【「ヨソドラ」主催者ARAの2024ドラフト採点】宗山を引き当てた楽天は納得の「A」評価。それに次ぐ好評を得たのは金丸を引き当てた中日と……?<SLUGGER>

 金丸夢斗(関西大)、宗山塁(明治大)という投打の「タレント」を中心に回った今年のドラフト。各球団の課題とチーム編成状況を踏まえ、有識者ARAが採点した。(←ARAさんのプロフィールもう少し詳しく)

球団ごとに方針が異なり全体の傾向が見えにくかったため、「補強ポイントを埋めつつ即戦力と将来性のバランスが良いか」の観点で評価している。

【西武】
評価:B-

 1巡目は3度内野手に入札し、最終的に齋藤大翔(金沢高)の交渉権を獲得。ウェーバー順で2位が早い利点を生かして人気選手への入札を恐れず、喫緊の課題ではない内野手を選んだのは、長期的な再建への意思がうかがわれる。狩生聖真(3位/佐伯鶴城高)や篠原響(5位/福井工大福井高)といった好素材の投手指名もその表れだろう。即戦力の野手は、実績十分な外野手の渡部聖弥(2位/大阪商業大)を指名。林冠臣(4位/日本経済大)や古賀輝希(7位/千曲川硬式野球クラブ)と未知数な20代の選手が活躍すれば大成功ドラフトと言えそうだ。

【中日】
評価:A-

 金丸夢斗(関西大)を引き当てつつ、2位で吉田聖弥(西濃運輸)を指名。即戦力性が高いながら将来性も残す投手の逸材を2枚確保した。さらに高橋幸佑(5位/北照高)、有馬恵叶(6位/聖カタリナ高)と将来性豊かな素材型投手にもきちんと目を向けていた。長打が出にくい本拠地をもつチームとして、昨年までは二遊間を、今年は投手を補強し、ディフェンス面を強化。さらに手薄な捕手に社会人No.1の石伊雄太(4位/日本生命)を指名。後は内野手の森駿太(3位/桐光学園高)が育てば大成功のドラフトになるだろう。

【オリックス】
評価:C

 西川史礁への入札は外したものの麦谷祐介(外野手/富士大)に切り替え、4位では山中稜真(外野手/三菱重工East)を指名。打力の補強が急務な中で実戦的な選手を獲得したが、守備位置を考えると共存ではなく競争相手に近い点が、打力の補強が急務なチームにあってどう影響するか。投手は、寺西成騎(2位/日体大)、東山玲士(5位/ENEOS)と即戦力に近い選手を抑えつつ、山口廉王(3位/仙台育英高)、片山楽生(6位/NTT東日本)と素材型も指名しておりバランスが良いだけに、チームの活性化につながるか注目したい。
 【ヤクルト】
評価:C+

 1巡目で160キロ右腕・中村優斗(愛知工業大)の一本釣りに成功。投手運用に苦しんだチームを助けるに十分な実力で、早期に投手陣の柱となることだろう。また2位のモイセエフ・ニキータ(外野手/豊川高)のポテンシャルは、今年の高校生野手ではトップクラス。村上宗隆のメジャー挑戦後にチームの顔として活躍する未来を描きやすい。3位以降は荘司宏太(セガサミー)などを指名したが、いずれもスケールより現状の完成度を優先した人選なのが惜しい。既存戦力との競争に期待したい。

【楽天】
評価:A

 今ドラフトの目玉・宗山塁(明治大)を引き当てただけでも十分な成果だが、今ドラフトのトレンドである高出力左腕の中から徳山一翔(2位/環太平洋大)を選択。先発として十分なスタミナと球威を備える逸材は、投手王国に厚みをもたらすことだろう。さらに、選手層が心許ない野手に吉納翼(5位/早稲田大)と陽柏翔(6位/茨城アストロプラネッツ)を追加。1年目から活躍を期待できる吉納に、宗山の次代を担う好素材の陽と、バランス良い選択に称賛を送りたい。

【広島】
評価:B-

 1位指名を公言していた宗山は外したものの、代わって佐々木泰(外野手/青山学院大)の指名に成功。本来の補強ポイントを鑑みれば右打ち強打者が必須だったため、渡邉悠斗(4位/富士大)を含めベストな選択ができた。また、佐藤柳之介(2位/富士大)は、高出力の選手が多い今ドラフトの左腕の中でも指折りの実力者。スピンの効いた直球に縦横無尽な変化球は、すでに多くの左腕が在籍するチームにあっても霞むことがない。スタミナも十分で、ローテ争いに刺激をもたらすだろう。
 【ロッテ】
評価:B-

