なぜアルコールに強いのか?
チームがオリエントスズメバチの体を詳しく調べてみると、彼らは他の生物と違い、アルコールの分解に関与する「アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)遺伝子」を複数コピー持っていることが判明しました。
これにより、彼らのアルコール耐性は他の生物に比べて大幅に高くなっていたのです。
研究者によると、こうしたアルコール耐性の高さはオリエントスズメバチの生存を有利にする上で進化したのだろうと指摘します。
というのも多くの果実は10〜11月の秋頃に熟し、発酵してエタノールを生産しますが、オリエントスズメバチのコロニーの繁殖期がちょうど10〜11月なのです。
つまり、オリエントスズメバチは繁殖にかかる膨大なエネルギーを効率的に得るために、他の生物たちがアプローチできない高アルコール濃度の発酵果物を食べられるようになったのでしょう。
高アルコール耐性が生存競争に有利に働く / Credit: commons.wikimedia
また彼らのような肉食性のハチは腐肉を集めて幼虫に分け与えることが知られています。
そこで抗菌作用を持つエタノールを体内に取り込むことは、有害な細菌を子供たちに与えない上でも役に立っているかもしれません。
オリエントスズメバチたちはアルコール耐性を強化することで、他の生物との資源競争から一抜けし、安定した生存戦略を築き上げていると考えられます。
参考文献
Oriental hornets do not get sick or die when consuming very large amounts of alcohol, study shows
https://phys.org/news/2024-10-hornets-sick-die-consuming-large.html
元論文
Tolerance and efficient metabolization of extremely high ethanol concentrations by a social wasp
https://doi.org/10.1073/pnas.2410874121
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部