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児童相談所(以下、児相)に保護されている子供は複雑な家庭環境や事情を抱えているせいか、世間からは「気の毒」とか「かわいそう」という目で見られることが多いが、同情だけではこうした子供たちの相手は務まらないという。

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児相の保護施設で働くA子さん(20代)は匿名を条件にこれまで接してきた子供たちの問題行動について話をしてくれた。

「私が働いているのは児相の付帯施設である『一時保護所』というところです。早急に親元から引き離す必要がある子供たちを一時的に保護する施設なので、いわゆる児童養護施設とは違って所在なども明らかになっていませんし、閉鎖的な場所です。原則として保護期間は2カ月以内と決まっていますが、家庭の事情によりそれよりも長く暮らしている児童もいます」

平均滞在日数は1カ月弱だそうで、子供同士の関わりも短期間であることが多いのだが、その中でも子供同士のトラブルが後を絶たないという。

「精神的に不安定なことが原因だと思うのですが、反抗的だったり暴力行為に及ぶ子供もいます。目つきが気に入らないとか手がぶつかったなど、些細なことでケンカ腰になるのです。子供同士でもめることもあれば、職員にケンカを売ってくることもあります」

また、保護児童の中には虐待されている子供も少なくなく、その手の子供は暴力をふるうことに対しても躊躇がない場合が多いという。

「『気に入らなければ殴って良い』とか『殴っていうことを聞かせる』ことが頭の中で正当化されてしまっているわけです。素手でやり合うだけでなく道具を持ち出す子供もいます。危険なものは子供たちの手の届くところには置いていないのですが、勉強に使うコンパスで相手の目を刺そうとしたり、椅子を何度も振り下ろすなど、その残酷さに背筋がぞっとすることも少なくありません」

このような行為を小学校低学年の子供が行うこともあるというから驚きである。

他の子を妬みいじめに走るケースも

「中学生以上になると、女性職員に対する性加害に発展することもあります。私が知っている例ですと、過剰なスキンシップを求めてきた子供を女性職員が咎めたところ、逆上して襲い掛かったというものです。子供の方は母親に甘えるような感じでいたみたいですが、職員にとっては猥褻行為でしかなかったのです。ここに保護される子供は他者との距離感が分からないことが多いです」

距離感が分からないだけでなく「他者を尊重できない」子供たちは往々にして「いじめ」に走るという。

「自分より恵まれた境遇にいる子や職員の評判の良い子に対する妬みから、暴言を吐いたり、暴力をふるったりすることがあります。ここは集団生活の場とは言っても、子供たちは個別に過ごすことが多いので、子供同士で結託するということはほとんどないのですが、面白がっていじめに加担するパターンがあるのです」

こういったトラブルを避けるためか、施設によっては子供たちの行動を監視したり、厳しく制限するところもあるそうだが、かえって反感を招くなど裏目に出ることもあるらしい。

肉親でさえ手を焼くことが多い、多感な時期の子供たちを相手にする職員らの苦労は察して余りある。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。