 野手は西川史礁(1位/青山学院大)を引き当てた上で、宮崎竜成(2位/ヤマハ)、立松由宇(6位/日本生命)とパワーのある実力派の好打者を選択。ポランコやソトといった助っ人だけに依存しない骨太な姿勢をみせた。一方で投手は、一條力真(3位/東洋大)、坂井遼(4位/関東第一高)、廣池康志郎(5位/東海大九州キャンパス)と個性がありながら伸びしろの高い投手を選択。投手育成と運用に定評あるチームにあって、既存戦力に刺激を与えられるか注目したい。

【DeNA】
評価:C-

 金丸を外し、再入札で竹田祐(投手/三菱重工West)を選択。正反対の投手を指名してでも先発を確保する動きは、優勝争いに加わる姿勢の現れだろう。さらに篠木健太郎(2位/法政大)、若松尚輝(4位/高知ファイティングドッグス)、坂口翔颯(6位/国学院大)とストレートに特長がありながら、制球にも長けるピッチャーを選択。投手力の補強が急務な中、バランス型の指名を行った昨年ドラフトを取り返すかのような動きだが、いずれも現有戦力に追いつくには時間が必要なタイプ。中期的な目線で見守っていきたい。

【日本ハム】
評価:C+

 1巡目再入札の柴田獅子(福岡大大濠高)から6位の山城航太郎(法政大)まで、高身長の投手を5人も指名。これまでチームが培ってきた投手育成メソッドに絶対的な自信がうかがえる指名だ。すでに150キロ近いボールを持つ投手たちがさらなるスケールアップに成功すれば悲願のリーグ優勝に大きく近づくが、将来野手層が薄くなった際に戦力が偏ることには留意する必要があるだろう。また、唯一の野手指名となった山縣秀(5位/早稲田大)は、すでにプロレベルの守備力を誇る守備職人。二遊間どちらでも破格の守備範囲を誇る能力は唯一無二と言える。
 【阪神】
評価:B

 初回入札は外したものの、再入札で伊原陵人(投手/NTT西日本)を選択。体格からは想像できないほどのスピードに、程良く抜ける変化球はどれも実戦的で即戦力と言えるだろう。2位では今朝丸裕喜(報徳学園)を選択。隠しきれないスケール感に良質なコントロールをまといながら、順当に球威が備わる姿は才木浩人を彷彿とさせる。3位の木下里都(投手/KMGホールディングス)も150キロを優に超える豪速球と球種の豊富さが魅力。闘争心を隠さない投げっぷりも魅力的だ。

【ソフトバンク】
評価:A-

 宗山の当たりクジが引けなかったため、再入札で村上泰斗(投手/神戸弘陵高)を選択。平均2600回転を誇るストレートに多彩な変化球だけでなくコントロールも兼ね備え、今ドラフトの高校生投手ではもっとも成功のビジョンを描きやすい素材だ。投手はその後、安徳駿(3位/富士大)、岩崎峻典(6位/東洋大)とボールの質が高く実戦的な選手を選びつつ、野手では宇野真仁朗(4位/早稲田実)と石見颯真(5位/愛工大名電高)と強打者候補を抑えた。即戦力性と将来性のバランスは最良と言えるだろう。

【巨人】
評価:B

 こちらは金丸を外したことで石塚裕惺(1位/花咲徳栄高)を選択し、西武との競合で当たりクジを引いた。投手から野手に方針転換し、高校生No.1野手を抑えたことは、将来への投資として申し分ない成果だ。また、投手では4位で石田充冴(4位/北星大付)を選択。長い四肢を器用に操るフォームから、良質なボールをコントロールよく投げる将来性豊かな高素材だ。また、宮原駿介(5位/東海大静岡キャンパス)は高回転のストレートにスピードの速い変化球を複数操る本格派で、チームに欠かせない存在となるだろう。

文●ARA

【著者プロフィール】 
Twitterでドラフトイベント「VD4B」「ヨソドラ」を主催。雑誌/野球太郎のモックドラフト立案者。主に打撃を得意分野とし、中学生を中心とした野球指導にも携わる。ツイッターIDは@arai_san_28。