2024年のバロンドール授賞式が10月28日にフランス・パリで開催され、マンチェスター・シティ所属のスペイン代表MF、ロドリが初受賞を飾っている。
2023-24シーズンにマンCでプレミアリーグ4連覇という栄誉に浴した28歳は、今夏にはスペイン代表としてもEURO2024で史上最多となる4度目の欧州制覇に貢献し、大会最優秀選手にも選出された。これらの輝かしい実績が投票権を持つ世界中のジャーナリストの支持を集めることとなった。
5位の得票を記録した昨年から大きく躍進を遂げ、ついに世界一の選手の称号を手にしたロドリは、9月に負った前十字靱帯断裂のために松葉杖をついてステージに上がり、「僕にとって、僕の家族にとって、そして僕の国にとっても、特別な日だ」と語って、喜びを表わしている。
「今日の勝利は、僕だけの勝利ではない。スペイン・サッカーにとっての勝利であり、アンドレス・イニエスタ、シャビ、イケル・カシージャス、セルヒオ・ブスケッツら、受賞こそしていないものの、それに値した多くの選手たちにとっての勝利だ。スペインの選手として、MFとしての勝利でもある」
スポーツ専門チャンネル『ESPN』は、ロドリの受賞を歴史的なものだとして、彼が残した「5つの功績」を列挙。まずはマンCの選手として初の受賞であること、ふたつ目は2008年のクリスティアーノ・ロナウド(当時マンチェスター・ユナイテッド)以来となるプレミアリーグ所属の選手であること、そして3つ目は守備的な選手として、レフ・ヤシン(1963年)、フランツ・ベッケンバウアー(1972、76年)、マティアス・ザマー(1996年)、ファビオ・カンナバーロ(2006年)に続く、6人目の受賞者となったことだ。
4つ目は、本人も言及したスペイン人としての受賞。レアル・マドリーの初期の黄金時代創世を牽引したアルゼンチン出身のアルフレッド・ディ・ステファノ(1957、59年)、バルセロナ、インテルのレジェンドで、監督として1990年イタリア・ワールドカップでスペインを指揮した経験を持つルイス・スアレス以来、実に60年ぶりである。
そして最後の5つ目の「功績」には、過去15年間、リオネル・メッシとロナウドがトロフィーを争い、ルカ・モドリッチ(2018年)とカリム・ベンゼマ(2022年)のマドリー所属選手2人だけがこれに割って入っていた中で、「ロドリが長く続いたこの流れを変えた最初の選手となった」ことを同メディアは挙げている。
もっとも、授賞式の直前まではこの“流れ”が継続され、今年もマドリーの選手であるヴィニシウス・ジュニオールが受賞するものと思われていた。『ESPN』は、「中盤の底で守備の才能と鋭い判断力を持つロドリと、ゴール、スピード、創造性を兼ね備えるヴィニシウスの対決は、前者が十字靱帯の負傷で今季絶望になったのに対し、後者は先日のCLドルトムント戦でもハットトリックを達成して存在をアピールしていたため、ロドリのバロンドール獲得への挑戦は難しいものに見えた」と綴っている。
しかし、この予想外の結果を受けて同メディアは、「究極のチームプレーヤーが、サッカー界で最も名誉ある個人賞であるバロンドールを獲得することができるのか? その疑問がマンCのスペイン代表MFに投げかけられていたが、我々は月曜日、パリのシャトレー劇場で、彼がトロフィーを掲げた瞬間にその答を得た」と報じた。
もちろん、ヴィニシウスを支持する者からすれば、これは受け入れがたい結果であり、各方面から多くの批判的な声が寄せられている。そして中には、マドリーのレジェンドである元オランダ代表のクラレンス・セードルフのように、「マドリーとUEFA(欧州サッカー連盟)の間には解決されていない問題があるようだ」と政治的な背景に“敗北”の理由を求める者も少なくない。
マドリーはこの失意の結果を知ったことで、授賞式当日になって選手、スタッフのパリ行きをキャンセルし、ヴィニシウス本人はSNSで「必要なら今の10倍努力する。まだ準備はできていない」と今後の巻き返しを誓ったが、彼らの行動を受けてネガティブな意見が多く上がっている。
フランスのスポーツ紙『L’EQUIPE』は、「選考での敗北と道徳的な敗北。マドリーはヴィニシウスの敗北の噂を理由に出席を拒否し、他の受賞者であるカルロ・アンチェロッティやキリアン・エムバペを人質にした。彼らは、勝者を尊重するというスポーツの価値を踏みにじるという、品位を欠いた選択をした」と欧州王者クラブを糾弾し、バルセロナのスポーツ紙『MUNDO DEPORTIVO』も以下のように皮肉を込めながら“宿敵”を批判した。
「メッシはバロンドールの歴史において『フェアプレー』の模範を示したが、ヴィニシウスはそこから何も学んでいないようだ。彼は自分が受賞者ではないと知ると、授賞式を欠席した。バロンドールを8回受賞した“元バルセロナの”メッシは、自身の受賞がないと分かっていても、複数回にわたって式典には参加していた。彼には、ロナウドとの激しいライバル関係やクラブ間の強い対抗意識があったにもかかわらず、である」
バロンドールを主催する『France Football』紙のヴァンサン・ガルシア編集長は、「ヴィニシウスは、ジュード・ベリンガムやダニエル・カルバハルがトップ5に入ったことの影響を受けたようだ」と、マドリー勢の中で票が分散したことがロドリに有利に働いたとの見解を示しているが、この波乱の結果が近年にないほどの物議を醸すこととなってしまった。
ちなみにブラジルの総合サイト『Globo』は、ヴィニシウスの落選に対する皮肉というわけではないだろうが、過去にバロンドール受賞に値すると評価されながらも、この勲章を手にできなかった(できていない)選手を選定し、ロマーリオ、ラウール・ゴンサレス、ティエリ・アンリ、パオロ・マルディーニ、シャビ、イニエスタ、マヌエル・ノイアー、ネイマール、ケビン・デ・ブライネ、エムバペ、ロベルト・レバンドフスキといった新旧の名手たちの名を挙げている。
構成●THE DIGEST編集部
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