海外初挑戦の地にイタリアを選んだ日本人バレーボール選手、23歳のアウトサイドヒッター(OH)垂水優芽。世界最高峰リーグで迎えたシーズン序盤を過ごす今とこれからへの思いを語ってくれた。
【画像】大阪ブルテオンとの開幕戦!髙橋藍の活躍を厳選フォト 筑波大学の主将としてインカレ(全日本学生選手権)で10年ぶりに日本の頂点を極め、卒業と同時に大阪ブルテオン(旧パナソニックパンサーズ)へ入団。1年後の今季、レンタル移籍でイタリアの首都ローマから70キロほど南下した海岸沿いの町が本拠地のチステルナ・バレーで、新たなスタートを切った。
現地10月20日に日本代表の石川祐希が所属するペルージャとアウェーで対戦。試合後の会場でインタビューに応じてくれた垂水は、「体調不良もなく元気にやっています。生活もあまり困ったことはなく、基本的にもう慣れました」と第一声。
開幕から上位勢との対戦が続くチステルナは、まだ白星なしと苦戦が続いている。ペルージャ戦では2セット以降の各セット後半にコートに立ち奮闘。しかし、U20イタリア代表とのプレシーズンマッチに先発出場し好調をアピールした後、開幕からピンポイントでの起用に留まっていた。
出場時間が限られていることに、「去年から出ているOH2選手(スペイン代表ジョルディ・ラモンとトルコ代表エフェ・バイラム)が主力で残っているので、そこを割って新加入の選手が出ることはなかなか難しい。名前を知られていないですし…」とコメント。
それでも、「日本で磨いてきたディフェンスにさらに磨きをかけています。それから、あまり身長は高くないのですが、自分には点を取っていく力がある。イタリアではまだそれを発揮できていないので、リーグに早く慣れなければいけない。攻撃面の武器はパイプやハイセットの処理。自分でも得意だと思っているので、その良さを活かしつつ、どんどんイタリアの高さとかパワーに慣れていけば、良いプレーを出せると思っています」と自信を見せた。 2020-21シーズンからチステルナのアシスタントコーチを務めるロベルト・コッコーニ氏。垂水についての見解を知るためインタビューをお願いすると、熱のこもった口調でたっぷり語ってくれた。
「シーズン序盤の今、ユウガは新しい環境に適応するため、多くの努力をしている。練習の中で日々の成長が感じられ、現時点での我々の感触はポジティブ。チステルナ加入を満足してくれていると願いたい。まだ若く、成長するための時間は十分にある。多くの取り組みが必要だが、チームにとって不可欠な選手であり、時間とともにさらにその存在の重要性は高まるはずだ。日々、前を向いて努力を重ねる姿に、僕らスタッフは大きな将来性を感じている。上手くいかないことがあるのは当然。新しいことへのトライを繰り返して毎日続けることで向上し、その先に成長があるのだから」
この先のシーズンに出場機会を勝ち取るためには、「なによりも必要なのは経験。イタリアリーグでは、経験値の差が明白に違いを生む。ユウキ(石川祐希)でさえ1年目は苦労し、ラン(髙橋藍/サントリーサンバーズ)だってそうだった。だからユウガにも同じことが言える。コートに立つ機会が少ないのは、言ってみればイタリアで初シーズンを過ごす選手にとって当然のことなんだ。あとは、すでに複数年プレーしている選手たちが大勢いる対戦相手と戦う上で、コート内での個人とチームの相互関係を理解することが重要。途中起用の場面ではもちろん、練習でさらに高めていかなければいけない。今では主力になったOH2人も、初年だった昨季は自信をつけるためにシーズン前半を費やした。ユウガにとっても同じで、キーワードはたゆまぬ努力。彼はすでにそれを実行しているよ」
期待する点については、「確信していることは、ユウガの守備能力の高さ。特にレセプションはチームを助けるピースになると思っている。イタリアへ来てからすでにその精度を上げているんだ。ここでは、とてつもない威力のサーブが当たり前だから決して簡単ではないが、求めたいのは、レセプションの安定度をよりアップさせること。シーズンが進む中で強みを伸ばしてほしい。それと、いつも彼と話していることだが、攻撃時のコースやブロック対応などで選択肢を増やすこと。これは、技術の向上以上に経験が不可欠になるね。この2点が出場機会を増やすための切り札になる」とシーズンを占う2つのキーワードを挙げてエールを送った。
そして、「なによりもチームにとって大きいのは、ユウガが英語を話せること。イタリアと日本は文化の違いがあるので、直接コミュニケーションを取れることはアドバンテージだよ。フィジカル面についても、日本で良い準備をしてきたと感じている。ユウガがより早く成長できるようにチームは全力でサポートしていて、彼自身もそれに応えてくれていると思う」とインタビューを締めくくった。
日本国内リーグを経験した垂水は、イタリアリーグの印象についてもこう言及した。
「高さとパワーが日本とは桁違い。ここにはいろんな国から強い選手が集まっているので、比較するのは正しくないかもしれないけれど…日本にも外国人選手が所属していますが、その外国人選手が全員みたいな感じなんで。日本選手にはなかなかないパワーと高さには、驚いています。SVリーグもどんどん良くなっていくと思う。そのためには(自分を含め)日本人選手の能力がもっと上がっていかないといけないなと実感しています」
「会場の雰囲気がすごいっすね。観客の皆さんがみんな楽しそうで、盛り上がっているのが伝わってきます」
洛南高校3年時に春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)でともに優勝を果たし、大阪ブルテオンでもチームメートだった日本代表のOH大塚達宣(アリアンツ・ミラノ)。奇しくも時を同じくしてイタリアへ渡った同志とは、頻繁に連絡を取り合っているという。
挑戦は始まったばかり。来春まで続くリーグを追いながら、垂水がどんな進化を遂げるのか楽しみにしたい。
取材・文●佳子S.バディアーリ
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