ツイッタードラマ
「それって『ギャンブル依存症あるある』だから」「あなたのご主人はね。ギャンブル依存症という立派な病気です」
タレントの青木さやかさん扮するアヤメが、相談に来た若い女性に告げる。驚いた女性は答える。「そんな依存症なんて。ただ、ギャンブルが好きすぎるだけで、実際にやめてた時期もありますし」。すると、アヤメがにやつき始める。
ついには右手に持った大きなハンドベルをグルグルと回転させつつ、女性の手を取りながらこう告げた。
「LOST! よく来たね」
ツイッタードラマ「ミセス・ロスト~インタベンショニスト・アヤメ〜」の第1話の終わり40秒ほどを描写してみた。同ドラマは2020年5月の「ギャンブル等依存症問題啓発週間」に合わせて配信された。
構成は1話約2分で全11話。インタベンション(intervention)とは「介入」を意味する。
ギャンブル依存症は「否認の病」と言われる。ギャンブラーは生活が立ちゆかなくなってもギャンブルをやめようとしない。それなのに自分でやめられるとの認知のゆがみを生じさせている。インタベンショニストは本人、家族に適切に介入することで回復過程に導く役割を担う。
ドラマでインタベンショニスト役となった青木さんも、過去にギャンブルにハマった時期がある。「婦人公論.jp」の連載「47歳、おんな、今日のところは『●●』として」では、パチンコ依存気味だった日々をつづった(2020年8月)。
実家のある中部地方にいた頃は、「新台オープンの為に張り切って早朝に起き」、パチンコ店に向かった。「決してお金があったわけではないが」、パチンコの最中だけは「『1万円が100円』くらいの感覚になった」。
上京後も、「当時の彼氏には『もうやめた』と噓をつき、バイトに行くといってはパチンコに通った」。今でも「『やめられた』ではなく、『やめている』」状態だと、かなり率直に記す。
なお、先のドラマでの相談者の夫役は、俳優の高知東生さんが務めている。2016年に覚醒剤の使用などで逮捕されてから俳優業に復帰する作品となった。
制作したのは公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京都中央区、田中紀子代表)。ドラマの終わりには「お悩みの方はscga.jpまで」と出てくる、そのリンク先の団体だ。
青木さんがドラマ第1話で「LOST!」と叫んだのは、同団体が開発したギャンブル依存症自己診断ツール「LOST」を指す。以下が意味するところだ。
Limitless(ギャンブルをする時には予算や時間の制限を決めない、決めても守れない)
Once again(ギャンブルに勝った時に「次のギャンブルに使おう」と考える)
Secret(ギャンブルをしたことを誰かに隠す)
Take money back(ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う)
ドラマ第2話では、この4問中2問以上に当てはまると、「ギャンブル依存症の可能性が高い」とされている。
同様のチェックリストには、国際的に広く使われている米国精神医学会の診断マニュアル「DSM-5」がある。9項目のうち4項目以上に当てはまると、「ギャンブル障害」と見なされる。依存症ピアネット「ソーバーねっと」が掲げるチェックリストにも使われている。
こうしたチェック項目からも、ギャンブル依存症がいかに泥沼状態に陥りやすいかを推測できよう。
写真/shutterstock
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カジノ列島ニッポン
高野 真吾
2024年9月17日発売1,100円(税込)新書判/240ページISBN: 978-4-08-721333-1
2030年秋、大阪の万博跡地でカジノを含む統合型リゾート (IR) の開業が予定されている。
初期投資額だけでも1兆円を超える、この超巨大プロジェクトは年間来場者数約2000万人、売り上げは約5200億円もの数字を見込んでいる。
カジノ・IRに関しては大阪のほか、市長選の結果により撤退した横浜をはじめ、長崎、和歌山でも開設の動きがあり、そして本丸は東京と見られている。
20代から海外にわたってカジノを経験してきたジャーナリストが、国内外での取材を踏まえ、現在進行形の「カジノ列島ニッポン」に警鐘を鳴らす。
◆目次◆
第一章 消えぬ「東京カジノ構想」の現場を歩く
第二章 海外から探るIRの真の姿
第三章 先行地・大阪の計画とは
第四章 不認定の長崎、こけた和歌山・横浜
第五章 ギャンブル依存症をどう捉えるか
第六章 国際観光拠点VS地域崩壊