもゴールに近い位置でこぼれ球を待ち構えていた。
90+2分に田中聡が逆転ゴールを決めた時も、大岩はボックスの中央付近に立っていた。加えて、その直前に左ウイングバックの畑大雅が相手の背後を取った際にも、クロスが上がれば合わせられるようにゴール前でスタンバイしていた。
大岩は巧みにボールを操ったり、驚くようなスルーパスを供給するような選手ではない。ただ、この35歳が見せる武骨な攻撃参加が、好調のチームを勢いづけているのは間違いない。
【動画】大岩が起点となった“逆転勝ち”広島戦の1点目!
大岩の攻撃参加に、若手も刺激を受けている。31節のセレッソ大阪戦(●1-2)まで右ストッパーでレギュラーだった大卒ルーキーの髙橋直也は、ライバルの活躍に闘志を燃やしつつ、参考にできる部分も大いにあると語る。
「ガンちゃん(大岩)から学ぶところは多い。今の自分にはできないような、チームを勢いづけるプレーをしていて、それが結果につながっています。自分が出られていないのは悔しいですが、先輩のプレーを外から見られる良い時間でもあると捉えています。
自分はボールを持って、つなぐプレーを意識していましたが、ガンちゃんの動きを見て“あんなに出て行ってもいいんだ”と思いましたね。自分も元々、ああいったプレーが好きですが、チームのバランスを重視するあまり、遠慮していた部分がある。改めて、湘南はあそこまでの攻撃参加が許されるチームなんだと気づかされました」
大岩の駆け上がりを逆サイドから見ている左ストッパーの鈴木淳之介も、14歳上の先輩のプレーを賞賛する。
「右(ウイングバック)は雄斗君なので、時間を作ってくれるし、攻撃に参加しやすい部分もあるのかなと。左の(畑)大雅君は1人で行けちゃうので、僕はそこまでオーバーラップしない、というのはあります。ただ、そうだとしても、すごい体力だなと思いますよ(笑)。あの回数の攻撃参加を今の自分がやるとなると、なかなか厳しいです」
髙橋も鈴木淳も攻撃面に特長のある選手だが、それでも大岩の積極的なプレーに敵わない部分もあると感じているようだ。また、若手から尊敬される要因は大岩のスタンスにもあるのだろう。
夏場に髙橋にポジションを明け渡し、メンバーから外れる日々が続いたが、腐らずに準備し続けた結果、再びスタメンの座を勝ち取って勝利に貢献した。日々、努力を怠らない姿勢を見ていたからこそ、髙橋や鈴木淳も大岩をリスペクトしている。
昨季に主将を務めた大岩は、自身を「あまり言葉で引っ張っていくタイプではない」と評していたが、日々の練習に取り組む姿勢を買われたからこそ、腕章を託されたのだろう。背番号22は今季も若手たちの指針として、チームに好影響をもたらしている。
取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)
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