最もコントがおもしろい芸人を決める「キングオブコント2024」(TBS系)が10月12日に開催され、ラブレターズが17代目王者に輝いた。1本目から点差が開かない接戦を制しての見事な優勝。華々しくトロ...
ラブレターズに感化されたオジサン芸人たち
そんな夢みたいな光景を見せつけられたことで、地下芸人界隈で悲劇が起こっている。ラブレターズはメディア露出はほぼないが、ライブや地下劇場で腕を磨き、芸歴15年目にして優勝。もうじき40歳になる。
昨年のサルゴリラに続いて下積みの長いコンビの優勝に、僕をはじめとしたオジサン芸人たちが「俺たちももう少し頑張ったら、賞レースで優勝して日の目を見ることができるのでは!?」と夢見てしまったのだ。
この現象は2021年に「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)で錦鯉が優勝したときも巻き起こった。最年長で優勝を勝ち取った錦鯉に感化されて、下積みの長い漫才師たちが露骨にボルテージを上げ出した。
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M-1「錦鯉」優勝とは異なる意味を持つ
50歳と43歳で優勝した錦鯉(C)M-1グランプリ事務局
その時のコント師たちは「まあまあ、錦鯉は元々地下でもカリスマだったし、錦鯉になるなんて夢のまた夢だよ」という達観スタイルだった。しかし、今回はそうも言ってられない。
ハナコや霜降り明星が優勝して第7世代が台頭してきた頃は、ブレイクを夢見て下積みを続けてきた仲間のオジサン芸人たちが「もうこれくらいが潮時かな…」と見切りをつけて辞めていった。華とセンスがある若手芸人を目の当たりにして、何年やっても売れる気配のない現実を受け止められたのだろう。
仲間が去っていくときは何とも言えない悲しい気持ちで満たされたが、社会復帰していく人たちを引き留めるのも酷な気がした。日本社会全体で見たら「売れない芸人」とは名ばかりのフリーターより、真面目に働く正社員が増えた方が良いだろうし。
それなのにラブレターズやサルゴリラの鮮烈な優勝をみて、「諦めなければ自分たちも優勝できるかもしれない」という可能性を夢見てしまった。
それは甘美な夢だけれど、絶望的でもある。また一年売れない芸人生活を過ごしてしまうことになり、再就職の機会を逃し、社会に帰るのが遅くなるからだ。