自己中心的な人は、「疎外感の緩和」を求めてソーシャルメディアを使っていた / Credit:Canva
Instagram、X、YouTube、Facebook、TikTokなど、ソーシャルメディアにどっぷりとハマってしまう人とは、どんな人でしょうか。
これまで一般的には、「自己中心的な人は、承認欲求のためにソーシャルメディアを使う」と考えられてきました。
「自分が物事の中心である」と考える人は、他人からの注目や「いいね」が欲しくて、ソーシャルメディアにハマってしまうというわけです。
しかし、アメリカのベイラー大学(Baylor University)に所属するジェームズ・A・ロバーツ氏ら研究チームは、自己中心的な人は承認欲求ではなく疎外感の緩和を求めてソーシャルメディアを使っていることを示しました。
自己中心的な人は、「周囲から取り残されたくない」という焦燥感や不安が強く、他人が見ていることや流行っていることを見逃さないためにソーシャルメディアを使っていたのです。
研究の詳細は、2024年10月付の学術誌『Canadian Journal of Behavioural Science』に掲載されました。
目次
自己中心的な人は承認欲求を求めてソーシャルメディアを使っているのか自己中心的な人は疎外感の緩和を求めてソーシャルメディアを使う
自己中心的な人は承認欲求を求めてソーシャルメディアを使っているのか
今やInstagram、X、YouTube、Facebook、TikTokなど、ソーシャルメディアは、私たちの関心や生活のかなりの部分を占めるようになりました。
そしてソーシャルメディアに依存してしまう人も少なくありません。
自己中心的な人はソーシャルメディアに依存しやすい!? / Credit:Canva
特に、自己中心的な人はソーシャルメディアに依存しやすい傾向があります。
その理由として、一般的には、「自己中心的な人は承認欲求を求めて、ソーシャルメディアを使用する」と考えられてきました。
自己中心的な人は、他人の感情やニーズよりも自分の感情や欲望を優先する傾向があります。
また他人からの承認や称賛を求めることが多く、自己顕示欲が強い傾向もあります。
だからこそ彼らは、自分を誇示したり、他人からの称賛や「いいね」を求めたりするために、ソーシャルメディアを使用すると考えられてきました。
しかし今回、ロバーツ氏ら研究チームは、そうした従来の考えに疑問を抱き、真実を見極めようとしました。
人々がソーシャルメディアを使用する理由は承認欲求だけではないからです。
FOMO(疎外感や取り残されることへの恐れ)も、人々をソーシャルメディアの使用へと駆り立てる / Credit:Canva
「FOMO(Fear of Missing Out)」と呼ばれる「疎外感」や「取り残されることへの恐れ」もまた、ソーシャルメディアへの依存を高める要素の1つです。
このFOMOとは、他の人が楽しんでいたり、価値のある経験をしたりすることを「自分が見逃している」という不安や焦燥感を指します。
ソーシャルメディアでは、他人の生活やハイライト、楽しそうな瞬間が映し出されます。
また「大きなニュース」も報道され、瞬時に拡散されます。
一部の人々は、「他人がやっていることと絶え間なく繋がっていたい」「取り残されたくない」という欲求から、ソーシャルメディアを利用するわけです。
そこでロバーツ氏ら研究チームは、いくつかの実験により、自己中心的な人がソーシャルメディアを使用する本当の理由が、疎外感(FOMO)にあるのか、それとも承認欲求にあるのか明らかにすることにしました。
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自己中心的な人は疎外感の緩和を求めてソーシャルメディアを使う
研究チームは、最初の調査で、199人のアメリカ人(成人)を対象に、自己中心性、FOMO、ソーシャルメディアの使用状況について、それぞれ質問票を用いて評価しました。
その結果、自己中心的な人がソーシャルメディアの使用時間を増加させるのは、承認欲求を満たすよりも、疎外感を緩和させるためだったと分かりました。
そしてこの結果を確かめるための2つ目の研究では、241人の成人が参加しました。
その結果、最初の研究と同様の結果が得られました。
さらに、より自己中心的な人だと評価された人は、より高いレベルのFOMOを示し、それがソーシャルメディアの利用を促していると分かりました。
自己中心的な人がソーシャルメディアを使用するのは、承認欲求からではなく、疎外感の緩和を求めてのことだった / Credit:Canva
ロバーツ氏は「この結果は、自己中心的な人がソーシャルメディアを使って自己重要感(承認欲求を含む『自分が価値ある存在だ』という感覚)のために利用するという長年の仮説に反するものだった」と述べています。
自己中心的な性格は、過剰な甘やかしや過保護、逆に厳しすぎたり十分な愛情を受けられなかったりした幼少期に形成されやすいことが分かっています。
こうした傾向を持つ人は、幼い頃から自分のことを優先しすぎるため、上手く友達ができなかったり、仲間はずれにされたりすることが多くなります。
このため、彼らは現実世界においては誰よりも疎外感を味わってきており、ソーシャルメディアによってその感情を緩和させたくなるのだと考えられます。
ソーシャルメディアで、やけに最新情報の共有にこだわっていたり、脅迫的に流行を追ってしまうような人は、これに当てはまるのかもしれません。
ただ今回の研究は、コロナ禍で実施された実験データを使用しており、社会的交流が限られていたために、参加者は全体的のFOMOのレベルは普段より高まっていた可能性があります。
それでもこの結果に、心当たりがあると感じる人も多いでしょう。
自分がソーシャルメディアに駆り立てられる原因を理解し、過度な依存を解消することは、自身の幸福のためにも重要なことです。こうしたサービスから適切な距離を持って楽しむためにも、自分が熱中する理由を考えてみるのはいいことかもしれません。
参考文献
New study: Self-centered people turn to social media out of weakness, not ego
https://www.psypost.org/new-study-self-centered-people-turn-to-social-media-out-of-weakness-not-ego/
元論文
Me, Myself, and I: Self-Centeredness, FOMO, and Social Media Use
https://doi.org/10.1037/cbs0000382
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部