画像はAIで生成したイメージ

「物心がついた時には母子家庭だった」という内山美里さん(仮名・23歳)は母方の祖父に育てられた。

「母が働きづめだったし、私が生まれた時にはもう祖母は亡くなっていましたので、祖父と母の3人暮らしでした」

祖父は元警察官の経歴を持ち、剣道と柔道の有段者でもあったが、温厚な人柄で孫娘の美里さんには特別優しかったという。

【関連】高齢者お見合いパーティーが花盛り シルバー世代の婚活キーワードは金・身体・家族の“3K”~シルバー婚活事情 (1)~ ほか 

だが、美里さんが20歳の時に脳溢血で急死してしまう。

「まるで私の成人式を見届けるかのような亡くなり方でした。ひ孫を抱かせてあげるのを楽しみにしていたのに…もうショックなんてもんじゃありませんでした」

親代わりだった祖父を失くした美里さんは、悲しみのあまり大学に通えなくなり、食事や睡眠すらまともにとれなくなった。

「完全な『ジジロス』でしたね。それもかなり重症だったと思います」

祖父との思い出が詰まっている家にいるのが辛くて街を彷徨うようになった美里さんは、町中や公園で所在なげにしている高齢男性を見かけると積極的に声をかけて交流するようになる。

「お互い話し相手に飢えていたような感じでしたね」

ある日、顔見知りの高齢男性がひとり暮らしの自宅に美里さんを招いた。

70代の半ばだというその男性はあろうことか美里さんに襲い掛かったのである。

「最初は驚きましたけど、そんなにイヤではなかったんですよ。老人特有の体つきとか肌の感触とか加齢臭とか、祖父を思い出させてくれて懐かしいような愛しいような気持ちになりました」

行為後、この男性は美里さんに一万円札を数枚握らせて『また来てくれよ』とすがるような目で訴えてきたという。

「これが私のジジ活の始まりでしたね」

その後、美里さんは出会い系サイトを利用して本格的な「ジジ活」生活を送るようになるのだが、たまたま付き合った男性に「高齢者専用風俗」の話を聞き、興味を持って業者に連絡をとったという。

施設長にも頭を下げられ社会貢献の気分

「デリヘルの事務所です。その場で採用が決まりました。在籍している中では私が最年少だそうです。同僚(?)には元介護士の方とかもいましたけど、やっぱり若い方が有難いみたいですね」

筋金入りのおじいちゃん子で「相手が高齢者でも抵抗がない」どころか「高齢者が大好物」という美里さんは、商売っ気を感じさせない献身ぶりと実の孫を思わせる親密さが人気を集め、引っ張りだことなる。

美里さんは一般的な住宅ではなく『サ高住』と呼ばれる高齢者専用住宅に呼ばれることもあった。

建物全体がバリアフリーになっていて、一般型と介護型に分かれているのが特徴だ。

「私が伺うのは一般型ですが、住人が高齢者ばかりなので、私のような若い女の子が出入りするとすごく目立つんですよ。何度も出入りしていると他の住人の方とも顔見知りになったりしますね。私としては『孫がおじいちゃんのところに遊びに来た』という風に装っていますけど、デリヘルだってバレたらどうしようってハラハラしています。私がイヤなのではなく、おじいちゃんの方が気まずいんじゃないかなって(苦笑)」

最近では内緒で老人ホームのような施設に「出張」することもある。

「職員へのセクハラが問題になっていた『色ボケ』おじいちゃんの相手として呼ばれるんです。認知症の方ということで『何をするか分からないから』と心配した男性職員の方が案内してくれるだけでなくいつもこっそり立ち会うので、ぶっちゃけ緊張してやりにくいし、めっちゃ恥ずかしいんですけど、なんか毎回感動されるし、施設長の女性に『また是非来てください』って頭を下げられたりして、思わず社会貢献したような気分になります」

「この仕事をずっと続けたい」と話すように、美里さんにとって今のところデリヘル業は彼女にとって天職のようである。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。