インターネット上で、毎日のように「炎上騒動」を目にする現代。しかし、中には「なぜ今、このタイミングで?」と、首を傾げたくなる炎上も少なくない。
つい先日も、とあるトピックが「3年越しの炎上」という形で、注目を集めていたのをご存知だろうか。
■一見、普通の回収ボックスだが…
ことの発端は、Xユーザー・すき焼き奉行さんが投稿した1件のポスト。
「なんか自分でジーンズ買ったのにこの言い方は癪だな」と、意味深な1文の綴られた投稿には、穿かなくなったジーンズを回収する店頭ボックスの写真が添えられていた。
SDGsなどの観点から、リサイクルへの意識が高まる昨今ならではの素晴らしい取り組みだが…問題なのはボックスに記された呼びかけの言葉。
そこには、大きく「あなたのジーンズ、返してください。」と書かれていたのだ。
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■「盗んだみたいな書き方」という声も…
ポスト本文にもあるように、この「返してください」という7文字に違和感を覚えた読者も少なくないだろう。実際、件のポストは投稿からわずか数日で5,000件以上ものリポストを記録するほど話題に。
Xユーザーからは「じゃあ『お金も返してください』ってなるよね」「こっちは買ったつもりなのに、向こうは貸したつもりだったのか…」「『還しませんか?』とかなら良かったと思う」「こっちが盗んだみたいな書き方で嫌だなぁ」など、疑問の声が多数寄せられていた。
確認したところ、こちらの「CO:RE」というプロジェクトは、2021年3月より実施しているものと判明。つまり、3年半もの時を経て「疑問視され出した」というワケである。
そこで今回は、同プロジェクトを展開する「エドウイン」に本件に関する取材を実施することに。すると、長い歴史を持つ「同社ならでは」と言える、予想外な要因が明らかになったのだ。
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■50年前の「セルフオマージュ」と判明
なんか自分でジーンズ買ったのにこの言い方は癪だな pic.twitter.com/NIrDAQWOEk
— すき焼き奉行 (@SukiyakiBugyo) October 4, 2024
前出の「CO:RE」は「Cotton Recycle」の略で、自社縫製工場で排出される裁断くず(はぎれ)と、ユーザーから回収させてもらったジーンズを、再びデニム生地として生まれ変わらせる取り組み。
実施の背景について、エドウイン担当者は「私たちの仕事は、質の良いジーンズを作り届けることだけではなく、ジーンズという製品を通して、これからの豊かさを考えることでもあります」「この考えに基づき、国内に工場を持つジーンズメーカーとして、できるだけゴミを出さず、出てしまったものは自分たちでリサイクルし、再びジーンズへ再生させる活動を始めました」と説明している。
続いては、今回大きな物議を醸した「あなたのジーンズ、返してください。」というフレーズの詳細について尋ねてみる。
すると、担当者は「1970年代の当社広告では『すいません、返してください。』というコピーを使用しておりました」と前置き。
これは、厳しい「エドウイン基準」の品質検査を経た上で商品を販売していることから、「もし、お買い上げになった商品に不良品があればお取り換えします」という、自社製品のクオリティの高さに対する自信が込められたキャッチコピーである。
これらの背景を踏まえ、「このコピーを参考にし、ジーンズ回収の取り組みを広める意図で『あなたのジーンズ、返してください。』というコピーを作成いたしました」と、経緯を説明してくれたのだ。
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■エドウインは「変更の予定なし」
同フレーズが(使用開始から3年半の時を経て)物議を醸した件について、エドウイン担当者は「表現方法により、ご不快な思いをさせてしまった方々には申し訳ございません」と、謝罪の言葉を寄せる。
その上で、「前出の意図で作成したものですので、現時点では変更を予定しておりません」と、今後の方針を語ってくれた。
コンプライアンス等の観点から、昨今は炎上やユーザーの声を「必要以上に恐れている」ように映る企業も少なくない。そんな中、エドウインはしっかりと企業としての意志、そして歴史を軸にしている印象を受けた。
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■執筆者プロフィール
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。
(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)