10月26日より始まったメジャーリーグの頂点を決める「ワールドシリーズ」。今年は東西の名門、ロサンゼルス・ドジャース対ニューヨーク・ヤンキースの対戦カードが実現し、出場しているのは大谷翔平と山本由伸。ドジャースが3連勝で優勝へ王手がかかるなか、日本でもとてつもない盛り上がりをみせているが、その一方で……。
作り話のような最高のストーリー
ドジャースとヤンキースはそれぞれ、ナ・リーグとア・リーグの今期最高勝率チームで、プレーオフでも第1シードだった。
過去10年で、リーグ最高勝率同士のワールドシリーズとなったのは、コロナ禍で短縮シーズンとなった2020年のドジャース対レイズのみだ。
さらに、シーズン50本以上のホームランを打った選手が対決することになるのは史上初。
シーズンMVPが有力視されている大谷翔平とアーロン・ジャッジの直接対決は全米でも高い関心を集め、現地のSNSでは〈史上最高の選手2人の活躍を最高の舞台で見られるなんて!〉〈まるで作り話のような最高のストーリーだ〉と大白熱している。
そんななかで迎えた10月26日の第1戦、試合は延長までもつれ込み、ドジャースが1点ビハンドで迎えた10回裏2死満塁の場面。MVPトリオの一角、フレディ・フリーマンが逆転サヨナラ満塁ホームランを放ち、ホームのドジャースが劇的な勝利をおさめた。
ハードルが上がりきった前評判をさらに超えるような最高の第1戦は、このシリーズがメジャーリーグの歴史の中でも特別なものになることを予感させた。
迎えた第2戦も、ドジャースが試合を優位に進ませながらも、9回表にはヤンキースが1死満塁、一打逆転のチャンスを作るなど、最後までどちらに転ぶかわからない白熱した展開を繰り広げた。
このワールドシリーズ第2戦は、現地アメリカでは、中継局のFOXテレビによると、視聴者は昨年比65%増の1380万人。
アメリカでは野球人気が落ちてきているといわれているが、そんな風潮をもろともしない盛り上がりをみせている。
日本でも今回のワールドシリーズは、急遽、フジテレビが全試合を地上波で生中継することを発表。
朝9時台からの放送、さらにNHK BSでも同じ試合が中継されているにも関わらず、世帯平均視聴率は第1戦が12.7%、第2戦が13.9%と(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と高い数字を残した。
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「モロ被りの日程を組んだNPBと横浜が悪い」
さて、そんな中で割りを食らってしまったのが、同時期に開催されている日本プロ野球の日本シリーズだ。
今年は福岡ソフトバンクホークスと横浜DeNAベイスターズのカードとなり、試合は地上波で中継。
朝にワールドシリーズ、夜に日本シリーズと野球ファンにはたまらない日程になっているが、この構成のせいで、野球ファンの話題は完全にワールドシリーズにもっていかれている。
日本シリーズ開幕前、ソフトバンクの小久保裕紀監督はワールドシリーズに話題がとられることを危惧し、報道陣に対して「ここは日本だぞということでお願いしたい」と牽制していたが、その悪い予感が見事に的中してしまい、スポーツニュースは見事にワールドシリーズ一色の状態となっている。
もちろん、日本シリーズも十分に白熱しているが、ワールドシリーズが第1戦から最高の試合を繰り広げたこともあり、SNS上では比較する声が続出している。
〈ワールドシリーズ見た後で日本シリーズ見るとテンポ悪すぎてダルい。早くピッチクロック導入してくれ〉
〈日本シリーズ誰も見てない。大谷のワールドシリーズとモロ被りの日程を組んだNPBと横浜が悪い〉
〈日本シリーズ見た後にワールドシリーズだったら見れるけど、ワールドシリーズ見た後に日本シリーズはちょっと見劣りするな〉
〈ワールドシリーズ面白すぎたせいで、日本シリーズがそこそこつまんなく見えるのバグすぎる〉
〈高級寿司食べた後に回転寿司食ってる感覚だわ〉
「ワールドシリーズと日本シリーズの盛り上がりの差は、プレーの質ではなく、そのシリーズの重みの違いが大きく影響していると言えそうです。大前提として、30チームが競い合って頂点を決めるメジャーと、12チームが競い合う日本プロ野球の時点で規模が全然違う。
それゆえ、日本の12球団がそれぞれ日本シリーズで優勝経験があるのに対して、メジャーではまだ5球団も優勝経験がありません。さらにいえば、優勝を経験したことのないメジャーのスター選手も少なくない。大谷もその一人です。それほど、ワールドシリーズにはプレミア感があるのです」(テレビ局関係者)