普通はありえない「オレンジ色のオーロラ」が英スコットランドに出現! / Credit: spaceweather.com(Photo:Graeme Whipps)

”光のカーテン”とも形容されるオーロラは、その多くが緑色として現れます。

しかし11月25日、英スコットランドのアバディーンシャー上空で、きわめて珍しい「オレンジ色のオーロラ」が出現し、話題となりました。

専門家によると、赤や緑はあってもオレンジ色のオーロラは普通は起こりえないという。

どうしてオレンジ色のオーロラは見られないのでしょうか?

また、なぜ今回はオレンジ色となって現れたのでしょう?

目次

オーロラが発生する仕組みとはオーロラの色は何で決まる?

オーロラが発生する仕組みとは


オーロラはどうやって発生するのか? / Credit: canva

オーロラは、太陽から放出されたプラズマが地球に飛来し、上空の大気層に衝突することで起きる現象です。

太陽は毎秒100万トンのペースで、プラズマ化した粒子を宇宙空間に放っています。

この活動を「コロナ質量放出(Coronal mass ejection:CME)」と呼びます。

原子は通常、原子核とその周りをまわる電子から構成されますが、太陽が超高温のために原子核と電子がバラバラ(電離)になって、電気を帯びた状態となります。

これが「プラズマ」です。

次に、太陽から飛んできたプラズマは地球の大気層にぶつかります。

大気層は酸素分子や窒素分子から成りますが、そこに含まれる電子がプラズマの衝突によってエネルギーをもらいます。

これを「励起(れいき)状態」と呼びます。


プラズマの衝突で地球大気の電子が「励起」する / Credit: 国立大学附属研究所・センター会議 – 名古屋大学・宇宙地球環境研究所 塩川和夫 教授提供

しかし、励起した電子は不安定であるため、しばらくすると元の安定した状態に戻ります(上図の右)。

このとき、電子はプラズマからもらったエネルギーを外に放り出します。

この放り出されたエネルギーが光となって現れるのがオーロラです。

では、オーロラの色はどうやって決まるのでしょうか?

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オーロラの色は何で決まる?

オーロラの光の色は主に、太陽から飛来したプラズマが衝突する大気の「高度」によって決まります。

例えば、最も多い緑色のオーロラは、高度100〜200kmの大気層にある酸素分子が励起されることで発生します。

緑色の次に多いのが赤色のオーロラですが、これは高度200〜500kmにある酸素分子が励起されることで発生します。

しかし高度200〜500kmの高さになると、大気の密度が薄くなるため、より大規模で強力なプラズマが衝突しなければ電子が励起されません。

そのため、赤色のオーロラは緑色よりも出現率が低くなります。

ちなみに、太陽のプラズマが地球大気の奥深くまで浸透し、そこにある窒素分子を励起させると、珍しいピンク色のオーロラが現れます。

オーロラの裾の方がピンク色に見えるのはこのためです。

一方で、大気中の酸素分子も窒素分子も、励起することでオレンジ色の波長を発することはできます。

ただしオレンジ色の波長は非常に弱いため、より強い赤や緑の波長にかき消されて、可視光とはならないのです。

では、今回観測されたオーロラはどうしてオレンジ色となったのでしょうか?

赤と緑のオーロラが重なった結果

オレンジ色のオーロラは11月25日の午後6時頃(現地時間)、英スコットランドのアバディーンシャー上空に出現し、写真家のグレアム・ウィップス(Graeme Whipps)氏により撮影されました。

こちらです。


アバディーンシャー上空に出現したオレンジ色のオーロラ / Credit: spaceweather.com(Photo:Graeme Whipps)

ウィップス氏によると、オレンジ色のオーロラは約1時間続いたオーロラ活動のピーク中に現れたそうで、「信じられない光景だった」と当時を振り返ります。

今回のオーロラ現象は、かなり強いコロナ質量放出(CME)が地球大気に衝突したことで発生し、約15時間にわたる磁気嵐(地磁気が乱れること)を引き起こしたことが分かっています。

そのため、よく見られる緑色のオーロラに加えて、高高度に赤色のオーロラも発生しました。

そしてオーロラがオレンジ色に見えたのは、赤色と緑色の部分が重なり合ったことが原因だったのです。

実はこれと同じ現象は、今年10月19日にカナダのアルバータ州でも目撃されています。


カナダ・アルバータ州に現れたオレンジ色のオーロラ / Credit: spaceweather.com(Photo:Harlan Thomas)

こちらも強いCMEの衝突により、赤色と緑色のオーロラが発生し、両者が重なり合うことでオレンジ色に見えていました。

ただ今回のアバディーンシャーのオーロラは、まだ明るい内に撮影された点で一段と珍しいものになったようです。

参考文献

‘Impossible’ orange auroras spotted in UK after solar storm slams into Earth
https://www.livescience.com/space/the-sun/impossible-orange-auroras-spotted-in-uk-after-solar-storm-slams-into-earth

What’s up in space(spaceweather.com)
https://www.spaceweather.com/archive.php?view=1&day=26&month=11&year=2023

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部