目標の立て方が集中力持続のカギ / credit:フォトAC
やらなきゃいけないことがあるのについつい集中できずスマホに手が伸びる、そんな経験がある人は多いのではないでしょうか?
気が散っている時間を有意義に使えたら、作業効率は段違いに上がるのはわかっているものの、時間が経つと集中力はなくなっていきます。
特に仕事や勉強などを集中したままこなすのは至難の業です。
しかし、実はちょっとした気の持ちようでタスクに長時間集中できるようになるかもしれません。
アメリカ、オレゴン大学のディアナ・L・スト氏らは「自分自身に実現可能な目標を掲げる」ことで、タスクに対する集中力が長く持続できることを発見しました。
「目標を持てば集中できる」というのはよく言われることですが、大切なのはその目標設定のやり方です。
この研究はAttendance, Perception & Psychophysicsに2023年10月23日付けで掲載されています。
目次
集中力の持続には「具体的な目標」が必要目標を「徐々に難しく」すると集中力が持続
集中力の持続には「具体的な目標」が必要
目標は「具体的」かつ「実現可能」なものに / credit:フォトAC
研究グループは、参加者100人に対し、簡単な4択問題を25分間次々と出題しました。
出題された問題を解くのにかかる時間をそれぞれ測定し、集中力が持続しているか調査します。
最初の実験では「実現可能かつ具体的な目標を定めた場合」と「漠然とした目標を定めた場合」について測定が行われ、「目標を設定していない場合」(対称区)と比較されました。
その結果「なるべく速く答えてください」という漠然とした目標を与えた場合より、「〇秒以内に答えてください」という実現可能で具体的な目標を定めた場合の方が、回答への所要時間が短くなったのです。
ここからは達成できる具体的な目標を定めることは、集中力の持続につながると考えることができます。
しかし、目標を設定しない場合と比べれば集中力を長く保つことができたものの、どちらの場合も時間経過とともに問題の回答速度は遅くなっていきました。
これは単に達成可能で具体的な目標を定めるだけでは、25分間集中を保つことができないということを意味しています。
そこで、研究者たちは集中力を持続するために、目標設定を行うタイミングに着目しました。
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目標を「徐々に難しく」すると集中力が持続
目標の難易度を徐々に上げる / credit:Pixabay
最初の実験では、1つの具体的な目標を定めただけでは時間経過とともに集中力はだんだんと落ちていく傾向が見られました。
そこで、次の実験では具体的かつ実現可能な目標を1つではなく、複数立てることにしたのです。
研究者たちは、被験者に時間が経つにつれ難しい目標を与えるという実験を行いました。
例えば、「次の問題は0.45秒以内に回答してください」、それが達成できたら「次の問題は0.4秒以内に回答してください」、それも達成できたら次は0.35秒以内に答えるといった形です。
このように実現可能かつ具体的な目標の難度を少しずつ上げていくと、最初の実験のように時間とともに回答速度が落ちることなく、参加者は試験時間である25分間ずっと集中力を保てていることが示されました。
実現可能な目標を設定し、達成したら少し難しい実現可能な目標を設定すると集中力を損なうことなく作業が続けられるという今回の結果は、我々の日常生活にも簡単に活用することができます。
簡単なことからスモールステップで作業していけば集中力が保てる
簡単なものから細かく目標設定 / credit:Pixabay
実験では25分間の試行でしたが、多くの人はもっと長い時間集中力を保ちたいと考えるのではないでしょうか。
集中力を保つにはだんだんと目標を高くしていく必要がありますので、長時間の集中を目指すのであれば最初はごくごく簡単な目標を設定するのが望ましいと言えます。
例えば、①PCを立ち上げる、②メーラーを開いて未読メールを読む、③〇時〇分までに必要な返信をすべて済ます、といったようにとっても簡単なことから始めて、その後も細かく具体的に目標を設定していけば集中して作業が続けられるかもしれません。
自分で定めるなら小さい目標でも恥ずかしくありませんし、頭の中でこっそりと実践してみたくなりますね。
参考文献
How to stay on task
https://www.sciencedaily.com/releases/2023/11/231128160147.htm
Setting Specific Goals can Improve Your Ability to Stay on Task
https://sciencebeta.com/specific-goals-task-focus/
元論文
Effects of goal-setting on sustained attention and attention lapses
https://link.springer.com/article/10.3758/s13414-023-02803-4
ライター
いわさきはるか: 生き物大好きな理系ライター。文鳥、ウズラ、熱帯魚などたくさんの生き物に囲まれて幼少期を過ごし、大学時代はウサギを飼育。大学院までごはんの研究をしていた食いしん坊です。3人の子供と猫に囲まれながら、生き物・教育・料理などについて執筆中。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。