市川「銀で『女と男』グッズをつくってほしい!」
ワダちゃん わぁ! シルバーとピンクが合わさった素敵な色合いの作品がありますね。
榮眞 これは銀の釜です。仕上げるときに銅イオンをつけるとピンクっぽい色になるんです。
市川 銀って重たいイメージがあったのですが、触らせていただくと、思っていたより軽いですね。
榮眞 銀と鉄だと厚みが違うから。鉄は鋳物なので、3~5ミリの厚みがないとできない。銀は1ミリぐらいの1枚を叩いてつくるから軽く仕上がります。比重だけでいうと銀のほうが重いけれど、厚みが薄いので重量は軽くなるんです。
出典: FANY マガジン
市川 丈夫さも銀と鉄では違ってきますか?
榮眞 経年変化による傷みは鉄のほうがありますね。鉄は錆びてしまうけど、銀は100年、200年、1000年前の銀の道具も壊れずに出てくるくらいですから。
釜のフタを置くための道具もあります。「南鐐 雲錦 蓋置(なんりょう うんきん ふたおき)」は、満開の桜を白雲に、鮮やかに色づいた紅葉を錦織に見立てた雲錦という昔からあるデザインをアレンジしたフタ置き。春は桜の側を使って反対側のモミジが目立たないようにして、片側だけを強調できるようにしています。
ワダちゃん 反対にするとモミジが出てくるので、秋はこちらを使うんですね。面白いなぁ。
市川 こういったデザインも先生が考えていると伺いましたが、アイデアはどこから思いつくのですか?
榮眞 常に何かないかな、新しい発見はないかなと考えていますね。
市川 僕も芸人やから常におもしろいことを考えているんですけど……。
ワダちゃん でも、出てきてないでしょ!
市川 先生も、僕たちと会ったことで何か新しいアイデアが生まれるかもしれないということですよね。ぜひ「女と男」のグッズを銀でつくってもらいたいな。
出典: FANY マガジン
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ふだんは顧客から「逃げている」!?
ワダちゃん 修行はどれくらいされていたんですか?
榮眞 僕は15歳から修行していて、いまで七代目。初代は刀の拵(こしらえ)というパーツをつくる職人をやっていて。明治時代に入って、海外輸出向けの工芸品や茶道具もつくりだしたみたいですね。
市川 家業を継ぐのは先生にとって当たり前のことでしたか? それとも、何か別にやりたいことがあったとか?
榮眞 勉強ができなかったんでねぇ。何か自分にできることないかなと考えたら、家が伝統工芸をやっていた、という感じで。ものづくりは好きだったけど、最初はなんとなくやっていて、本当にこの仕事をやりたいと思ったのは30歳手前くらいですね。
市川 時間をかけて作品づくりをしていると、なかには思い入れがありすぎて、手放したくない作品もあるのでは?
榮眞 思い入れがありすぎるので、ふだんはお客さんとあまり話さず、逃げているんですよ。実際に使う方が、使いたい用途、使いたいように使っていただきたいので、一点一点に自分の思いを乗せちゃうと乗りすぎてしまう。僕は自分の作品が、会話のきっかけになるコミュニケーションツールになればええな、と思っています。
出典: FANY マガジン
たとえば、喜寿を迎えた先生がお茶会で縁起のいい亀甲柄の「南鐐 六角 蓋置(なんりょうろっかくふたおき)」を出す。お客さんが「なぜ今日は六角を?」と尋ねたら、「私が喜寿なので」と会話が生まれる。子どもが「南鐐 石畳 蓋置(なんりょういしだたみふたおき)」も見ると、市松模様から連想してすぐ「鬼滅の刃の竈門炭治郎の着物の柄だ」だと言う。でも、そこから話が広がればそれでいいなと思っています。