昨今、テレビやネットで多く報道されている闇バイト。いったいなぜ、彼らは犯罪に手を染めてしまうのか。また、これに対する対策はないのだろうか。裏社会をテーマにした書籍、漫画を手がける草下シンヤ氏に話を聞いた。
22歳の若者が強盗殺人をしてしまった理由
連日報道されている闇バイト。10月15日頃に起こった横浜市青葉区の緊縛強盗殺人事件で逮捕されたのは、22歳の男性・宝田真月容疑者。75歳の後藤寛治さんに暴行を加えて殺害し、現金約20万円を奪ったとみられている。
宝田容疑者はSNS上で“ホワイト案件”などと書かれた投稿に応募したところ、指示役に繋がったと供述している。途中で犯罪だとわかったが、それでも犯行を止められなかったのは、個人情報などが指示役に知られているため、家族も巻き込んだ仕返しを受けてしまうと思ったからだ。
お金がほしかった理由は、税金の滞納。祖父から、自分自身の分の国民健康、およそ40万円を支払うよう促されたことがきっかけで、闇バイトに応募したのではないかと言われている。祖父はテレビの取材で「一生を台なしにするような犯罪だから……。お金がないなら請求することもなかった」と話している。
強盗殺人事件の罪は極めて重く、無期懲役、さらには死刑が言い渡されることもある。昨今報じられている闇バイトの実行役は、これらの罪の重さを知らず、軽い気持ちで犯罪に手を染めてしまうこともあるそうだ。
SNSを見れば、今もなお、闇バイトだと思われる求人がいくつも出ている。携帯電話を契約してくる仕事、銀行口座を開設してくる仕事などなど。
何も知らないと、これらが犯罪だと思わないかもしれないが、自分の名義で契約した携帯電話を第三者に渡すことは罪に問われる可能性があり、携帯会社もSNSなどで注意を促している。
また、草下シンヤ氏によると、こうした比較的罪の重さが小さい犯罪を最初にさせて、重い犯罪に加担させていくことこそが、闇バイト指示役の手口だという。
「ちょっとグレーの仕事を最初にさせて、後に『実はあれ犯罪だったんだけど、君、捕まるよ』などと脅し、悪い仕事に引き込むのです。闇バイトは詐欺師グループがなかなか捕まらないので、彼らがどんどん場数を踏み、トライ&エラーを積み重ねることで手口がどんどん巧妙化しています」(草下氏、以下同)
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「絶対に捕まらない!」胡散臭すぎる求人
闇バイトは最近になって多く報じられているが、件数自体は5、6年前からどんどん増え始めていて、時代に合わせてやり方が変わってきている。例えば今では、日雇い系のアプリなどから、普通の企業と同じように求人広告を出して、実行役を集めることもある。
一方で “絶対に捕まらない”と、怪しさ満載のうたい文句で求人を募っているものも……。これに引っかかるレベルの人を求めるために、あえて胡散臭くでもしているのだろうか。草下氏は「闇バイトは絶対に捕まります。捕まるまでやらせるんです」と断言する。
闇バイトの実行役は、身分証などを相手に抑えられているため、逃げたくても逃げられない心理に陥る。まさに、宝田容疑者と同じ状況だろう。こうなってしまえば、あとは捕まるまで使い捨てのコマとして利用され続けるのだ。
もし気づかずに闇バイトに踏み入れてしまった際には、どうすればよいのか。
「すぐに自首をすることですね。最初は小さな犯罪からスタートするものが多いので、エスカレートする前に自分で降りましょう。家族への報復を恐れる人もいますが、基本的に指示役は、お金にならない犯罪はしないでしょうからね。
闇バイトかどうか見抜くために、仕事を受ける前に、ちゃんと実態のある会社かどうか、運営元の住所や評判を調べるのも大事だと思います」
また、闇バイトのターゲットになってしまうお年寄りは、とにかく情報を出さないこと。訪問販売などに出てしまうのはもってのほかで、資産状況や家族の構成を聞かれても答えず、少しでも怪しいと感じれば通報するべきだと指摘する。
「通報すれば警察は付近のパトロールを強化してくれますからね、また、カメラやライトを設置するのも一定の抑止力になるでしょう。ただ年配の方が自分で判断することはなかなか難しいので、家族が注意を払っておくことが一番です」
それにしても、なぜ闇バイトがここにきて、社会問題になるまで蔓延してしまったのだろうか。