〈金価格 過去最高〉「もう金だけしか信じられない」衆院選の自民党の大敗との関連は?

貴金属販売大手の田中貴金属が10月30日、金の店頭販売価格を1グラムあたり1万5104円と値をつけた。これにより、日本国内の金の店頭小売価格が過去最高値を更新。衆議院議員総選挙の直後の値段更新だが、政治との関係性はどのようなものがあるだろうか。

「毎日すんごい資産が増えていく」

今年に入り、田中貴金属の設定する金の最高価格は何度も更新されている。2024年の1月5日時点では1万507円だったが、4月には1万3000円を突破した。

以降は10月まで、1万2000円台から1万3000円台での推移を続けていたが、10月15日に1万4069円と過去最高を更新。それから半月ほどでさらに1000円アップし、10月30日に1万5104円の値をつけた。

これに対してネット上では、

〈もう金だけしか信じられない〉
〈どうなってんの? 毎日すんごい資産が増えていくんだが〉
〈これじゃあ金メダルが作れなくなるじゃん〉
〈下手な株買うより金を買ってた方がこの1年よほど儲かったん〉
〈オレが金のネックレス買った時1000円はちょっとくらいだった。安全資産が10倍以上は恐ろしいな〉

といった声があがっている。

日本国内で金の価格が上がるのにはさまざまな原因がある。わかりやすいのは円安だ。円の価値が下がれば当然、相対的に金の価値があがっていく。

世界情勢もまた、金の高騰に大きな影響を与えている。ここ数年で金の価格が一気にあがったのは、新型コロナウイルスの流行、ロシアのウクライナ侵攻などで世界の経済が非常に不安定な状況に陥ったため。これにより、貨幣や証券よりも、価値が安定している金を求める人が増え、価値が高騰した。

そして今回、金の高騰に影響をもたらしていると考えられるのが、10月27日に開票された衆議院選挙だ。自民党が大きく議席を減らし、自民・公明の与党は過半数割れ、国内の情勢が一変した。

なぜ、自民党の敗北が金の高騰をもたらしたのだろうか。

マーケットエッジ株式会社の代表の小菅努氏は「今回の金の高騰は、総選挙の直接的な影響というわけではなく、選挙の結果によって起こった円安の動きが大きく関係している」と解説する。

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今後の金価格の見通しは?

「政治のリスクそのものが金の値段をあげているのではなく、政治リスクが円安をまねき、それによって金が上がっているという構造です。政治の混乱の影響がまったくないとは言いませんが、それがメインの要因かと言われれば、そうではないと思います。これによって日本の金融市場が荒れてくれば、金の値上がりに直結するとは思うのですが」(小菅努氏、以下同)

ドル/円のチャートを見ると、開票前の金曜日、10月25日は1ドル152.266円で取引されていたが、選挙明けの月曜日、10月28日には一時、1ドル 153.8円を突破。選挙後に1円以上の円安となっている。

そしてこの先も引きつづき、円安による金の高騰が続く可能性があるという。

「自民党の連立交渉がうまくまとまらず長期化する見通しになってくると、国内の政治環境が不安定化しているとみなされ、海外投資家がどんどん円を売っていきますので、円安が続くことになります。

今年はフランスや南アフリカなどの各国では与党が負けて、その国の通貨がすごく急落することがありました。こういった影響は他のマーケットにも波及していきます。そのため、逆に自民党が早期にまとまって、政治がどんどん安定化してくると、 円安も止まる可能性はあります」

それでも今年は、アメリカの大統領選挙や、中東とウクライナ問題の影響もあり、金の値段が上がりやすい環境が続くという。金の投資家にとっては、夢のような1年となりそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部