現在、全国各地で急増する「闇バイト」募集で集められた窃盗団による強盗事件。別の場所にいる指示役の命令により犯行が行われ、暴力を厭わない荒っぽい手口が特徴だ。そのため、住民が犠牲になったケースも少なくない。

 ちなみに彼らが狙うのは、主に高齢者が暮らす一軒家。8月以降、少なくとも14件が確認されている首都圏連続強盗事件も、質屋などの店舗を除き住宅を狙った犯行はすべて一軒家。他の同様の事件に関しても被害に遭う割合がマンション、アパートの集合住宅に比べて圧倒的に多い。そうしたことから夫婦、または単身で戸建て住宅で暮らす高齢者の中には不安を感じ、各地の不動産会社には自宅売却に関する相談や問い合わせが増えているという。

「一軒家は外からの侵入経路が多く、人目につきにくい奥まった場所など立地次第で狙われるリスクが跳ね上がります。それに、子供も独立して家を出ていれば1~2人で住むには広すぎますから」(不動産業界紙記者)

 その点、マンションなら低層階でなければベランダから侵入される可能性は低く、出入り口は玄関のみ。オートロック完備のところであれば住む側にとっても安心だ。

「もちろん、集合住宅だからといって過信は禁物ですが、一軒家よりは防犯性に優れています。実際、自宅を処分して駅チカや街の中心部の中古マンションに引っ越すほうが病院への通院や買い物も楽。高齢者にとってもメリットは大きいです」(同)

 都心30㎞圏の埼玉県内に住む70代の男性も、40年以上住み続けた自宅一軒家の売却を決意。「以前から自宅を処分してマンションに住むことを考えていましたが、愛着もあってなかなか踏ん切りがつかなった。でも、一連の強盗事件に不安を感じ、今は不動産会社と売却について話を進めています」と語る。

 郊外や地方にある築年数の経った実家の一軒家は、土地としての価値しかないケースがほとんど。将来相続する立場の子供にとっても、大きな負担となりかねない。皮肉にも闇バイト強盗の多発が、シニア世代の“家じまい”を加速化させることになりそうだ。

※写真はイメージ

【写真ギャラリー】大きなサイズで見る