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韓国情報機関の国家情報院は、北朝鮮がロシアに朝鮮人民軍の大規模派兵を決めたと公表した。

第1陣として約1500人がロシア極東地域に入ったとしているが、北朝鮮の地上軍が大規模に海外派兵されたのは初めてのことだ。

「最初に派兵されたのは、『暴風軍団』と呼ばれる最精鋭の特殊部隊です。表向き北朝鮮は派兵を認めていないため、ロシア軍の軍服を身にまとい、偽の身分証を所持しているという情報です。最終的には約1万2000人がロシア軍として、ウクライナの戦場に送り込まれるとみられています」(軍事ジャーナリスト)

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これに危機感を強めているのがウクライナのゼレンスキー大統領だ。

「プーチンは北朝鮮から武器だけでなく兵士の供給も受けている」と強く非難。北朝鮮兵の一部はすでにウクライナのロシア占領地域に入っていると明かし、「北朝鮮が多くの兵士をウクライナと戦うために派遣する準備をしていることは分かっている。これは世界大戦への第一歩」と警鐘を鳴らした。

「これまで北朝鮮はウクライナ侵攻の長期化で消耗が激しいロシアに対し、砲弾や弾道ミサイルなどの兵器を供給してきた。ロシアは国内で何度も徴兵を行ってきたが、大量の死傷者を出すなど人員不足も目立っている状態なので、北朝鮮兵の参戦は兵力強化に願ってもないこと。一方の北朝鮮は兵士を最前線に派遣して実戦経験を積むことができる上、自国が提供した兵器が実際に前線でどのような効果を発揮しているかを検証する狙いもあります」(大手紙外信デスク)

この一連の動きについては米ホワイトハウスのカービー広報補佐官が10月23日に会見。こちらでは「北朝鮮の兵士少なくとも3000人がロシアに渡り、同国東部の複数の軍事施設で訓練を受けている」との分析結果を明らかにしたほどだ。

また、24日にはウクライナの情報機関が「北朝鮮軍がロシア西部に到着した」と報道。北朝鮮兵に向けてハングルで「投稿すれば1日3食提供する」と呼びかける動画を公開した。

地図を広げソウル攻撃を計画

しかも、すでに戦闘も始まっていると伝えられている。

ロシアが占領している東部ドネツク州周辺では、ウクライナのミサイル攻撃により北朝鮮軍の将校6人を含む20人が死亡。また、ウクライナの前線に派遣された北朝鮮軍からは18人の脱走兵が出ているとの報道もなされているからだ。

それだけ前線の状況は過酷だと言えるが、銃弾や砲撃が飛び交う過酷な環境の中で生存した兵士たちは、鍛えられ、極めて屈強になると考えられる。

北朝鮮とロシアが連携を強める背景には、正恩氏とプーチン氏が6月に事実上の軍事同盟となる「包括的戦略パートナーシップ条約」を結んだことがある。

プーチン氏を北朝鮮に招くなどして親密になったことで自信を深める正恩氏は、隣国の韓国に対して牙をむき始めた。

これまでは対立しつつも「南北統一」を掲げていたが、ここにきて正恩氏は「韓国は他国であり、明確な敵国だ」と明言し、歴史をさかのぼって一切の関係を断絶すると宣言した。

韓国が無人機を北朝鮮の首都・平壌に飛ばしたと批判、韓国につながる道路や鉄道を爆破したほか、北朝鮮に残る韓国との友好の印である記念塔を破壊するなど徹底している。

正恩氏は「ソウルとの悪縁を断ち、つまらない同族意識や統一という非現実的な認識を払いのけた」と韓国への敵意をむき出しにしている。

また、正恩氏が地図を机上に広げ、ソウルを攻撃する計画を立てている様子も北朝鮮メディアが報じている。

「北朝鮮は憲法を改正してまで、韓国を敵対国家と位置付けただけに後戻りはできません。憲法には北朝鮮の領土や領海の規定を一方的に拡大している可能性があり、韓国が国境を越えてきたと因縁をつけて武力行使、朝鮮戦争に打って出る暴挙が懸念されている」(前出・軍事ジャーナリスト)

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戦いは日米韓VS北ロ中に発展か

北朝鮮とロシアが連携を深めているのに加え、ロシアは中国とも関係が深い。

この3国が韓国とアメリカ、日本と対抗する構図は避けられそうにない。

ロシアは日本と北方領土問題を抱えている。

そして、中国は「台湾侵攻」を視野に入れる中、台湾に近い沖縄県の尖閣諸島周辺の海域にたびたび接近している。

中国とロシアの空軍や海軍は、日本の領空や領海に侵入したり、日本周辺で軍事訓練を行うことで日本への威圧を強めている。

北朝鮮は日本との因縁も深い。拉致問題の全面解決を求める日本側に対し、北朝鮮は「解決済み」との立場だ。

また、北朝鮮への経済制裁を続ける日本に対し、同国は日本海周辺に弾道ミサイルの発射を繰り返している。

日本と北朝鮮の関係も緊張の度合いを高める中で、ウクライナへの派兵は日本の安全保障情勢に大きな影響を及ぼしかねない。

「ウクライナの戦場で実戦経験を積んだ朝鮮人民軍の特殊部隊が北朝鮮に帰還した後は、その経験を韓国と日本を標的にすることに生かすでしょう。中国が台湾を侵攻するタイミングで、北朝鮮とロシアも軍事行動に出る恐れがあり、沖縄や北海道が攻撃対象になるとの見方も浮上しています。アメリカが大統領選(11月5日投票)の最中とあって海外への関心を失っているため、日本を取り巻く危険性は日々増しているのです」(前出・大手紙外信デスク)

世界大戦の火種は身近に横たわっている。

「週刊実話」11月7・14日号より一部内容を変更