11月5日に行われる米大統領選投開票まで、ついに残り2週間を切った。
7つの激戦州を巡り「戦う準備はできていますか!」と訴えかける民主党のハリス副大統領。一方、共和党のトランプ氏も「アメリカを再び偉大にするぞ!カマラ、お前はクビだ!出て行きやがれ」と、相変わらずのボルテージで最後の追い込みをかけている。
ハリス氏が大統領候補となって以降、9月には激戦州でのハリス氏支持率はトランプ氏を上回るまでになっていたが、10月に入った頃から徐々に失速。現状、トランプ氏がわずかながらリードしているとされ、その背景にあるのが、黒人男性や中南米系の男性からの不支持にあるという。国際部記者の話。
「これまで、黒人の多くは伝統的に民主党候補を支持してきましたが、黒人男性の中には、いまだ黒人女性の地位向上を好まない人たちがある一定数存在し、彼らがハリス氏への投票をためらっているとされます。そのため、4年前のバイデン氏出馬時に比べ黒人有権者の支持は大きく下回っていて、加えて中南米系の支持も前回ほどの広がりがない。最終結果がどうなるかはわかりませんが、残り数日、両陣営による黒人男性とヒスパニック系男性のパイの食い合いになることは間違いないでしょう」
ハリス氏を支持するオバマ元大統領は10月10日、東部ペンシルベニア州にある民主党選対事務所訪問の際、黒人男性によるハリス氏不支持の現状に言及。「私が立候補した時のような活気や動員が見られない。ブラザー(黒人男性)の間でより顕著だ。あなた方は女性が大統領になるという考えに共感せず、棄権や他の選択肢を考えているのか」と運動員を叱咤。この言動についてトランプ氏の陣営は12日、同氏を支持する「黒人男性諮問委員会」と連名で、「政策でなく肌の色に基づいて支持を呼び掛けたことは非常に侮辱的だ」とオバマ氏を痛烈に非難していた。
そんなこともあってか、ハリス氏は14日、黒人男性有権者に向けた新たな政策を発表。これは、黒人の起業家に最大2万ドル(約300万円)の返済免除を含む100万件の融資を提供するというもので、さらには嗜好用マリファナを合法化し、黒人男性に対するビジネス機会を創出するといった、ある意味相当、大胆な政策だと思われる。
「基本、ハリス氏はバイデン政権を継承していくというスタンスをとっているため、大胆な経済政策の転換は望めないだろう、というのが大方の見方。インフレが進み高い失業率で大打撃を受けた黒人男性、とくに若者の間ではハリス氏になっても何も変わらないという思いがあり、結果、トランプ氏への支持が高まっているとされています」(同)
一方、トランプ氏は黒人失業率が高い状況を利用し、黒人男性の生活の向上に力を尽くすと強調。さらに南部フロリダ州では、ヒスパニック系の経営者らが参加する会合に出席し、その席で「ヒスパニック系の人たちの持つ非凡な才能、起業家精神、エネルギーが、この国の役にたっている。すばらしいコミュニティーだ」と持ち上げたうえで、雇用創出などに力を入れると訴えた。
「全米の調査機関『ピュー・リサーチセンター』によれば、全米におけるヒスパニック系有権者の人口は、推定3620万人。しかも年々増加していて、激戦州である西部アリゾナ州では、なんと4人に1人の有権者がヒスパニック系だとされている。果たしてトランプ氏、ハリス氏どちらの政策が、黒人男性とヒスパニック系の投票に直結するか。そこがカギになるはずです」(同)
世界のリーダーが決まる運命の時は、もうすぐそこまで迫っている。
(灯倫太郎)